11月9日 涸れた今川を見る会-3 |
(承前)
11月1日、に関市の NPO法人ギンブナの会 http://www.ginbuna.org/ の須田事務局長から訴えがあった翌日、私のお得意の行政(岐阜県河川課/美濃土木事務所)への「リサーチ/ヒアリング」活動をしました。
◇ ◇
「リサーチ/ヒアリング」活動結果。
1.岐阜県河川課
☆ 本川のほうはH16年水害を受けて、「床上浸水対策特別緊急事業」として、高水敷の掘削を行い、河積を増やしている(洪水時の河道での流下能力を増強している)。
☆ 高水敷の掘削なので、平水時には、特に(今川に流れず)本川に多く流れる、ということにはならないようにしてある。
☆ 河川改修事業 > 床上浸水対策特別緊急事業(上記)
☆ 今年、今川に分流する導流堤が壊れた。この復旧のことは、美濃土木事務所に訊いて欲しい。
2. 美濃土木事務所 河川砂防課
☆ 今年7月8日-17日の梅雨前線の活発化で長良川は増水した。
今川への導流堤の根固めブロックが流失し、分流するための堰としての機能が失われた。 (近藤注:根固めブロックの流失/導流堤の損壊は8月らしい)
☆ 関市と保戸島揚水組合と美濃土木事務所が協議し、関市が主体で今川の一部の掘削とポンプの取り付け・運転を行った。今は非かんがい期なので、ポンプは稼働していない。
☆ 「原形復旧」ということで、11月に入札があり、今年度中には導流堰の復旧工事は終わる予定。
(近藤注:11月4日に指名競争入札があり、11月9日に契約し同日より工期開始-今年度中に完成予定。入札価格は約2000万円)
☆ 今川の生態系とか魚類の調査とかは、特に行っていない。
◇ ◇
長良川中流部、岐阜県の土木事務所の管轄でいうと岐阜土木から美濃土木にまたがる区間12.0kmで、今河川改修工事=床上浸水対策特別緊急事業が進められています。
この事業(河道掘削工)、今回の今川涸れ(導流堤が壊れたことも含む)の原因だ、という説も有力ですが、今は私は断定しません。
まずはどういう事業なのかをみましょう。
岐阜県トップ > 県土づくり > 道路・河川・砂防 > 河川
> 安心で安全な郷土づくり > 河川改修事業
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/kasen-kaisyu.html
床上浸水対策特別緊急事業
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/kasen-kaisyu/yukaue.html
長良川の事例
長良川の事例長良川中流域は、H16.10.20の台風23号に伴う記録的な豪雨により、岐阜市加野〜美濃市笠神において床上浸水190戸、床下浸水97戸という甚大な被害が発生しました。この浸水被害対策として、県ではH18年度から床上浸水対策特別緊急事業を実施し、浸水被害の軽減を図っています。
事業期間 : H18〜H22
主な工事内容 : 河道掘削工、護岸工、築堤工
長良川床上事業パンフレット (PDFファイル 12MB)
http://www.pref.gifu.lg.jp/kendo/michi-kawa-sabo/kasen/anshin/kasen-kaisyu/yukaue.data/yukauepanf.pdf
↑
「この事業について、何らかの範囲の住民などを対象に説明会などを行ったと思うのですが、パンフレットか何かありませんか?」と尋ねたら、「すでに残部が少なくて、外部の人に送ることができない」とのことなので、「ではホームページにPDFファイルでアップして下さい」と頼みました。
岐阜県河川課は、この程度のことなら、イジワルなどせずにやってくれます。
◇ ◇
パンフレットの5pの「床上浸水対策特別緊急事業の内容」が一番分かりやすいです(細かくなるので上記URLを開いてご覧下さい。ここではどのページかを特定するだけの意味でJPGファイルを示します)。
ここには導流堤のことは触れられていません。このパンフを作った後に(この工事が始まった後に)導流堤が壊れたのですから。
ついでにパンフ5pの左下の「岐阜市~関市(加野・芥見・保戸島)」の保戸島(長良川左岸)の河道掘削工事現場の写真。
