《王貞治の巻》打撃投手がイップスになりそうなほどの重圧を放ったケージ裏からの鋭い眼光
「世界の王」こと王貞治球団会長兼特別チームアドバイザー(84)の性格を一言で言うと、「球界一の負けず嫌い」です。
野球が大好きで、いまでも野球の話になると目がギラギラする。監督時代、外野手が2、3歩下がって捕球する程度の外野フライでも、「行っただろ!」と叫んでいたほど。負けが込むたびに「緊急ミーティング」を頻繁に行っていたのは有名な話です。
そんな王さんがダイエーの監督になったのは1994年オフ。その年のシーズン終盤、視察のために西武ドームに来ており、当時打撃投手だった僕は心臓がバクバク。子どもの頃から憧れていた王さんの前で投げるのだから、それも無理はないでしょう。
監督就任後も、しばらくはチーム全体に緊張感がありました。王さんは「もう身内なんだから俺に気を使わなくていいよ」とフレンドリーに接しようとしていましたが、僕は内心、「それ無理」と緊張しっぱなしでした(笑)。
しかも、フリー打撃中はケージの後ろから鋭い眼光でじっと見ているので、僕ら打撃投手への「圧」も凄まじい。若い打撃投手から“苦情”を聞いた山村善則打撃コーチは、王さんに「あの、バッピがですね、監督がそこで見ていると緊張でイップスになりそうだと言っているんで……。もしよかったら、違うところで見てもらえないでしょうか」と恐る恐る伝えていました。