銀行員のための教科書

これからの時代に必要な金融知識と考え方を。

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

三菱UFJ信託銀行の豪州資産運用会社買収の難しさ

三菱UFJ信託銀行がオーストラリアの資産運用会社を買収すると発表しました。国内金融機関による海外の資産運用会社の買収では過去最大規模となります。 今回は、この買収について簡単に考察します。 報道内容 買収のメリット 本件買収の留意点 報道内容 本件…

私立大学等の資産運用の現状~積極化はリスクと隣り合わせ~

私立大学が少子化への対応もあり資産運用を積極化しています。 今回はこの私立大学の資産運用について簡単に考察します。 報道内容 調査結果 所見 報道内容 まずは足元の動きをつかみましょう。以下、日経新聞の記事を引用します。 大学 リスク投資に軸足 20…

Tesla(テスラ)の2018年3Qは業績改善が見える決算結果

米自動車メーカーのTesla(テスラ)が2年ぶりに四半期で黒字化を達成しました。 Teslaはモデル3の量産体制構築に苦戦し、赤字が膨らみ、一部では資金繰り不安も囁かれるようになっていました。 今回はTeslaの2018年3Q決算について内容を確認していきましょう…

Amazon.comの2018年3Q決算は「期待外れ」なのか

Amazon.com(以下Amazon)の株価急落がニュースとなっています。 2018年10月26日には株価が約8%下げ、時価総額が米マイクロソフトに逆転され米国3位になりました。 この株価はAmazonが発表した2018年12月期第3Qの決算の影響とされています。 今回はAmazonの…

富士通が実施する従業員の大規模配置転換は何を意味するのか

富士通が5,000名規模の従業員を配置転換させると発表しました。総務や経理等の間接部門の従業員が対象です。 この対象者は営業やSE等に育成していくとしています。そして、配置転換後の仕事に合わない従業員は転職支援を行うのです。 この発表から読み取れる…

デジタルマネーでの給料支払は銀行への更なる追い討ちになる可能性

給与・賃金の支払いにデジタルマネーが認められるとの報道がなされました。 これは非常に驚きのニュースといえます。銀行のビジネスモデルの一端も崩れる可能性があります。 今回は、なぜ給与・賃金にデジタルマネーでの支払いが認められていなかったのか、…

日銀金融システムレポート(2018年10月号)のポイント

日本銀行(日銀)が半年に一度公表している金融システムレポートを公表しました。 今回はミドルリスク企業向けや不動産業向け貸出、有価証券投資にある程度焦点があたっています。 今回はこのレポートにつき概要を簡単に見ていくことにしましょう。 概要 今回…

債券と株式の関係をもう一度おさらいしてみる

債券と株式は逆相関の関係にあると言われます。 債券は金利上昇時に「値下がり」し、金利下落時には「値上がり」します。株価が上がるときには景気が良くなり金利も上がる(債券は値下がり)ため、債券と株式は逆の動きをしているとされています。 長く続いた…

日銀副総裁の講演にみる仮想通貨・デジタル通貨の今後

日銀の副総裁が「仮想通貨が支払い手段として普及する可能性は低い」との見解を示し、一部で話題となっているようです。 報道では細かい内容、ニュアンスまでは報じられていませんので、日銀の副総裁が具体的に何を語ったのかについて確認してみましょう。 …

KYBの免震不正問題は経営の屋台骨を揺るがす可能性あり

油圧機器メーカーのKYBが免震装置の検査データ改ざん、不適合製品の出荷を行っていたと発表しました。 本件は、以前騒ぎになった東洋ゴム工業が起こした免震ゴム不正事象と恐ろしいほどよく似ています。東洋ゴム工業は売上高のごくわずかを占める事業で巨額…

仮想通貨の証拠金取引の倍率上限は下がる方向に

金融庁が開催している「仮想通貨交換業等に関する研究会」の第7回が2018年10月19日に開催されました。 当日時点では議事に使用された資料のみが公開されていますが、報道では仮想通貨の証拠金取引、信用取引について規制すべきとの議論がなされたようです。…

NTTドコモ「信用スコア」算出サービスの拡大は限定的である可能性

NTTドコモがスマートフォンの利用状況等を分析して個人の信用を算出するサービスを金融機関向けに実施すると発表しました。 今回はこのNTTドコモの取り組みについて考察します。 NTTドコモの発表内容 報道内容 サービスの背景 まとめ NTTドコモの発表内容 ま…

