さあいよいよ自転車による瀬戸内海縦断を決行する日です。午前中に尾道市内を見学し、昼頃出発と計画していたのですが、嫌な予感がしたので、貸出所が開く9:00出発に変更。それまで散歩がてら尾道城まで往復、坂の街を実感しました。林芙美子の銅像を愛でた後、「LOS」という喫茶店でモーニング・サービスをいただきました。
この店は白木の壁に落書OK、いくつか紹介します。[]内は小生のコメント。『尾道はインドのベナレスに似ている』[?]『意外とうまかったこの店(この店を食べたんじゃないよ)』[わかっとるわ]『尾道でチャーハン食べるパリジェンヌ』[ロートレアモンの詩のようだ]『尾道のネコは足が強くて毛並みがよい そしてバイクにびびる』[バイクに立ち向かう猫がいるか!] そういえば先程の散歩の最中、ドンッという音がしたので振り向くと、猫がポリバケツに飛び降りて、直角方向にクイック・ターンをして坂道をかけおりていったところでした。成程、坂道が多いからなあ、猫の足腰も強くなるか。 そして自転車を借りて出発しました。まずは船を接岸しやすいように、階段状となっている雁木を見学。尾道大橋は歩道が狭く危険なので向島まではフェリーで渡ります。車の通行の多い「しまなみ海道」を避けて、サイクリングコースを設定してあるので快適に走れます。これなら楽勝。 そして因島に渡る因島大橋が見えてくると、ある衝撃的な事実にハタと気づきました。瀬戸内海は船の通航量が多い→橋桁が低いとぶつかる→よって橋桁が高い ハアハア喘ぎながら橋にたどりついて、一服。潔く撤退して、尾道の猫とのんびり戯れるか。いや簡単に諦めたらクセになる、決行。因島で可愛らしい潮流信号所と大浜埼灯台に寄った後は、ひたすらペダルをこぎました。上りの時は「来るんじゃなかった」と弱音を吐き、下りの時は「来て良かった」と口笛を吹きながら、因島→生口橋→生口島→多々羅大橋→大三島→大三島橋→伯方島→伯方・大島大橋→大島→来島海峡大橋→糸山サイクリング・ターミナルと走破しました。走行距離約80km、走行時間約7時間、総費用1500円。辛い時、苦しい時、悲しい時、きっと私はこう呟くでしょう。「俺は瀬戸内海を自転車で縦断した男だ」 それがどうしたと言われれば、身も蓋もありませんが… ターミナルで自転車を乗り捨て、バスで今治駅まで行き、そうだここは四国だと気づいて美味しいうどんを食し、しまなみ海道を走るバスで尾道に戻り、宿泊地岡山へ。結局、尾道散策はできませんでした。それにしても、この本四架橋は無駄な公共事業だと痛感しましたね。通行料が高いためでしょう、とにかく通行量が少ない。記念にガラガラの橋を撮影しておこうとカメラを構えたら、40秒ほど待つとすぐ撮れました。二つ掘ったトンネルのうち片方は使用していなかったり、「料金は橋の半額 シャトル・フェリー」という看板があったり。自転車も50円または100円の通行料を取られるのですが、賽銭箱みたいなボックスに投げ込むだけ、勿論係もいません。(あっ無論ちゃんと払いましたよ) 本日の二枚は、因島の大浜埼灯台と潮流信号所です。 #
by sabasaba13
| 2005-02-09 17:07
| 山陽
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前中は軍港・呉を歩くつもりです。さっそく朝八時頃観光案内所に行くと、ぬぅぅわんと10:00開店。置いてあるパンフレットには地図が載ってない。貸し自転車がないのはいいとして、これは許せぬ所業。「さえりゃーせん」と捨て台詞をはいて、大久野島に行き、午後は尾道を散策しようかとロッテリアでハンバーガーを食べながら考えているうちに、ゴルゴ13のように冷静になれました。位置的にいって、呉は旅程に入れにくい、もう二度と来ないかもしれない… というわけで、思い直しました。コンビニエンス・ストアで呉市地図を購入するという裏技を使い、散歩開始。幸い快晴で気持ちのよい散策ができました。港を一望できる「歴史の見える丘」に行き、正岡子規と反戦歌人渡辺直己の歌碑を拝見。眼下には石川島播磨重工業の巨大なドックと工場群が、有無を言わさぬ迫力で広がっています。戦争と企業の結びつきを体で実感できました。
