やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

【保存版】PBL実践のための基礎スキル講座で得た、授業づくり5つのヒント!ーインストラクショナルデザインの理論ー

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GWの前半はBEYOND/Cさんが主催するこちらの講座に参加していました。

PBLを企画し、デザインし、ナビゲートし、学習者に学びとして定着させるまでの一連の流れの中で教授者が必要となるスキルを、体系的・網羅的に身につけることができます。

 

教育工学などの知識を座学でお伝えするだけでなく、実際にワークやディスカッションを取り入れ、相互に学びを深めていきます。

 

この講座を受講いただくことで、より効果的なPBLを実施することができるようになるだけでなく、PBLの実践事例をメタ的な視点で議論し、自身の実践に活かせるようになることを目指していきます。

www.beyondcommon.org

この手の講座にしては少なめの人数かつ全4日間にわたる継続的なプログラムで、前半と後半の間の期間にオンラインフォローアップなども頂ける魅力的な講座です。

そのうちの2回を終えて、自らの学びの振り返りとして、実際に授業にいかせる点や、興味深かった点を5つのヒントとしてまとめておきます!

①バナシー(Banathy)のKSA

  • 知識 Knowledge
  • スキル Skill 
  • 態度 Attitude

と、それらを支えるメタ認知によって、ある状況で好ましい行動を選択し、できるという能力や行動特性の獲得が期待できる、というモデル。

この3つを知っていると、「この授業、この時間では何の育成を目指すのか」が分類できるようになり、授業デザインがしやすくなるはず。

と言わなくても教員ならやっていることかもしれませんが、4技能よりはわかりやすいかな、と個人的には感じます。また、KSAはビジネスの世界でも使われています。以下はビジネス研修での具体例でわかりやすいです。

project.nikkeibp.co.jp

この中で最近はスキルや態度の育成が教育・入試改革の方向性になっていますが、「それはいいけど知識をおろそかにしてはいけないでしょ」というのが話題の2冊がこちら。ぜひ。

教師の勝算: 勉強嫌いを好きにする9の法則

教師の勝算: 勉強嫌いを好きにする9の法則

 
7つの神話との決別: 21世紀の教育に向けたイングランドからの提言

7つの神話との決別: 21世紀の教育に向けたイングランドからの提言

  • 作者: デイジークリストドゥールー,Daisy Christodoulou,Beverley Horne,松本佳穂子,ベバリーホーン,大井恭子,熊本たま
  • 出版社/メーカー: 東海大学出版部
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

【追記】↑の著者のクリストドゥールーは、知識とスキルは絡み合ったもので、スキルだけを切り離して、それだけを教えることはできない、と主張しています。知識詰め込み教育に一石を投じたい人こそ読むべき1冊です。

②ブルームのタキソノミー

ご存知の方も多いかもしれませんが、実はあのタキソノミーは改訂版があるのです。

1950年代に出されたブルームの分類は、知識・理解・適用・分析・統合・評価という6つなのですが、2000年代にその弟子たちがこのように分類し直しています。

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https://mathgifted.exblog.jp/20451553/

これもKSA同様に、「この学習活動はどの領域を意図している活動か」を考えるデザインの一助になると思います。

事実の暗記に辟易している生徒には、何度でも粘り強く示して行くのも教員の仕事。

わかりやすい図と解説をしてくださっているこちらのブログから引用させていただきました。

mathgifted.exblog.jp

③ICEモデル

  • Ideas
  • Connections
  • Extensions

の頭文字をとった ICEモデル。

IはIdeas(基礎知識),CはConnections(つながり),EはExtensions(応用)を意味します。問いに対してどのように答えるかによって,I,C,Eのどの段階にいるかを評価する視点です。

