「原風景復元事業」で景観がブチ壊し? |
中日新聞2010年1月21日夕刊に以下の記事が載った。
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計画お粗末、実現窮地に 長良川河川敷の原風景復元
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2010012102000240.html
雑草が生い茂る岐阜市の長良川河川敷を、玉石が並ぶ30年以上前の状態に戻す同市の「原風景復元事業」が窮地に陥っている。雑草の下に埋まっているはずだった玉石が見込み通り現れず、工事は途中でストップ。市の事前調査の甘さも浮き彫りとなり、原風景とほど遠い泥と砂利の河原と化していた。
対象は、1300年の歴史を持つ長良川鵜飼が開かれる河川敷約3万平方メートル。1980年ごろまでは真っ白な玉石が広がる河川敷だったが、上流の保水能力がなくなり土砂が流れ込み、竹やススキが生い茂る状態になっている。
海に面していない県では初めて開かれる6月の「全国豊かな海づくり大会」を前に、市や国土交通省木曽川上流河川事務所などで構成する「かわまちづくり懇談会」が復元方針を決めていた。
昨年12月中旬、河川敷の竹などを重機ではぎ取る工事を開始。玉石が姿を現すはずだったが、全く出てこなかった。市農林部の関係者は「河原に堆積(たいせき)した土砂が予想以上に多い」といい、「玉石が出てくるまで1メートル程度掘る必要がある」との指摘も。
今回の事業には、河川整備の専門家が加わっていないばかりか、河川敷のボーリング調査すら実施していない。木曽川上流河川事務所は「不本意な結果」だとして21日、市側と急きょ対策を協議する。市内部からも「関係部署の連携不足」との声が漏れる。
河川敷整備では延べ520人を一時雇用し、手作業で除草する緊急雇用対策の計画もあったが、延期に。工事は除草後、砂利や泥をならしただけで中断された。河川敷をさらに掘り下げるには予算が足りないという。
かわまちづくり懇談会メンバーで鵜匠代表の山下純司さんは「なんちゅうことをしてくれたんやとの思い」と憤り、「復元に向けて、人間と長良川の付き合い方を考える機会になれば」と話している。
長良川で水遊びする児童らを写した昭和初期の写真。奥に玉石の河原が広がる(岐阜市提供)
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翌22日の中日新聞岐阜県版記事
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「原風景」復元行き詰まり 長良川河川敷
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20100122/CK2010012202000020.html
雑草が生い茂る岐阜市の長良川河川敷を、玉石が並ぶ30年以上前の「原風景」に戻す市の事業が事前の調査不足などで行き詰まった問題で、市は21日、国土交通省の出先機関・木曽川上流河川事務所に事実関係を説明した。市側は「関係者と相談しながら、今後の対応を考えていきたい」と話している。
事業を行ったのは、1300年の歴史を持つ長良川鵜飼が開かれる河川敷約3万平方メートル。以前は真っ白な玉石が広がる河原だったが、上流の保水能力が低下するなどして土砂が流れ込み、雑草が生い茂る状態になっていた。
この日、同市忠節の河川事務所を訪れた市農林部職員は、手作業で草を抜き河原を玉石に戻す計画だったが、人力では難しく昨年12月中旬に重機を使ったと説明。土砂の堆積(たいせき)が多く玉石が現れなかったと報告した。今は砂利や泥をならしただけでとどまっている。
事務所側は「やむを得ない面もある」と理解を示しつつ「(原風景の復元は)一朝一夕では難しい。草抜きを継続することで、長い目で見て復元に貢献することを期待する」と話した。
復元の方針は、6月に開かれる「全国豊かな海づくり大会」を前に、事務所や市で構成する「かわまちづくり懇談会」で決めた。
計画では延べ520人を一時雇用する緊急雇用対策の人海戦術で除草する予定だったが、河川敷は催し物の舞台として踏みしめられて固い地面になっていた上に雑草の根も強く張っていたため、重機を使用した。
予想外に土砂が多かったというが、今回の事業には、河川整備の専門家は加わっておらず、河川敷のボーリング調査も実施していなかった。玉石が現れるまでには1メートル程度掘る必要があるとの指摘もあるが、6月の海づくり大会までにさらに掘り下げるか、別の方法を検討するかなどは決まっていない。
市農林部は「きれいになったと評価する市民もいるが、当初のイメージとは離れている。鵜匠ら関係者と相談しながら考えていきたい」と話している。 (竹田佳彦)
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上記記事PDFファイル版
記事中に何度か出てくる「かわまちづくり懇談会」は、正式名称は「長良川川原町・鵜飼屋地域のかわまちづくり懇談会」で事務局は木曽川上流河川事務所にある。(木曽川上流河川事務所トップページしたのバナー)
「長良川川原町・鵜飼屋地域のかわまちづくり懇談会」
しかし、この資料を見ても、「かわまちづくり懇談会」で出された「玉石転がる河原へ」という話と今回重機で除草したことのつながり具合が「よくわからない」。
「第2回懇談会(09.7.30)」分に、「資料3:砂礫河原の再生について」というのがある。この資料を見る限り「砂礫河原の再生」は、記事の場所(長良川 53.6km付近 右岸)ではなく、もう200mくらい下流の左岸をターゲットにしている。また「短期的対策」という部分でも「基礎調査」等の調査項目が載っており「いきなり重機を動かす」話にはなりそうもない。
他方、第3回(09.12.14)分の「資料1:第1、2回の懇談内容について」の最終ページに「長良川原風景の再生(岐阜市)」として航空写真に線を引いて、当該区域の「除草」が報告されている(明示されていないが、「除草する予定」ということのようだ)。
「かわまちづくり懇談会」と無縁ではないものの、今回の「事業」の主体は岐阜市だ、ということは明かなので、22日、岐阜市に電話してみた。
河川課、農林部(総務課)、農林部・畜産センター・・・と話の相手が変わっていってしまって、聞きたいことが十分に聞けない(意図的「たらい回し」というより、実際に幾つもの部署が関わっていながら、互いの連携が悪くて、全体について答えられるところがないらしい)。現時点では以下のような返事。
◆ 人海作戦で除草する-「緊急雇用対策」として-予算は495万円だが、執行されていない。
◆ 重機で除草したのは、商工観光部・鵜飼事務所がもつ鵜飼い用の浚渫予算から。凡そ50万円ほどをこれに充てたと思う。
「かわまちづくり懇談会」事務局であり、河川管理者としての立場もある木曽川上流河川事務所に「どう把握(認識)しているのか?」を問い合わせたが、予測通り「担当者はただ今不在」で、「詳しいことは分からない」。
続きはまた、ということで・・・・。
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