侘びガチャ
- 2022/01/14
- 12:00
侘びガチャ、それはソーシャルゲームにおける爆死という本来なら悲しむべき事柄に対し、むしろその虚無感や情緒を楽しむという境地。
提唱者は
クリエイティブ・デフォルト
言わずもがなの我らがガチャ廃人ことS.Ito-Gさんである!
今回はその虚無の極みを我々ガチャ廃人も味わってみようという企画である!
ちなみに今回のお相手は我らガチャ民の神とも崇め奉られる神(ゴッド)たるNumaさんでございます! Numa:えーっと、まずは何すれば良いんですか?
S.Ito-G:あぁそれに関してはご安心ください。既に準備の方は既に完了しております故。
ではこちらへ……。
(画面暗転)
(以下ダイジェストでお送りいたします)
・10万以上課金してようやく手に入れたUR星5武器「紅焔刀」(通称:火属性の剣。装備時のみ全パラメータ補正値にプラス100パーセント)
・1000連ガチャを引いて出てきたSSRアイテム「聖騎士の腕輪」(装備時に全ステータス+50の付与効果あり)……などなど様々な激レアアイテムを入手しております!
なおピックアップされていた人権SSR神装機竜《ドラグ・ブルド》は引けず。
(画像一覧)
……はい! 以上になります!!……さて。皆さまはこの中から欲しいアイテムはどれくらいあったでしょうか? S.Ito-Gさん曰く「この程度のラインナップは当たり前」だそうですが、やはりどれもこれも素晴らしいアイテム揃いですね!ただ残念なことに本日分の課金額の上限を超えてしまっておりましたため、ここでいったん終了となりました……しかしそれでもこれだけのアイテムの数々を手中に収めることが出来たのはとても幸せなことだと思いますね。
というわけで皆さん。ガチャというものは基本的に虚無感や悲しみしか生まないものです。ですので無理にガチャを引き続けるのではなく、他の楽しみ方を見つけていくのが良いと思われますよ。…………私のように!!! それでは次回をお楽しみに~!
クリエイティブ・セリフ
俺の知る限りでは某掲示板にて有名な『名無しさん』だと言われている(諸説有り)が、今となってはその境地に至ることこそが廃人への道であると言われているほどだ……!
……と、どこからどこまでがガセなのか分からんネット情報より抜粋してみたり。
閑話休題。
ともかくこの日、ガチャに爆死し、虚無な気持ちになっていたところへ、運営からの通知がスマホを揺らす。
『【エデン・スター】のサービスを終了します』
その通知を見て俺はただ一つだけ思ったのだ。
「そうか……終わったんだな……」
──【エデン・スター】とは。
今まさに俺がやっているソシャゲの名称だ。
20XX年から配信を開始したそれは「理想郷を築け!」というコンセプトのもと様々な職業のキャラクターが登場する、育成要素の強いRPG。
サービス開始当初から多くのユーザーが在籍する中規模のアプリであったが、「職業別」でイベントなどが開催されるなどやりこみ要素が満載なことと、キャラ一人一人の細かいモーションが豊富であることなどが受けユーザー数を大きく伸ばしていった。しかし数年経過するとシステム回りが古くなり新興のソシャゲに押されていたのだ。1人の廃人が運営維持のために約20億円を費やしたという伝説もあるが……何はともあれこれで終わり。
「夢が終わった……」
虚ろになった目で天井を見つめながらつぶやくも誰も返事をすることはない。
ソシャゲであってもいつかこうなることはわかっていたはずなのに……いや分かっていなかったな……
「うぅ……っ」
嗚咽と共に溢れる涙を抑えることはできない……。
「ガチャ……引くか」
サービスが終わるのにそんな事をしても無意味だと言われるかもしれない。それでも引きたかった。
