世界的シティポップ大ブーム“真の先駆者”である米シカゴ在住のDJヴァン・ポーガム(Van Paugam)による、42年間お蔵入りになった元祖シティポップアーティスト・滝沢洋一(たきざわ・よういち)の名曲「かぎりなき夏」のRemix音源が発表された。音楽ライター・都鳥流星からの依頼が約2年越しで実った形だ。
この「かぎりなき夏 Van Paugam 2024 Remix」は12月18日にソニー・ミュージックレーベルズから発売の滝沢洋一“幻の2ndアルバム”『BOY』CD版にボーナストラックで収録されるほか、12月25日のクリスマスにはアナログシングル(EP盤)としてワーナーミュージック・ジャパンより発売されることが決定した。
まさに、世界的シティポップ大ブーム「影の立役者」2人による“奇跡のコラボレーション”だ。
滝沢洋一は、1976年初旬に音楽業界で初めて「ニューミュージック」という言葉を公共の電波に乗せたと言われている伝説のシンガーソングライター。しかし、ヒット曲に恵まれず、ソロアルバム『レオニズの彼方に』とシングル3枚を発表しただけで1982年に短い歌手活動を終えていた。
若き滝沢のバックバンド「マジカル・シティー」には、のちに山下達郎バンドに参加するドラマーの青山純とベーシストの伊藤広規が在籍した他、シティポップの世界で再評価が著しいアレンジャーの新川博もピアノとして参加。また、杉真理の1stアルバムに参加しグラミー賞受賞ブルースハープ奏者シュガー・ブルーのバンドに14年も在籍した伝説のギタリスト・牧野元昭も同バンドのメンバーだった。滝沢は、彼らがプロデビューするキッカケを作った「シティポップ 影の功労者」だ。
滝沢は2006年に56歳の若さで死去したが、9年後の2015年にはソロアルバム『レオニズの彼方に』(東芝EMI/1978)が音楽ライター・金澤寿和らの尽力によって初CD化され「隠れた名盤」「奇跡の一枚」と音楽業界で大きな話題となった。
そして今年8月3日には『レオニズの彼方に』が45年ぶりにアナログ盤として再発。世界的シティポップ大ブームの中でも再評価著しい名盤だ。
しかし、1982年7月にお蔵入りとなった滝沢の幻の2ndアルバム『BOY』は、現在もミックス済みマスターテープが「行方不明」のまま。二度目の発売延期に見舞われそうになった『BOY』だが、世界で初めて滝沢の生涯と音楽活動を伝えた弊サイトMAG2 NEWS運営元の「株式会社まぐまぐ」のサポートによって、ワーナーに奇跡的に保存されていたマルチマスターテープから新たにミックス作業をおこなうことに。
そして12月18日、名エンジニア・坂本充弘(あつひろ)が技巧の限りを尽くし、アルバム『BOY』の世界初リリースが奇跡的に実現することになった。
お蔵入りになって42年が経過した『BOY』が、CDとアナログ盤で12月18日に同時発売することが決定したことで、滝沢洋一「かぎりなき夏」が世界初公開された。
滝沢は作曲家として、70年代から80年代にかけて小泉今日子、松本伊代、いしだあゆみ、サーカス、岩崎宏美、山下久美子、ビートたけしら他のアーティストやアイドル、タレントらに楽曲提供しており、その数なんと100曲以上にも及ぶ。須藤薫や清野由美、AMY、大野方栄、ブレッド&バターらに提供した楽曲は近年、海外の音楽ファンらによって「シティポップ」として再評価されている。
そんな提供曲の一つが、滝沢の『BOY』がお蔵入りになったがために“秀樹”へ1984年に提供された名曲「かぎりなき夏」だった。米国シカゴ在住のDJで、世界的シティポップブームの「真の火付け役」であるヴァン・ポーガムは、その楽曲を2010年代にシティポップの名曲として“発見”したという。
ヴァンは1985年フロリダ州生まれのDJで、2016年より日本で70年代後半から80年代にかけて作られた「シティポップ」と呼ばれる楽曲を1本の曲に繋ぎ合わせたMix動画を、自身のYouTubeチャンネルで複数公開。
