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岩の間に咲く日本固有種のイワツメクサ
イワツメクサ(岩爪草 別名オオバツメクサ)は、ナデシコ科ハコベ属の多年草の高山植物。日本固有種で、本州中部と富士山、白山に分布し、海抜2500m以上のハイマツ帯より上に自生します。
高さ5~20cm。葉は細長く3cmほど。花は白色で直径約1.5cm、花期は7~9月です。花びらは10弁のように見えますが、実は5弁。1弁が2つに分かれているので10弁に見えています。
学名は「Stellaria nipponica(ステラーリア・ニッポニカ)」。Stellariaはラテン語で星に由来する言葉で、花の形が星の形のようだからです。
山頂近くの岩場や砂礫地に自生する高山植物で、夏の日本アルプスの稜線を歩くと高い確率で遭遇しますが、ちょっと地味なので、素通りしてしまうこともあります。
名前は岩の間に咲く”ツメクサ”というのが由来。“ツメクサ”というのは、細い葉の形を鳥の爪に見立てたものです。
ちなみに、単なる”ツメクサ”は里山をはじめとして、庭や道端、畑など、どこでも見ることができる花です。
北海道にはオオイワツメクサ、エゾイワツメクサが分布
北海道には、おなじナデシコ科ハコベ属のオオイワツメクサ(大岩爪草)、エゾイワツメクサ(蝦夷岩爪草)という近縁種が自生しています。
エゾイワツメクサは大雪山系の固有種、オオイワツメクサは日高山系、夕張山系の固有種で、イワツメクサより花や茎が全体的に大きく、葉が厚く、縁毛付いているのが特徴です。
イワツメクサとよく似ていますが、分布が違うので混同することはありません。
花言葉は「奥ゆかしい」 「初恋」、でも、とってもたくましい
花言葉は「奥ゆかしい」と「初恋」。真っ白で小さな初々しさから「初恋」、岩陰にひっそりと咲くことから「奥ゆかしい」と付いたそうです。
「奥ゆかしい」と言われる一方、風が吹き晒す、水分や栄養が乏しい場所に生育する姿は、奥ゆかしいというよりたくましさを感じます。
岩の間に堆積したわずかな土壌の有機物や、雨や霧の中に含まれる微量の栄養分により生育するそうです。
岩の隙間から顔を出している様は、まさに“ど根性花”そのもの。いろんな意味で見習いたいものです。
なぜ、そこに?といいたくなるような、登山道の真ん中に咲いていたりするので、踏みつけないように気をつけましょう。
似てるけど違う!イワツメクサに似た花3つ
イワツメクサが咲く付近には、パッと見には似ている花が咲いていることがあります。しかし、よく見ると違うので、迷うことはないでしょう。紹介する3つの花はどれも日本固有種です。
タカネツメクサ(高嶺爪草)
ナデシコ科タカネツメクサ属の多年草。花びらがはっきりと5枚で、ひとつひとつが大きめなので、一目で違いがわかります。本州中部地方と、東北地方の飯豊山に分布します。
ホソバツメクサ(細葉爪草)
こちらもナデシコ科タカネツメクサ属なので、花はタカネツメクサと似ていますが、葉が細く小さいとところが違います。本州中部地方以外では、北海道に分布します。
ミヤマミミナグサ(深山耳菜草)
ナデシコ科ミミナグサ属の多年草。花びらがたくさん割れてフサフサしているので、ちょっと豪華な花に見えます。北アルプス、南アルプス、八ヶ岳のほか、浅間山や日光の亜高山帯以上に分布します。
イワツメクサを見るならココがおすすめ
イワツメクサは標高が高い場所に限られるため、見るためには亜高山帯以上の場所に行く必要があります。しかし、比較的、見る機会が多い花でもあります。ここでは、いくつかピックアップして紹介します。
富士山(静岡県・山梨県)
富士山の富士宮口五合目(標高 約2,400m)からの富士宮ルートなどでよく見られます。
赤茶けた溶岩やスコリア(火山噴出物)の間に生育する姿は結構シュールです。
乗鞍岳(長野県・岐阜県)
乗鞍岳登山の玄関口である、畳平(標高 約2,700メートル)周辺や、山頂までの登山道周辺に自生しています。バスターミナルからすぐの場所にも生育しているので、登山しなくても見ることができます。
木曽駒ケ岳(長野県)
たくさんの花が咲く千畳敷(標高 約2,600m)や、木曽駒ケ岳への登山道周辺で見られます。こちらもロープウェイで行くことができますので、登山する必要はありません。
白馬岳(長野県・富山県)
白馬岳山頂(標高2,932 m)直下でよく見られます。また、北アルプスらしい、雄大な稜線歩きを楽しみながら、様々な花とともに、イワツメクサを見ることができます。
北岳・間ノ岳・農鳥岳(山梨県・静岡県)
白根三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)の3000m峰を結ぶ稜線上、長く続く砂礫帯で、たくさん自生しています。
白山(石川県・岐阜県)
白山(標高 2,702m)は、イワツメクサ分布の西端ともいえる場所。御前峰の山頂近くの砂礫帯・岩礫帯で多く見ることができるができます。
イワツメクサに元気をもらおう!
おそらく、好きな高山植物を聞いて、真っ先に「イワツメクサ」という人は、まずいないでしょう。それぐらい地味で目立たない花です。
今まで、なんとなく素通りしてしまっていたなら、ちょっと足を止めてよく見てみませんか?厳しい場所で健気に咲く姿に、きっと元気をもらえますよ。