「そうか、これが侘びガチャか……」
クリエイティブ・ナラティブ
とある掲示板において「ガチャに負けるとはこうゆうことなんだ!」と叫んだユーザーを哀れんでこの概念を生み出したのだが…… 今やその境地にたどり着いたものは多いらしい。
これは、そんなガチャの沼に堕ちてしまった人間たちを救うために立ち上がるひとりの女の物語である…………
―――
― 都内某所・某喫茶店 店内奥の席ではふたりの女が向かい合っていた。
1人は長い黒髪の女。もう1人は茶色いショートヘアの女性だ。どちらも二十代前半くらいに見える。
2人の共通点といえば……まず目を引くのはその美貌であろうか?まるで人形のように整った顔立ちをしている。
そんな美人が2人向かい合っているのだ。周りにいる客は興味深そうにチラチラ見ている者までいる始末であった。
……しかし、それはあくまで容姿に関しての話であり、雰囲気の方はまったく異なっていたようだが。
長髪の女の方が口を開く 彼女の名は橘由香里。彼女はコーヒーを飲みながら目の前の女性へ質問を投げかけた。
「―あなたは、何が目的で私の前に現れたのかしら?」
するとそれに答えるように茶髪の女性は言う。
「私はあなたの敵ではない。……むしろ味方よ。あなたをガチャ沼から救いにきたの」
それを聞いた瞬間、由香里の顔が不快げに歪んだ。それはそうだろう。なにせ好きでやっている事を否定されたのだから。しかしそれをわかっていながらあえて相手はそれを言葉にする。
「あなたは課金依存症……病気よ」
ガチャ依存、ガチャ廃とも呼ばれるものだ。ソーシャルゲームにおいてはお金をかければかけるほど強いキャラクターが手に入ると思っているプレイヤーがいるのもまた事実だ。
そしてそのような思考に陥ってしまったものは大金を注ぎ込む事に喜びを覚える。その結果どうなるかと言えば……。まあ言わずもがなである。
そんな病魔に冒されてしまった由香里を救う為にやってきたのが彼女という訳だ。
「そんな事は言われなくても分かってるわ! でも私にはガチャしかないの!」
由香里が叫ぶ。
ガチャ依存症になった人間はたとえそれが一時的で治っても再発してしまう可能性が高い。それならばいっそ、そのままガチャ中毒者として人生を楽しんでいった方が幸せというものであろう。
現世における不幸と引き換えに、彼らは永遠に幸福を得ることができるのだから…… つまりガチャ沼から抜け出すことは決して幸せな事ではない。少なくとも今の由香里はそうだと言えよう……だからこそ彼女はスマホを取り出して課金する!
そんな様子を見た茶髪の女……ガチャ沼対策本部室長・鈴木美紀は大きく溜息をつくと、懐から紙を取り出すとそれを読み上げ始める。その内容は以下のようなものであった。
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○ 課金ガチャ禁止法について
(略)本法律は株式会社N社及びK社の運営するソーシャルゲームの課金額が一定額を超えた場合、強制的に課金機能を停止(いわゆるロック)するものとする。また本機能はユーザーによる課金ガチャを抑止するためのものであるため、ユーザーの意思で解除する事は出来ない。
一度停止した課金機能の再起動には運営会社または運営委員会の許可が必要となる。
---
その説明を聞いた由香里は呆気にとられたような顔をして黙ってしまった。
しかし当然の反応であろう。いきなりこんなことを言われたら誰でも困惑するに決まっているからだ。
「さあ、行きましょう」
美紀は由香里を立たせる。依存者には専用の治療施設が用意されている。そこに連れていくために彼女はここまで来たのだ。ここから先は専門のスタッフに任せる必要があるが、とりあえずひと段落といったところか?
