3勝1敗と永瀬がリードしたまま迎えた第5局は、栃木・大田原での二日制、まさに「崖っぷちの一局」でした。
藤井は中盤で形勢を損ねかけながらも、終盤で持ち時間と精度を絞り出すようにして耐え、ついにこのシリーズ初の「逆襲の一勝」をもぎ取ってスコアを2勝3敗に戻しています。
この結果、第6局(3/18-19 名古屋)・第7局(3/25-26)はいずれも「藤井が連勝すれば防衛、1つでも落とせば永瀬が初タイトル」という究極の構図に固定されました。
シリーズ途中までは「永瀬王将誕生待ったなし」の空気すら漂っていましたが、第5局の粘り勝ちで、少なくとも「藤井がこのまま一気に失冠する」という最悪のシナリオだけは踏みとどまった形です。
一方の棋王戦は、第3局終了時点で依然として増田の2勝1敗リード、藤井ダブルカド番という構図に変化はありません。
新潟グランドホテルで行われた第3局は、藤井が中盤で主導権を握りながらも終盤で痛恨の逆転負けを喫し、「内容は悪くないが結果がついてこない」という、ここ最近の不安定さを象徴するような敗戦でした。
この結果、第4局(3/15)、第5局(3/29)はどちらも「負けた時点で即失冠」というプレッシャーMAXの一番となります。
王将戦と合わせて考えると、3月の藤井は「七番勝負・五番勝負を同時に2本カド番で抱えている」という前代未聞の状況で、1局ごとに“絶壁の足場”が崩れていくような神経戦を強いられているわけです。
そんな極限状態のまま、4月には糸谷哲郎八段との第84期名人戦七番勝負が開幕します。
糸谷はA級順位戦プレーオフで永瀬を下して挑戦権を勝ち取り、「藤井を追い続けては跳ね返される側」から「藤井に挑む新しい顔」として、物語の主役交代すら匂わせる登場の仕方をしています。
スケジュールだけ並べると、
「過密日程」「挑戦者の研究」「棋界の総レベルアップ」という三重苦を自らの強さで呼び込んでしまった結果、
ここまで来ると、彼の最大の試練は、単に「タイトルを守れるかどうか」という一元的な話ではなくなっています。
むしろ、
という、長期スパンのキャリアデザインとメンタルの問題になりつつあります。
私の予想は依然として「一度どこかでガクッと冠数を減らし、
そこから“普通の超一流棋士”として長く戦うモードに移行するだろう」という線ですが、
それが「今期すぐ」なのか、「もう一度ピークを作った後」なのかはまだ読めません。