昨年、韓国で出版され、迅速に邦訳された『反日種族主義』を拝読したので紹介したい。
本書は、韓国の経済史家らが日韓の歴史認識論争について、史料をもとに韓国側の誤解を解きつつそのような誤解を発生させた社会風潮を非難する本。概ね、日本政府の公式見解と合致しているが、近年発見された史料をもとにしている部分もあるし、前近代の朝鮮社会についての説明もあって勉強になる。
インターネット上で話題になっている事件を、理論とデータをもとに社会科学的に分析。
外交では国際儀礼が重視されるしやり取りも慎重に行われることが多いが、行き当たりばったりで自滅しても、うまく無かったことにする豪腕もいる。韓国の文在寅政権にも、そういう人がいるようだ。物議を醸している“GSOMIA終了の通告停止”は、意外に上手い方便になっている。むしろ、その意図が見えてくると、延長ではなく、終了の通告停止と言う二重否定の冗長さが最高に思えてくるぐらいだ。
社会学者の卵の古谷有希子氏が「日韓関係:互いを敵視してしまうのはなぜなのか」と言うエッセイを書いているのだが、現時点でそこにある事実誤認もしくは表現上の問題を誰も指摘していないようなので記しておきたい。他人を歴史修正主義と罵る前に、しっかりとした文献で事実関係を確認する癖をつけるべきではないであろうか。
韓国の文在寅大統領がASEAN訪問で各国に協力を求めると言い出し、韓国の康京和外相がBBCのHARDtalkと言う番組に出演したり、文在寅大統領の政策ブレーンとして知られる延世大学の金基正教授がThe National Interestと言う雑誌に寄稿*1したりと、日韓関係の悪化に関して韓国首脳は自己正当化に余念が無い。さらには福島第一原発のトリチウムを含む処理水の投棄や旭日旗の問題など次々に話題をつくってくれるわけだが、おかげでちょっと困ったことなっている。皆さん、日本政府の主張が何であったか覚えているであろうか?
対日批判を続けてきた韓国の文在寅大統領だが、2019年8月15日の光復節のスピーチではそれをトーンダウンさせ、日本が対話を望めば「喜んで手を結ぶ」 と柔軟な態度を見せた。しかし、日韓請求権協定に規定された、日韓で協定解釈が異なったときの対話手段である仲裁委員会の設置については拒絶し続けているし、日本国民を挑発するかのように、福島第一原発の災害・事故から8年以上経った今頃になって、日本産食品の放射線検査強化をはじめたり*1、韓国も海洋投棄を行っているトリチウムの廃棄に関して日本政府に説明を求めだしている*2。昨日はとうとう、GSOMIAの破棄を決定した。文在寅政権は、一体どうしたいのであろうか?
社会学者の卵の古谷有希子氏が「日韓関係の悪化は長期的には日本の敗北で終わる」と言うエッセイを書いていて、色々とツッコミどころがあるのではてなブックマークのコメントが賑わっている。既出な問題な気もするが、大きな無理解が4つあるようなので指摘しておきたい。
荻上チキ氏のラジオ番組*1で、朝鮮半島を専門とする政治学者の木村幹氏がインタビューを受けていて拝聴した。社会学畑の荻上チキ氏が振り回す日本人の植民地主義が日韓の軋轢を生み出したかのような話を、木村幹氏が日本人の植民地主義を否定し、日本側は変わっていないのだから韓国が原因で発生した問題とやんわりと全面否定していて面白い。しかし、木村幹氏の説明にも、ちょっと謎なところがある。
大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて、日韓のメディアが大きく報じている。建前は韓国の貿易管理体制や日本との連絡体制の機能不全への不信であり、本音は韓国が日韓の合意を遵守しないことへの不信と言うことになるのは明白で、実際問題、韓国側に本音を理解してもらいたい官邸の計算が見える。日韓の合意事項を守らない韓国に、何らかの措置をとるかもよと言うメッセージを十分に伝えた。
ネット界隈に限らずだが、左派の間に京都大学の歴史家、堀和生氏が唱えている「慰安婦が慰安所での稼働で一定の収入を得ていたことは事実であるが、占領地域から日本への送金には様々な規制があり、預金凍結措置によってその引き出しには厳しい制限が加えられていたので、(実質的な)利益を享受できなかった」と言う説*1が定着したようだ。信じている人は悪気はないのだと思うが、この説は脆弱な面があるので、もう少し批判的に検討する必要がある。
強制性の無い官募集と官斡旋、徴兵と同じく強制の徴用を全部まとめて「徴用」としてしまう語義曖昧論法*1で、新日鉄住金の戦時中の朝鮮人の使用は、徴用でも強制連行でも無い気がするのだが、最高裁にあたる韓国大法院は新日鉄住金に“元徴用工”への損害賠償を命じて、事前の予定通りではあるが、日韓の軋轢がさらに高まっている。
2018年6月12日の米朝首脳会談後、様々な論評が書かれている。その多くで勝ち負けを言及しているのだが、具体的な合意事項は無く、勝ち負けを言えるほどの変化は無かった。
北朝鮮は核・弾道ミサイルを放棄していないし、日米中韓(そして国連)は経済制裁を解除していない。北朝鮮は核・ミサイル開発を、米韓は軍事演習をそれぞれ暫時停止する双暫停モデルが採用されたから中国が一人勝ちした説は、それが一時的な緊張緩和に過ぎないことを忘れている。
息子がネトウヨになって変な本の話を聞かされるとうんざり感を伴ったツイートを見かけたのだが、そういう事はよくあると思う*1。
親としては教育を施しネトウヨで無くしたくなると思うのだが、どこかで恥をかかないとそうでなくならないから無駄と言う体験談も聞く。諦めるしかないようなのだが、何もしないと心が落ち着かないのが親心。ここは発想を逆にして、歴史などの本を紹介してガチ感を補強してあげよう。