ICEモデルとは|ALbase

今回の研修では、上記のような生徒目線での説明のされ方ではなく、教員目線で、ICEモデルをどのように授業デザインに生かすか、という話でした。

ただ、そのコアは上の引用と変わりません。「この問いは、ICEのレベルでいうとどのレベルに相当する問いかけか」 という発問を練る視点になるでしょう。

ICEモデルで拓く主体的な学び―成長を促すフレームワークの実践

ICEモデルで拓く主体的な学び―成長を促すフレームワークの実践

 
「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)

「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)

  • 作者: スー・F.ヤング,ロバート・J.ウィルソン,Sue Fostaty Young,Robert J. Wilson,土持ゲーリー法一,小野恵子
  • 出版社/メーカー: 東信堂
  • 発売日: 2013/05
  • メディア: 単行本
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土持先生の書籍を読めばかなりICEモデルはつかめると思います!私もこれを読み込んでルーブリックを作って毎月の記述課題を採点していました。

④メリルのインストラクションの第一原則

熊本大学の鈴木克明先生の文章が PDFで閲覧でき、その記述が大変わかりやすいので紹介させていただきます。

出典:鈴木克明「インストラクショナルデザインの基礎とは何か :科学的な教え方へのお誘い」より

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この5つのステップを経ることで学びが促進される、というメリルの示したモデルです。いわゆる通常の知識享受の講義づくりでも使えますが、特にPBL型の授業づくりでも効果を発揮するモデルだと思います。

ちなみに…PBLの記事

約1ヶ月前に書いたこちらの記事はIB校にお勤めのrofu先生にもご紹介いただきました。

www.yacchaesensei.com

⑤タックマンモデル

高いパフォーマンスを示してきた様々な種類のチームに共通するチームの成長段階を示しています。

  • 形成期 Forming
  • 混乱期 Storming
  • 統一期 Norming
  • 機能期 Performing
  • 散会期 Adjourning

こちらの記事が分かりやすくオススメです。参考になります。

・タックマンモデルとチームビルディング – ゲームを用いて貴社のチームビルディング研修,グループワーク,階層別研修をサポートします | 株式会社HEART QUAKE

私の授業では生徒がグループを組んで行うプロジェクト型学習も組み入れています。 

www.yacchaesensei.com

そのプロジェクト学習の導入、グループをいかにチームにしていくか、のコツを伝えるミニレッスンで伝えておきたいなと思えたのがこちらのモデルでした。

意欲のある生徒が、自分たちで自分たちの状態を客観視できるようなツール・知識の伝授は大事な役割だなと痛感しています。

このモデルから、例えば私の授業で生徒たちがつくるチームを考えてみると、役割分担を超えた互いのサポートができるレベル=Performingまでいけている生徒たちの満足度、充実度は質的調査をしても非常に高いです。

その一方、Formingの段階のまま、ただの身体的安全ではない、意見を言い合える安心感が得られていないチームはなかなか成果がでにくいです。

各チームが1つでも先の段階に進めるよう、足場かけをしていくのが教員の役目だと反省しっぱなしの去年の冬だったので、この春はきちんとその足場かけを繰り返したい。

おわりに

5つのヒントとして学習科学の理論をまとめてみました。

もはや記事というより、自分がGW明けに行う授業づくりのメモをしているような感覚なのですが、間違いなくどなたかのヒントになると思いましたので紹介させていただきました。

ちなみに、3社共同で行われているBEYOND/Cさんの研修は今後も継続されるそうですので、ぜひ興味ある方はウオッチされることをオススメします!

www.beyondcommon.org

BEYOND/CのCは「Common」だそうです。

誰もが知っておいた方が良いこと(Common)を踏まえて、それを超えた(BEYOND)先にもっとおもしろいことがある、という考えを体現したものだそう。

めちゃくちゃ同意します!当ブログも、そんなCommonづくりの一助になりたいし、自分もCommonが足らないことばかりなので、勉強し続けたいと思います。

GWで気持ちはリフレッシュできたので、実習生もくる6月に向けて丁寧に2ヶ月を頑張るぞ…!