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コーヒーにはダイエット効果がある?【最新エビデンス】


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 コーヒーは健康に良い飲みものなのでしょうか?

 

 1991年、世界保健機構(WHO)がコーヒーを「がんを引き起こす可能性のあるリスト」に追加したことによって議論が巻き起こりました。

 

 その後、1000を超える研究結果が報告され、これらをまとめて検証した報告が2016年にLancet Oncologyで発表されました。その結果は「コーヒーを飲んでも乳がん、前立腺がん、膵臓がんなどのさまざまな種類のがんを発症する可能性は低い」というものでした(Loomis D, 2016)。この報告をもとに、現在ではコーヒーは「発がん性が認められないリスト」に分類されています。

 

 さらに2017年になると、コーヒーは発がん性を高めるどころか、がんのリスクを減少させることが続けて報告されています(Poole R, 2017、Grosso G, 2017)。これらの報告をもとに、ハーバード公衆衛生大学院の見解においても、コーヒーの摂取は、がんのリスクを軽減させ、それだけでなく2型糖尿病や心臓病、うつ病などのリスクを減少させることが示唆されています。

『Coffee - Harvard T.H. CHAN』

 

 このような紆余曲折をへて、現時点での科学的根拠(エビデンス)では、コーヒーは「健康に良い飲みもの」とされているのです。

 

 そして2019年6月、世界で初めて「コーヒーによるダイエット効果」についてのメタアナリシスの結果が報告されました。

*メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

 

 今回は、コーヒーによるダイエット効果の最新エビデンスを示す研究報告をご紹介しましょう。



Table of contents



◆ コーヒーによるダイエット効果の世界初のエビデンス

 

 コーヒーにはダイエット効果があるのでしょうか?

 

 この問いに答えるために、2000年以降からコーヒーによるダイエット効果についての検証が始まりました。

 

 しかし、その検証結果は、ダイエット効果が認められるという報告(Higdon JV, 2006、Maki C, 2017)もあれば、効果がないという報告(Bouchard DR, 2010、Larsen SC, 2018)だけでなく、逆に太るという報告(Lee J, 2017、Nordestgaard AT, 2015)まであり、玉石混交したものでした。

 

 そこでアメリカ・ダートマス大学のLeeらは、これらの研究報告をまとめて検証するメタアナリシスを世界で初めて行ったのです。

 

 2019年6月、Leeらは、これまでに検証されたコーヒーとダイエット効果についての12の研究報告をもとにメタアナリシスを行い、こう結論づけました。

 

 「コーヒーにはダイエット効果があり、とくに男性に効果的である」

 

 Leeらは、ダイエット効果を示すために体格指数(BMI)とウエスト周径の変化を解析しました。体格指数はヒトの体重と身長のバランスを示す指数であり、体重(kg)÷身長(m)×身長(m)で算出され、皮下脂肪型肥満を判別します。ウエスト周径は、内臓脂肪型肥満を判別します。

 

 解析の結果、コーヒーの摂取量が多いほど低い体格指数の減少効果(WMD=-0.08)が認めらました。この効果は特に男性で示され、女性では示されませんでした。

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Fig.1:Lee A, 2019より筆者作成

 

 また、コーヒーの摂取量が多いほどウエスト周径の減少効果(WMD=-0.27)が認められました。

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Fig.2:Lee A, 2019より筆者作成

 

 これらの結果からLeeらは、コーヒーの摂取量の増加は、体格指数の減少やウエスト周径の減少といった皮下脂肪、内臓脂肪の両方の減少効果に関連していると示唆しています。

 

 では、なぜコーヒーを飲むとダイエット効果があるのでしょうか?



◆ コーヒーによるダイエット効果のメカニズム

 

 コーヒーには、カフェイン以外に1000もの化合物を含まれており、健康に有益とされるポリフェノールやクロロゲン酸などが注目されています(Higdon JV, 2006)。

 

 そして、Leeらは「クロロゲン酸」がダイエット効果に寄与していると推察しています。

 

 クロロゲン酸は、コーヒー豆に 5〜10%含まれており、その含有量はカフェイン(1〜2%) よりも多いとされています。コーヒーの抽出時間が長すぎたときに感じる雑味がクロロゲン酸によるものといわれています。

 