海上自衛隊の基地と煉瓦倉庫群が見える「アレイからすこじま」に行くと、潜水艦が曳航されてくるところでした。そして多数の軍艦と、在日米軍弾薬廠。コーネル大学のマーク・セルデン教授はテロを以下のように定義しています。「一九四九年のジュネーヴ協定をもとに、私はテロリズムを一般市民および彼ら/彼女らを支える環境に対して暴力ないし威嚇を組織的に使用すること、と定義する。」そうすると米軍が行ってきた/行っている行為はテロリズムです。詳細は「アメリカの国家犯罪全書」[ウィリアム・ブルム著 作品社]を参照してください。(ちなみにアメリカ政府は、テロリズムの正式な定義を示していないとのこと。そりゃできないよね。)すると「テロリストを支援する者もテロリスト」というブッシュ大統領の論理に従えば… 慄然とします。なお旧日本軍の魚雷用クレーンという珍しい物件もありました。 そしてバスに乗り、呉と倉橋島に挟まれた音戸の瀬戸へ。音戸の瀬戸は、平清盛が沈む夕日を扇で招き返して一日で開削したという伝説があります。さっそく日本で一番短い定期航路「音戸の渡し船」に乗船し向こう岸へ。桟橋に立っていると対岸から迎えに来てくれるという心温まるシステムです。料金は70円。清盛塚を見て、また渡し船で戻り、高台にある公園へ。瀬戸と大橋と渡し船と多島海を一望できる、素晴らしいビュー・ポイントです。 バスで呉市内に戻り、入船山公園にある旧呉鎮守府長官官舎を見物。金唐紙を使用した珍しい洋館です。戦艦陸奥のスクリューや大時計などもありました。 さて歩いて呉駅に行き、呉線で忠海(ただのうみ)まで移動。ここから今回のメイン・ イベント大久野島までフェリーで渡ります。15分ほどで到着すると、無料の送迎バスが国民休暇村まで連れて行ってくれます。 周囲約4kmの小さな島ですが、日本陸軍の毒ガス工場として、東京第二陸軍造兵廠忠海製造所が昭和4年に設置され、 昭和20年終戦後米軍により破壊されました。この工場は、各種の毒ガスや信号筒風船爆弾が製造されましたが、 イペリットの生産に重点がおかれていたとのことです。まずフロントで自転車を借り、レストランで冷凍のミックス・ ピザを食べながら案内を呼んでいると、うさぎの餌を売っていると書いてあります。実は実験用のうさぎが野生化したのですね。 さっそく購入すると、皮製の分厚い手袋も貸してくれました。オーバーだなあと思いつつ受け取り、自転車にまたがると、 すぐにうさぎたちが十数羽ワサワサと集まってきました。掌に餌を乗せると、 爪を立ててかぶりついてきます。手袋は必需品だった。 それにしても嬉しい。実は私、うさぎが大好きなもので… 至福の時間を堪能いたしました。 雲ひとつない快晴、整備されたサイクリング道路、自動車は入島禁止、そして瀬戸内海と島々の見事な眺望。頭の中が真っ白になるくらい気持ちのよい走りでした。途中で頂上にある展望台への登り道がありました。きつそうなので躊躇しましたが、「とりあえず一番高い場所へは登る」という山ノ神の箴言を思い出し、自転車を置いて徒歩で十数分ゼイゼイ言いながら登りました。するとそこは完全に360度のパノラマ、もう絶句。海と空の青、遠近によるグラデーションを楽しめるたくさんの島影、その間を縫うように行き交う船。やはり彼女は正しかった、なぜなら神だから。Q.E.D. そして圧巻は、島のあちこちに廃墟と化して残る貯蔵庫、発電所、研究所、砲台といった毒ガス関連の施設です。この島で何が行われていたかを物語る無言の証人ですね。その圧倒的な存在感と虚無感には胸を打たれます。人間の愚劣さを巨大な造形にしたモュメント。崩壊寸前で危険なのでしょう、すべて環境省による立入禁止の柵と看板があるのですが、実は簡単に入れます。 