[展望2025]万博 停滞脱却の好機…経済部長 平井久之  

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 「万博イヤー」が幕を開けた。大阪・関西万博は4月の開幕まで100日となり、その概要が見えつつある。

[展望2025]普遍性ネットで配信…配信部長 井ノ口麻子 

 同じ大阪開催の1970年万博と比べられることも多いが、時代の高揚感は全く異なる。GNP(国民総生産)で当時の西ドイツを抜き世界2位となったのが68年。「いざなぎ景気」の終盤で、高度成長の絶頂期といえる頃だ。

 名目GDP(国内総生産)は2010年に中国に、23年にドイツに抜かれ4位に後退した。東京一極集中は加速し、関西のGRP(域内総生産)や製造品出荷額など経済指標のシェア(占有率)も低下傾向から脱せずにいる。長く「大阪万博が関西のピークだった」と言われてきた。

 足元に目を移せば、国内外には不確実な要素が少なくない。米国のトランプ次期大統領が過度な保護主義に走れば影響は不可避で、とりわけ対中国の輸出比率が高い関西の企業には、中国の景気後退はリスク要因となる。

 国内経済は回復基調にあるものの「賃上げと投資が 牽引けんいん する成長型経済」を掲げる石破内閣も、政権基盤は心 もと ない。賃金と物価の好循環の実現に向けては、労使ともに正念場の年となるだろう。

 不透明な時代の万博をどう迎えるか。大阪万博に携わった作家・堺屋太一氏を研究する池永寛明・元大阪ガスエネルギー・文化研究所長(65)は「万博があるから何かをせねば、という発想は間違い。主語は人や社会であり、万博をいかし、『関西再起動』につなげるべきだ」と説く。停滞を脱し、転換の機会とする期待を込めたい。

 会期中に約160か国・地域の参加と、2800万人の来場者を見込むだけに出展を予定する400社超のスタートアップなどにも千載一遇のチャンスだ。国内外の来場者が各地に足を運べば消費などの波及効果に加え、知られざる地域の魅力や中小企業の潜在力にも触れてもらえる。

 関西には水素や、曲げられる特徴をもつペロブスカイト太陽電池、蓄電池など競争優位にある次世代エネルギー関連技術も多い。企業や大学の力を発信する好機となろう。

 むろん、万博は地域の祭典ではない。昨年が生誕130年だった松下電器産業(現パナソニックホールディングス)創業者の松下幸之助氏は「私が会長になったら、万国博が大阪だけの仕事になるかもしれない」と大阪万博の協会長就任を固辞した。国家イベントとの視点に立ち、機運を高める知恵が問われる。

 戦後80年の節目の年の万博でもある。関西、日本の底力を示し、社会課題に対する未来への手がかりを得る場にしたい。未来への前向きな挑戦の姿を紙面でも伝えていく。

  経済部  大阪本社の部員数は19人で、近畿、中国、四国地方に拠点を置く企業の動向を中心に取材。経済ニュースを深掘りする関西経済面(水、土曜日掲載)にも力を入れている。

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