 クロロゲン酸を用いた動物実験では、肥満のマウスに摂取させることによって、内臓脂肪量、脂肪組織のトリグリセリド含有量を減少が認められています(Cho AS, 2010)。また、グルコース(糖)の吸収能力を80%減少させることが示唆されています(Welsch CA, 1989)。

 

 このような実験結果から、Leeらはクロロゲン酸のもつ抗肥満効果がコーヒー摂取によるダイエット効果に寄与していると推察しているのです。

 

 しかしながら、Leeらのメタアナリシスでは、観察研究をもとにしていること、研究数が少なく、また研究間のデータのバラツキ(異質性)が大きいことなどから、今後、改めてメタアナリシスを実施することが必要になるでしょう。あくまでも現時点でのエビデンスとして、コーヒーの摂取はダイエット効果にプラスになると解釈しておくのが良いと思われます。

 

 また、今回のメタアナリシスではコーヒーのダイエットに最適な摂取量は明らかになっていません。多くの研究がカップ3杯の摂取量で検証していますが、最大6杯の摂取量で検証したものまであります。そのため、現時点ではコーヒーの摂取量が多いほどダイエット効果があるということになりますが、最適な摂取量については今後の検証が待たれます。

 

 注意点としては「妊娠中はカップ2杯程度にとどめる」ということです。妊娠中にコーヒーを大量に摂取すると、カフェインによる胎児の低出生体重に関与することが示唆されており(Grosso G, 2017)、妊娠中の大量摂取は控えるべきでしょう。



 コーヒーには、がんや糖尿病、心臓病やうつ病などのリスクを減少させるエビデンスが報告されています。また、健康だけでなく、筋トレのパフォーマンスも高めることが示唆されています。

『コーヒーが筋トレのパフォーマンスを高める〜その科学的根拠を知っておこう』

 

 そして今回、世界で初めてコーヒー摂取によるダイエット効果のエビデンスが報告されました。まだまだ知見が少なく、今後の再検証や最適な摂取量などの検証を見守っていく必要はありますが、コーヒー好きにとっては嬉しいニュースになりますね。

 

 

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◆ 参考文献

Loomis D, et al. Carcinogenicity of drinking coffee, mate, and very hot beverages. Lancet Oncol. 2016 Jul;17(7):877-878.

Poole R, et al. Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analyses of multiple health outcomes. BMJ. 2017 Nov 22;359:j5024. 

Grosso G, et al. Coffee, Caffeine, and Health Outcomes: An Umbrella Review. Annu Rev Nutr. 2017 Aug 21;37:131-156.

Higdon JV, et al. Coffee and health: a review of recent human research. Crit Rev Food Sci Nutr. 2006;46(2):101-23.

Maki C, et al. Coffee extract inhibits adipogenesis in 3T3-L1 preadipocyes by interrupting insulin signaling through the downregulation of IRS1. PLoS One. 2017 Mar 10;12(3):e0173264. 

Bouchard DR, et al. Coffee, tea and their additives: association with BMI and waist circumference. Obes Facts. 2010 Dec;3(6):345-52. 

Larsen SC, et al. Habitual coffee consumption and changes in measures of adiposity: a comprehensive study of longitudinal associations. Int J Obes (Lond). 2018 Apr;42(4):880-886. 

Lee J, et al. Coffee Consumption and the Risk of Obesity in Korean Women. Nutrients. 2017 Dec 8;9(12). pii: E1340. 

Nordestgaard AT, et al.Coffee intake and risk of obesity, metabolic syndrome and type 2 diabetes: a Mendelian randomization study. Int J Epidemiol. 2015 Apr;44(2):551-65. 

Lee A, et al. Coffee Intake and Obesity: A Meta-Analysis. Nutrients. 2019 Jun 5;11(6). pii: E1274. 

Higdon JV, et al. Coffee and health: a review of recent human research. Crit Rev Food Sci Nutr. 2006;46(2):101-23. 

Cho AS, et al. Chlorogenic acid exhibits anti-obesity property and improves lipid metabolism in high-fat diet-induced-obese mice. Food Chem Toxicol. 2010 Mar;48(3):937-43.

Welsch CA, et al. Dietary phenolic compounds: inhibition of Na+-dependent D-glucose uptake in rat intestinal brush border membrane vesicles. J Nutr. 1989 Nov;119(11):1698-704.

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