オリ1位・麦谷祐介 暴力被害で高校転校も家族が支えた艱難辛苦 《もう無理》とSOSが来て…

公開日: 更新日:

麦谷祐介 (オリックス1位/富士大・22歳・外野手)

「やんちゃ坊主で、ずっと家にいられない子でした」

 こう話す麦谷の父・尚文さん(55)は、石川・能登出身で、いまは仙台市内に勤める。中学校まで野球をやり、親の勧めもあり、高校からやり投げを始めた。

 強肩を生かして高校1年から3年連続でインターハイに出場。八種競技でも高校2年時にインターハイ4位、高3時は国体で3位に入った。中大3年時にもやり投げで関東インカレ3位に入った実力の持ち主だ。4年時は総勢600人いる男子寮の寮長も務めた。

「やり投げと野球では投げ方も違いますし、技術的なアドバイスをしたことはほとんどありません。ただ、土日は近所の公園でキャッチボールしたり、通っていた小学校のグラウンドが開放されていたので、そこで僕がフライを打って祐介が捕る練習をしたりしていました」

 姉と2人きょうだいの麦谷が野球を始めたのは、母・佳子さん(55)の「子供にスポーツをやらせたい」という思いから。4歳ごろから野球とサッカーを始め、小学2年時に楽天アカデミー(軟式)に入り、野球に専念。中学では楽天リトルシニアの1期生に。同チームで麦谷を指導した古川翔輝コーチ(34)は言う。

「第一印象はずいぶん場慣れした小学生だなと。リトルシニアができて初めてのチームだったので、メディアから取材を受けていたんですが、受け答えが流暢で度胸があるなと思いました。体はひときわ小さく、新入生で1、2番目くらいに小さかった。今とは別人ですけど、運動神経は抜群でした」

 麦谷は実家を離れ、野球強豪校の健大高崎(群馬)に入学するも、1年の冬に中退した。

 入学直後、寮内で2年生数人が1年生数人に対して暴力事件を起こした。被害を受けた1年生の中に、麦谷もいた。

 日本学生野球協会は不祥事として、健大高崎に1カ月の対外試合禁止処分を下したが、部内暴力は続いた。尚文さんが野球部の監督、コーチと話し合いの場を設けようと動いたタイミングで、麦谷本人から「もう無理」とSOSが届いた。

「部の練習中にグラウンドから家に連れて帰りました。『今から寮の荷物をまとめて帰ります』と。(麦谷)本人は『耐えられる』とは言っていましたが、僕は『耐えられなくなったら連絡をくれ』と伝えていました。先のことは何も決まっておらず、本人がどうしても嫌なら、野球をやめてもいいと思っていました」

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