2018年末、マイクロソフトがEdgeのエンジンにChromeと同じChromiumを採用すると発表した。一方で5年以上前に登場したIE11のシェアは依然として高いままだ。マイクロソフトのWebブラウザー戦略を解説する。
Webアプリケーションが普及した今、Webブラウザーは企業システムの基盤の1つとなっている。そうした中、米マイクロソフト(Microsoft)のWebブラウザー「Internet Explorer(IE)11」は、企業のWebシステム開発に携わるITエンジニアを悩ます存在だ。HTML5やJavaScriptの最新の機能が利用できず、開発の効率を下げているからだ。
2013年10月に登場したIE11のシェアは、5年以上経った今も依然として高い。2018年12月時点での日本国内のPC向けWebブラウザーのシェアを見ると、IEは14.4%だ。米グーグル(Google)の「Chrome」に次いで2位となっている。マイクロソフトが2015年10月に、IEの後継として提供を開始したWebブラウザー「Edge」は6.3%と、IEの半分以下のシェアしかない。
IE11が高いシェアを維持する一方で、マイクロソフトはEdgeが登場した2015年からIEの開発を原則、止めている。その結果、Webシステムの開発に欠かせないHTML5やJavaScriptの新しい標準機能が、IE11では利用できないケースが多い。大規模だったり複雑だったりするWebアプリケーションの開発に必須のJavaScriptフレームワークも、IEを対象にしていないものが増えている。
4年以上前から「利用を止めて」と呼びかけている
こうした状況下、マイクロソフトも対応に苦慮している。「当社は以前からIEの利用を止めるように呼びかけており、引き続き働きかけていく」と日本マイクロソフトの春日井良隆 Microsoft 365ビジネス本部製品マーケティング部エグゼクティブプロダクトマネージャー兼文教担当部長は話す。
マイクロソフトがIEの利用を止めるように呼びかけているにもかかわらず、IEのシェアが未だに高い理由は大きく3つある。
1つはIEの独自性だ。IEは「VBScript」や「ActiveX」のように、マイクロソフトの独自の技術をサポートする方針で開発していた。
こうした技術を利用しているWebアプリケーションを、Edgeを含めたほかのWebブラウザーで利用するためには、「現在のWebの標準技術に基づいて、作り変えるしか方法はない」と春日井エグゼクティブプロダクトマネージャーは話す。マイクロソフトは2015年7月にWindows 10が登場し、Edgeが正式なWindowsのWebブラウザーとなったときから、IEからEdgeへの移行を呼びかけている。IEでしか動作しないアプリケーションを、別のWebブラウザーに移植するための時間はまだあるとの考えだ。
「IEで独自技術を採用した反省から、EdgeはWebの標準をサポートする方針を採っている」と春日井エグゼクティブプロダクトマネージャーは話す。IEとEdgeは全く別のWebブラウザーとして開発されており、IEが備えていたActiveXなどの機能はEdgeでは利用できない。
2つめはIEのサポート終了時期が明らかになっていないことだ。マイクロソフトは2019年1月時点で、IEのサポート終了時期を明言していない。「だがIEの開発は終了しており、サポートがいつか終了になることは明確になっている」と春日井エグゼクティブプロダクトマネージャーは強調する。