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島根銀行2019年3月期中間決算は苦戦が続く~持続可能かは疑問~

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(写真は本文とは関係ありません)

島根銀行が業績の立て直しに苦戦しています。

中間決算としてもコア業務純益(債券売買益を除いた本業収益)では2期連続の赤字となりました。島根銀行に対しては本業収益の低迷を理由に金融庁が業務改善命令を検討していることまで報道されていました(その後、命令が出されたとの報道はされていないようです)。島根銀行は企業としての持続可能性はあるのでしょうか。

また蛇足ですが、直近ではKYBの不適合品の免震ダンパーが本店に使われていたことも報道されています。この総工費60億円程度をかけて建設された本店は、島根銀行が赤字となった要因とも言われており、同行にとっては頭の痛いところでしょう。

それでは、島根銀行の2019年3月期中間決算について確認していきましょう。

 

決算概要

まずは島根銀行の決算の概要を確認しておきましょう。以下、日経新聞記事から引用します。

島根銀で4~9月決算 黒字化時期、明言せず

2018/11/12 日経新聞

島根銀行は、店舗網再編による経費削減や営業人員の増強による融資拡大などで収益改善を図る。本業のもうけを示すコア業務純益については12日発表の2018年4~9月期決算では赤字だった。鈴木良夫頭取は「10月に実施した営業体制見直し(の効果)を浸透させ、できるだけ早期にコア業務純益の黒字化を達成したい」との考えを示したが、具体的な時期は明言を避けた。

同行は金融庁による財務内容や営業体制などの検査を受け、収益体制の見直しを急いでいる。10月には、支店から出張所への種類変更や出張所の事実上の廃止を内容とする店舗網再編を実施。25支店のうち3支店を出張所に変更し、9出張所のうち5出張所を事実上廃止した。来春に向けても第2弾の店舗削減を計画中という。
こうした店舗再編によって営業人員を約30人増やした。鈴木頭取は「重点地区に経営資源を集中投下したい。顧客に迷惑がかかるかもしれないが、残った店舗でカバーしていきたい」と話した。
融資拡大のため優良企業向けよりも高い金利が見込める「ミドルリスク層」の開拓を進める。女性行員による融資獲得などにも力を入れる。
同行が発表した18年4~9月期の決算は連結純利益が前年同期比28.9%減の1億7400万円で、コア業務純益(単体)は2億3700万円のマイナスだった。4~9月期としてはコア業務純益の赤字は2期連続で、赤字幅は前年同期比で1600万円縮小した。
だが、コア業務純益黒字化のメドについては18年3月期の決算会見では「20年3月期」としていたが、この日は目標を明言しなかった。

(以下略)

島根銀行の業績が厳しいことが分かる記事内容です。

それでは、同行の業績についてもう少し詳しく見ていくことにしましょう。

 

2019年3月期2Q業績

では、島根銀行の2019年3月期中間決算(4~9月)の決算における主要数値を確認していきましょう(単体決算)。
  • 業務粗利益(≒一般企業の売上高)2,389百万円(前年同期比▲353百万円)
  • うち、資金利益(預貸金・有価証券利息)2,211百万円(同▲94百万円)
  • うち、役務取引等利益(手数料収益等)▲90百万円(同▲60百万円)
  • うち、その他業務利益(債券売買益等)268百万円(同▲199百万円)
  • 経費(人件費、物件費等)2,359百万円(同▲169百万円) 
  • コア業務純益(下記業務純益から債券売買利益を控除=「本業」損益)▲237百万円(同+16百万円)
  • 業務純益(≒一般企業の営業利益)40百万円(同▲194百万円) 
  • 資金運用利回 1.23%(前年同期比▲0.13%=ポイント)・・・(A)
  • うち、貸出金利回 1.36%(同▲0.05%)
  • うち、有価証券利回 1.08%(同▲0.49%)
  • 資金調達原価 1.29%(同▲0.15%)・・・(B)
  • うち、預金等利回 0.09%(同▲0.04%)
  • 総資金利鞘  (A) -(B) â–²0.06%(同+0.02%)
この数値から分かることは、本業の収益である資金利益(貸出金の利息等)は確かに減少していますが、本質的に問題なのは債券売買益が無ければ、黒字を維持できないということです。

すなわち、預金を集めて貸出を行うのでは、島根銀行は黒字にならないのです。本業赤字ということです。

 

島根銀行の中間決算まとめ

以上述べてきたように、現時点では島根銀行が黒字決算となるか否かは、債券売買益を計上できるかにかかっています。

それでは、債券売買益をいつまで島根銀行は計上できるのでしょうか。

債券はマイナス金利政策導入により利回りの低下余地は乏しいでしょう。これから新たに購入した債券では含み益となることは難しいでしょう(債券は金利が低下すると価格が上昇する=含み益が発生するため)。すなわち、現時点でどの程度の債券含み益があるかがポイントとなります。

<2018年9月末時点(単体)> 

  • その他有価証券のうち債券含み益 +1,943百万円(2018å¹´3月末比▲317百万円)

島根銀行の半期での本業赤字額は約2億円程度です(通年では4億円程度)。含み益には、まだ若干の余裕があるため、急激な赤字転落とまではいかないものと思います(そのように島根銀行がコントロールするでしょう)。

島根銀行の取り得る選択肢のうちメインとなるのは「債券含み益が残っている間にコストを削減し、本業で利益が計上できる体質に転換すること」でしょう。すでに一部の店舗については削減・再編を開始していますが、一段の踏み込みが必要と思います。場合によっては人員削減も検討されるかもしれません。

収益増強策としては、ミドルリスク向け貸出(リスクは少し高いが、金利も高い貸出)を強化するとしていますが、こちらの方は他の銀行も積極的に取り組んでいること、日銀や金融庁が警鐘を鳴らし始めていることから、収益の柱となることはないでしょう。

島根銀行には厳しい局面が続くものと予想します。

(なお、他行との統合は報道ベースでは頭取が否定しています。しかし、統合は検討すべき、非常に重要な選択肢だと思います)