3年後の2019年時点で10万人近いチャンネル登録者数を誇り、全動画の合計再生回数が約1千万回に達するなど、日本のシティポップ文化を世界中に広める役割を果たした「現代のフェノロサ」とも言うべき存在だ。
しかし、ヴァンは当時のYouTubeの規約に違反しているとして著作権侵害の通告を受け、2019年2月14日にアカウントをBANされた。その後、YouTubeの規約が変更になり、著作権者を明記すれば一部の楽曲はアップできるようになったが、世界的シティポップ大ブームが到来した頃にヴァンを思い出す者はなく、ブームの先駆者であったにも関わらず、その存在は最近までほとんど知られていなかった。
そんな悲しき先駆者のヴァンは、2020年代から過去の功績に注目が集まるようになり、今では日本のテレビやラジオの「シティポップ特集」番組に出演するなど、その名が日本の音楽ファンにも徐々に浸透するようになってきた。そして21年には、シティポップ界隈で再評価されている歌手・秋元薫の「我がままなハイヒール」など3曲のRemix音源をビクターから発表している。
さらに2023年には、あの松原みき「真夜中のドア ~stay with me」の作曲者である林哲司氏とシティポップブームについて対談。シティポップを「作った側」と「広めた側」による初の対談として、多くの音楽ファンの注目を集めた。
【関連】【CITY POP対談】世界的大ヒット「真夜中のドア」作曲家・林哲司 × 世界的シティ・ポップブームの先駆者・DJヴァン・ポーガム
“お蔵入り”の憂き目に遭った作曲家・滝沢と、“悲しきブームの先駆者”DJ・ヴァンは、奇跡的に「かぎりなき夏」という楽曲の縁で結ばれ、音楽ライター・都鳥流星とヴァンの2年近くに及ぶ親交をキッカケに、この度ついに滝沢版「かぎりなき夏」のRemixが実現した。
エレクトロポップあるいは80年代ディスコ風とも言える感じにアレンジされたDJヴァンによる滝沢版「かぎりなき夏」Remixは、2024年12月18日発売の滝沢洋一の『BOY』CD版にボーナストラックとして収録されるほか、12月25日には単独でアナログシングル(EP盤)としても発売されることが決定。このEP盤は、BASEのまぐまぐ直営ネットショップ「MAG2 NET SHOP」で予約を開始している。
● 滝沢洋一『かぎりなき夏』Van Paugam 2024 Remix / 1982オリジナル Mix アナログシングル(EP盤)特設サイト
このシングル盤のB面には、滝沢邸から奇跡的に発見されたオープンリールテープ収録の滝沢版「かぎりなき夏 オリジナル1982 Mix」を収録。これは1982年当時の完全オリジナルMixであり、CD版およびLP盤収録の「2024年Mix」には音源ソースが不明のため入れられなかった「波のSE」が入っている唯一無二のレア音源だ。
このEP盤B面の「かぎりなき夏 オリジナル1982 Mix」は、12月18日に同時発売されるCDとアナログアルバム(LP盤)には「未収録」。元祖シティポップアーティストによる、このシングル盤でしか聴けない「42年前の奇跡」の音にぜひ触れていただきたい。
↓『BOY』奇跡のリリースまでの経緯については、以下の記事を参照
【関連】42年間も封印された“幻のシティポップ”。滝沢洋一2ndアルバム『BOY』悲願の初リリースと名曲「かぎりなき夏」をめぐる奇跡の物語
ジャケットデザインには、シティポップを代表するイラストレーター・鈴木英人(すずき・えいじん)が、偶然にも楽曲と同じコンセプトで描いていた作品「終わりなき夏と」が採用される。
元祖シティポップアーティスト、世界的シティポップブームの火付け役、シティポップの代名詞的イラストレーターという3人による「究極のシティポップ」をお聴き逃しなく。
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