地元の人が語るには「もともと浸水しやすい場所で、人家などはなかったところを住宅地にしたために甚大な水害が起こることになってしまった(※)」地域だそうです。
今の事業は2004年の台風23号による床上浸水被害への対策事業です。「甚大被害があると予算がつく(=甚大被害がなければ、何の手当もなく放置され続ける)」という余りにもありがちな話。
※ 大きな水害のほとんどがこのパターンで起きている。
以前であれば、田畑は水に浸かるが(時期によっては、収穫に影響を与え「被害」となるが、あまり被害がないときもある)人家は助かる、田畑にいったん水が入ることで下流への負荷が分散される(ピークカットとなる)という、なかなか「よく練られた」治水対策であった。
しかし、この半世紀のうちにその知恵は失われ、ひたすら「被害」をもたらし、その被害も甚大なものとなってきている。
根本的に「治水対策」が誤っていたのではないか、と思う。
たとえば都市計画と河川の計画が(同じ建設省でありながら!)、平然と縦割りでなされてきたことには「呆れる」というか「驚嘆する」というか … 完全に「beyond理解」。
◇ ◇
長良川本川が今川に分かれるすぐそばに保戸島用水の取水口があります。(そのための取水堰もある)。ここから導流堤のある河原に下りました。
この左のほうが上流で、長良川と今川が分かれるところ。右が今川の下流になります。
右のほうの石積みが保戸島用水の取水堰です。
右写真の中の左手前の水は「関市が主体で今川の一部の掘削」したところ。
ここからポンプで左の写真の水門の上に水を上げたのです。今はただの「淀み」です。
向こうの水は「ようやく少しだけ今川の方向に来て止まっている水」です。簡単には取水堰を超えられそうにありません。
長良川と今川が分かれるあたりの砂州と壊れた導流堤。
◇ ◇
測量したわけでもないので、単純に「現場を見ての直感」でしかありませんが、「約2000万円の導流堤の原形復旧工事」では、今川に水は戻らない、解決にならないと思いました。
まずは今川と長良川本川の河床の高さの違い。現状では、今川のほうが遥かに高い。しかも保戸島用水への取水堰より高い水位にならない限り、今川に水は流れません。
「測量したわけではない」と念押しはしますが、見た限りにおいては導流堤の天端より保戸島用水への取水堰の天端のほうが高いです。水深が何メートルにもなれば、超えられるのでしょうが、どう見ても長良川の「平水」ではそんな水位にはなりそうもありません。
また、すでに長良川本川は深掘れしています。全体的に長良川本川のほうが、今川より河床が低いですから、出水の際には、長良川本川に向かう水の力が大きくなります。
「再建された」導流堤の下流側は激しい渦を生じ、導流堤直下が洗掘されるでしょう。 ちょっとくらいの根固め工(全部込みで「約2000万円の工事」では簡単なことしかできない)では止められないように感じます。
そうすると、結局は導流堤は、また「根こそぎ」壊れてしまうことになります。
◇ ◇
岐阜県河川課が「カネがない」ことはよくよく分かっています。
だからこそ、「知恵と工夫」「地元の理解(☆)と協力」が必要なはずです。
☆ 従来、お役所は「ご理解頂きたい=役所が正しいに決まっている、理解できないほうが悪い」というふうにこの言葉を使ってきました。それはダメです。「理解されないのは、もともと役所が間違っているのか、それとも(中味は正しいのだけど)説明が下手くそすぎて話にならないのか、どちらかだ」と思ってくれないといけない。
◇ ◇
近いうちにいくつかの団体が連名で、まずは岐阜県に説明を求めることになりそうです。
流れやすくするということが、こんなところにも影響を及ぼすようですね。昨今のゲリラ降雨も、一気に出水し底掘れの原因につながっている気がします。これには上流部の森林保全も関わっていると思いますが・・・。
もう1つ気になることがありますが、岐阜市から関ににかけて流れを早くすることにより関から美濃の水位は若干下がるかもしれませんが、荒田川等の排水能力が低下することは考えられないのでしょうか?もっと大きな被害出るのではと懸念しています。