きっと私はあなたみたいになりたかったんだ(タキモル♀)
- 2022/01/15
- 18:35
「ごめんなさい、私はタキオン以外を担当する気はないの」
「そうですか……」
耳がシュン……と垂れ下がった子を見送る。
デビュー前から優秀な成績を残したウマ娘の中には自分からトレーナーに売り込む事がある。彼女もそのパターンだった。しかし、私の担当はアグネスタキオンだ。彼女に心底惚れ込んでしまった私は他のウマ娘の面倒を見るつもりはない。
私が逆スカウトを断った話はタキオン本人の耳に入ったらしく、彼女は微笑を浮かべてこう言った。
「君は物好きだね」
「あなた以外に興味が無いだけよ」
「ふぅん? それは光栄だね」
「私はあなたの事が大好きなの」
「知っているとも」
「それでもいい? こんな私でもいい? 面倒臭くない?」
「構わないさ。むしろ嬉しいくらいだよ」
「ありがとう、タキオン!」
私は彼女を抱きしめた。
それからもタキオンと二人三脚で頑張る毎日。そんな日々の中で、タキオンがある提案をした。
「君の脚を見せてくれないか?」
「えっ?」
突然の話に驚く。
「どうして急に?」
「研究の一環だよ。人とウマ娘の脚の違いを調べたいのさ。あとは単純に好奇心かな。君は夏の合宿でも長ズボンだったからね」
「でも……」
私の脚を見せる事は躊躇われた。理由は単純だ。
「私の脚には傷跡が残っているわ。それは醜くて汚いわよ」
幼い頃の事故でついた傷跡を晒す事に抵抗があったのだ。
「大丈夫、気にしないさ」
「本当に?」
「ああ」
「……分かったわ」
タキオンの言葉を信じる事にした私はスカートを脱ぐとベッドの上で仰向けになり、脚を開いた状態で固定する。
「これが私の脚よ」
「なるほど、確かに酷いものだ」
タキオンがまじまじと見つめる。私は恥ずかしくなってきた。
「触っても?」
「どうぞ」
タキオンの手が太腿に触れる。ピクリと体が震えてしまう。
「これは痛かっただろうねぇ」
「……子供の頃の事だから覚えていないわ」
嘘である。今でもあの時の痛みを覚えている。その記憶と後遺症のせいで全力疾走は無理だ。
「そうかい」
タキオンはそのまま手を離すと何か考え込み始めた。そして再び手を伸ばす。今度は優しく撫でるように触れる。
「見た目はどうあれ今まで君と一緒に頑張ってきた脚だ。綺麗だよ」
「……」
顔が熱くなる。
タキオンは私を傷つけないように気遣ってくれているのか、ゆっくりと時間をかけて触れてくれた。それが嬉しくもあり、同時に申し訳なくもあった。
「ありがとう」
「もういいの?」
「充分だよ」
「そっか……あ、待って」
私は立ち去ろうとするタキオンを呼び止める。
「最後にお願いしてもいいかな?」
「なんだい?」
私はタキオンに近寄るとその胸に抱きつく。
「ありがとう、大好き」
「ふふっ、私もだよ」
「うん!」
タキオンを抱き返すと彼女の温もりを感じる。この瞬間を忘れない様に心に刻み込む。
(あなたがいてくれて良かった)
今はっきりと分かった。私が何故ここまでタキオンの走りに憧れたのか。
私と同じ爆弾を抱えた脚を持ちながら決して諦めない姿に惹かれたんだ。その『不屈さ』は私にないものだったから、きっと私はあなたみたいになりたかったんだ。
「あなたが居なければ私はここにいなかった」
あなたのお陰で今の私がいる。あなたに出会えてよかった。
「ありがとう」
私はあなたの事が―――「好きだよ」
その言葉を聞いたタキオンは微笑む。
「やはり君は物好きだなぁ」
「あなただって同じでしょう」
「ふふっ、違いない」
タキオンは私を強く抱きしめる。その力は強くて息苦しい程だ。だけど心地よい。この時間が永遠に続けば良いと思った。私はあなたの事が大好きだ。
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