金融と、現在の金融機関と、未来の金融機関

我々は「金融」という言葉を何気なく使っています。 金融機関という言葉を聞くと、思い浮かぶのは銀行が多いかもしれません。しかし、保険会社も証券会社も金融機関と呼ばれています。銀行と保険会社、証券会社の共通点は何でしょうか。 銀行が「情報銀行」…

TKPと大塚家具の資本提携と、大塚家具の今後に起こる可能性があること

貸会議室大手のティーケーピー(TKP)の中間決算が発表されました。 TKPは大塚家具と資本提携を行ったことをご存知の方もいらっしゃるでしょう。 TKPはこの中間決算で大塚家具の株式の減損損失を計上し、最終減益となりました。そして、中間決算を受けて2018…

運用はインデックスでもアクティブでも良いが、最も問題なのは「個人の感情」である

インデックス型とアクティブ型の投資信託のどちらに投資すべきかという議論が近時なされています。 特に、森金融庁前長官が個人の運用についてはインデックス・ファンドを推奨したこともあり、個人投資家にはインデックスファンド信仰のようなものがあるかも…

米シアーズ(Sears Holdings)の破綻報道は、米国小売破綻ドミノの前触れの可能性

(写真は旧シアーズ・タワー/現在は名称変更) 米小売大手シアーズ(Sears Holdings Corporation)が米連保破産法11条(いわゆるチャプターイレブン≒日本における民事再生法)を申請すると報道されています。 一時期は通信販売で成功し、世界最大の百貨店(…

スルガ銀行の収益還元法による不動産評価という新しくて古い問題

シェアハウスオーナー向け融資等、スルガ銀行による投資用不動産融資問題が表面化して暫く経ちました。 通帳残高偽造の事象が有名になりましたが、それ以外にスルガ銀行の不動産評価についても問題があったことが明らかになってきています。 今回は、スルガ…

相続税評価における不動産優遇は縮小していくのか

金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第14回)が開催されました。 今回の議題は高齢社会における金融サービスのあり方です。 議事録は現時点(2018年10月11日)では開示されていませんが、事務局説明資料に筆者が気になる記述がありました。 それ…

信用金庫(信金)がリスクを取れない理由~1/1,250という数字~

東京商工リサーチが「信用金庫の総資金利ざや調査」を発表しました。この調査には信用金庫(信金)の厳しい現状が表れています。 今回は信金の置かれている状況について考察することにしましょう。 「主要151信用金庫 総資金利ざや」調査 まとめ 「主要151信用…

銀行の振込時間を24時間365日に拡大することは最低限の対応

2018年10月9日より、銀行の振込が24時間365日可能となるシステムが稼働開始します。 今回はこの振込時間の拡大について確認しましょう。 報道内容 なぜ今まで振込時間に制限が設けられていたのか 今後の振込時間 所見 報道内容 24時間365日の他行振込が可能…

資金移動業の規制が緩和されたらMUFGコインは無意味になる可能性も

日本政府が銀行以外の事業が行う「資金移動業」の規制緩和を検討していると報じられています。 この規制緩和はフィンテック企業等の「送金業務」への参入をさらに促すものになりますが、他にも影響を与えることが予想されます。 今回は資金移動業の法規制見…

スルガ銀行への業務停止命令は「一歩」踏み込んだもの

ついに金融庁がスルガ銀行に対して一部業務停止命令を含む行政処分を行いました。 このような事例は過去になかったため金融庁の行政処分内容には注目が集まっていました。 今回は、この行政処分の内容について考察しましょう。 行政処分の内容 所見 行政処分…

もうそろそろ銀行の働き方を見直した方が良い理由

日本銀行が開催した金融高度化セミナー「金融機関の働き方」の講演要旨が公表されました。 この講演では、人事制度や働き方について、銀行員のみならず企業で働くビジネスパーソンにとって有用な示唆がなされています。 今回はこの講演の一部を取り上げ、働…

地方銀行の次の問題は「貸倒引当の算定方法」

金融庁主催の「融資に関する検査・監督実務についての研究会(第3回)」が開催されました。この研究会で議題となったのは銀行の貸倒引当金です。 銀行、特に地方銀行は業績が厳しいとされています。近年、その銀行の利益を何とか支えてきた利益要因の一つが…