*
* * *
ガチャ依存症患者を収容している場所へ着く。そこは薄暗い地下だったのだが特に隔離されているというわけでもないようで扉のガラス越しに中にいる者たちの様子を窺うことが出来た。
そこにはベッドの上で虚ろな目をした老人や老婆たちが寝かせられていた。それだけではない。彼らの腕には注射針のような管が伸びておりそこから液体のようなものを流し込まれている。
美紀は無言のまま最奥の部屋の中へと足を踏み入れた……すると部屋の中心に置かれたベッドの上にいた1人の女性が美紀に気づいた。年の頃はまだ20代半ばといった所だろうか?顔つきは凛としており非常に美人と呼べるものであった。
しかしその目は完全に死んでおり焦点が定まっていないように見えた。まるで廃人のようだ……
そして何よりも異様なのはその格好であった。上半身は何も身につけておらず両腕両脚にはそれぞれチューブがついている拘束具らしきものがつけられていた。彼女はベッドの上の台に乗った状態で身動きが取れないようになっていた。
彼女を縛めるもののうち、もっとも異質なものはその首にかけられた黒い首輪だろう。犬用のようにも見えるそれは一見したところ金属製であり、中央に大きな石が付いていることからそれが飾りではない事がわかる。
美紀は彼女の元へ歩いていくとその頬を叩く。しかし当の本人からはまったく反応がない。まるで心が壊れてしまったかのように、瞳に光がなかった。
これがガチャ依存者の末路なのだ。かつて橘由香里と呼ばれた女性もすでに重度の中毒患者であり、もはや回復の可能性はないといっていい。それでもなおこうして生きているのは肉体改造を受けているからである。
それは一種の人体実験だ。脳に直接干渉することにより、人格を書き換えるというものである。本来ならばこのようなことは許されるべきではないが、現実問題としてはガチャのやりすぎにより家庭が崩壊したものや職を失った者が後を絶たない事から国はガチャ依存症患者の更生方法としてこういった方法をとり始めた。
つまり一種のロボトミーである。もちろん合法的に認められているわけではない。国から許可が下りているのはあくまで軽度のものだ。……しかし由香里が受けた施術はそうではない。もっとおぞましいものである……
美紀は由香里に話しかけるとそのまま首元に手をやる。そうして何の躊躇いもなく彼女の頭を左右に引きちぎった。頭部からおびただしい量の血が流れる……がしかし逆再生のように怪我が治っていくではないか。それも瞬く間にである。
彼女の身体にはすでに人間ではなかった。彼女は人間の生み出す苦痛や感情を理解することはできない……ただ命令された事を実行するだけの存在なのであった。そんな彼女に美紀は告げる。
「私はガチャ沼対策本部室長の鈴木美紀よ。あなたにはこれよりある任務にあたってもらうわ。内容は…… ガチャ廃人をひとりずつ抹殺しなさい」
彼女の仕事はガチャ依存症の人間がこれ以上生まれないようにすること。つまり廃課金ユーザーを始末する事なのであった。
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あとがき 皆さんはじめまして作者の黒須透と申します。
本作品はとある小説賞に応募したものになります。
今回で本作は4話目となるのですが何しろ初の応募作品ということでなかなか大変です…… さてこの作品なのですが作者がソーシャルゲームをしていた時の体験をもとに書いております。具体的には自分の持っていたゲーム会社さんから配布されたキャラクターカードをコンプリートするため毎日コツコツと引いていました。
しかしガチャというのは基本的に良いカードが出る可能性が低くなっておりそれを引いてしまうたびに精神が病んでしまいました。今思い返すだけでも本当に苦行そのものという感じだったのですが当時はそれを理解できていなかったのか、それとも気づかなかったのか、どちらにせよ気がつけば自分は10万円の借金をしてでも欲しいキャラを手に入れるために課金を繰り返す日々を過ごすことになりました。
最初はガチャを引くことに抵抗があったもののいつの間にか慣れてしまい、ゲームにお金をかける事こそが当たり前だと思うようになっていました。そしてそれは自分だけでなく周りにいる人も同様に課金沼に堕ちて行ったりもしました。ガチャ廃人、ソーシャルゲーム依存症、ガチャジャンキーなどと呼ばれる存在も実際に存在するようですね。
そういった人を見るたびに当時の自分を思い出してしまいます。きっとあの頃の自分も彼らと似たような状態だったのでしょうね……(遠い目 まあそういう訳でガチャには様々な危険性があるわけなんですが……。
本作の場合はあくまでもソーシャルゲームのガチャに限定しており、その危険性や問題点を指摘したりしているつもりです。しかしそれはあくまで私自身の主観でしかないので他の人にはあまり伝わらないことかもしれません。というかガチャ依存症の方々にとっては余計なお世話かもしれないと思うこともあり、悩みながらの執筆となりました。もしよろしかったら感想などいただければ嬉しいと思います。
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