目だった争点がなく投票率が低くなった2019年7月21日の第25回参院選挙は、野党が良い意味で平常に戻ったことが分かる選挙でった。建前に拘らず、現実を見据えた展開ができた。レベルの低い基準ではあるが、小池—前原の希望の党騒動の結末を考えれば効果が確認されていることを実施するだけでも上出来だ*1。議席数が少ないと政党に所属する政治家の経験値が増えず、組織としてジリ貧になってしまう現実を考えれば、小手先技でも議席数を確保するのはとても大事である。
選挙制度に応じて戦術を変えることで、同じ得票数でもより多くの議席数の獲得を目指すのは、野党言えども政党としては当然の行為。小選挙区(参院では一人区)では野党間で候補者を一本化するほうが望ましい。しかし、政党組織の中の人から立候補者を立てるのではなく、独立した候補者が政党に所属する日本型の政治では上から有無を言わせず強制するわけにもいかず、さらに労組と共産党の間に軋轢がある*2上に、選挙制度の性質を政治家自身も理解していないと思わせるときがあり*3、言うほど容易ではない。だから、2016年と同様であっても野党共闘を実行したのは評価できる。二人区でも選挙協力をしたほうがよかったように思えるが。
結果は上場とは言えないが、自民党の単独過半数を押さえ込み、改憲勢力を2/3未満に抑えているので悪くは無いであろう。もちろん獲得票数自体を伸ばさないと、勢力拡大には限度がある。選挙協力だけではなく、他の事もしないといけない。労組も勝ち馬に乗る傾向があるとは言え、労組の支援があった候補者はそこそこ良い結果を得ているようだ*4し、労働組合の組織率向上などに取り組んでいくなどしないといけない。労働組合が考えることなのではあるが、非正規労組の組合あたりに接近したり、三六協定を不適切に締結している企業*5を探して労組を組織させたり、労組の組合費を下げて余計な活動負担を抑えるようにしたり*6、地道な活動をしても良いのでは無いであろうか。野党の人々には、労組側からの圧力が嫌そうな人も多そうではあるが。
*1関連記事:野党が仲良く選挙協力をする方法
*3小池—前原の希望の党騒動では、小池氏の新興勢力と民進党の調整を行おうとしたのかと思いきや、結局、重鎮や左派勢力を排除し、さらに彼らの選挙区に落下傘かつ泡沫な候補者を擁立し、自民党の候補者を支援することになった。逆に、2016年は保守勢力だと見なせる幸福実現党が候補者を立てて、自民党の票を取ってしまった現象もある(関連記事:日本共産党の謀略と幸福の科学の霊術が自民党の完勝を防いだ)。
*4労働組合は8勝2敗: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
*5我が国は毎年労働者の代表を投票などで選出して経営側と合意しないと実は残業させられない法制度になっているのだが、こんなに労組組織率が低くて大丈夫なのかと思う。
*6やはり文句は出ているようだ。JR東労組「3万人脱退」事件では、「東労組を脱退した3万人の動きだ。脱退者の間では「これで高い組合費を払わなくて済む」「勉強会やデモなどに振り回されなくなったので、よかった」という声が大勢を占める」と言う記事が出ていた(JR東労組「3万人脱退」で問われる労組の意義 | 経営 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)。
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