柵の両サイドが開いていたり、一跨ぎできるタイガーロープが張ってあったり。勿論中に入りました。 これはきっと環境省史跡保存課課長岩田喜三郎氏の考案で、「入ってもいいけど責任は自分で取れよ、 こちらはダメと言ったんだから責任はないぜ」 ということなんでしょう。気に入った。 そして毒ガス資料館でこの島の歴史について学んできました。というわけで、 大久野島はお勧めですね。 戦争史跡と廃墟とサイクリングと海と冷凍ピザがお好きな方には、一押しです。今度は休暇村に泊まって、 夕陽を眺めたいな。 フェリーで忠海港に戻り、さあどうしよう。宿泊地尾道に直行するか、少し西へ戻って竹原を見てくるか。大久野島のおかげでアドレナリンがビシビシ分泌しているのでしょう、勢いで竹原に寄ってきました。竹原は塩田で栄えた町で、古い町並みが残っているとのこと。保存地区に着くと、午後5時をまわっているのでもう薄暮です。ご当地出身の頼山陽の銅像がお出迎え。無理せず自然体に古い家並みを残してあるのがいいですね。徘徊する観光客はたぶん私一人。じょじょに暮れなずむ街に佇んでいると、濃密な閑けさ・寂しさに包まれます。耳を澄ますと、猫の鳴き声、子供の声、自転車のブレーキの音、一家団欒の声、水の流れる音、腹の虫の鳴く声が微かに聞こえてきます。消防団番所の赤いランプが怪しく輝く。すると近くの駄菓子屋から♪つつがなしや、ともがき… ♪というメロディ。次に♪菜の花畠に入日薄れ…♪が流れたら、もう涙腺が決壊しそうなのであわてて立ち去りました。夕暮れ時に観光地を訪れるというのは、けっこう賢明な選択肢ですね、勉強になりました。 駅前の看板に座布団を一枚あげ、そしていざ尾道へ。夕食は「みっちゃん」で尾道風お好み焼きを食しました。客の眼前で味の素をふりかけるのはやめたほうがいいですよ、女将。 本日の一枚は大久野島旧発電所です。 #
by sabasaba13
| 2005-02-08 19:43
| 山陽
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薄曇ですが、本日はまず山口へ。日明貿易により富を得た大内氏により築かれた城下町で、応仁の乱以後京都の文化人・知識人が避難し殷賑を極めた場所です。駅で自転車を借り、県立美術館、サビエル記念聖堂を見物。彼が山口で布教を始めてから400年を記念して作られたものです。
旧県庁舎の外観を見てから、瑠璃光寺へ。五重塔と木々が池の面に映り、それを借景となる背後の山々が優しく抱く。いいですね。若山牧水の歌碑と雪舟の銅像がありました。雪舟がこの山裾に「雲谷庵」というアトリエを構えていたそうです。このあたりは香山公園として整備されていて、桂小五郎と西郷隆盛らが討幕の密議を行ったという枕流亭が移築されていました。 さらに二十分ほどペダルをこいで常栄寺へ。雪舟が作庭したと伝えられる庭園が残っています。テープによる説明のくどさには辟易しましたが、この庭園は素晴らしい。石組だけで自然を表現するいわゆる枯山水なのですが、様々な形の石と幾何学的な植込みを、芝生の上でバランスよく配置した構成力は卓越したもの。雪舟の手によるものかどうかはさておいて、しばらく佇んでしまいました。「庭は地球の彫刻である」というイサム・ノグチの言葉を思い出します。眼福眼福。 そして情緒豊かな一の坂川沿いの遊歩道を快走して湯田温泉へと向かいま、キキーッ 「→亀山湯」という看板を発見。よし寄り道じゃ。直線主体のアール・デコ+インターナショナル様式に瓦屋根がのっかっているのも見物ですが、現役の煉瓦作りの四角い煙突がすごい。韮山の反射炉かと思いました。拳で小さくガッツポーズをつくって撮影。 さあ急がな、キキーッ 塀の上で猫が見つめています。山ノ神のコンピュータのスクリーンセーバーに、過去撮影した猫の写真をスライドショーとして設定したらいたくご満悦のようだったので、とりあえず奉納品として撮っておこう。パシャ ちょっと無愛想・不細工な白猫だったけど。15分ほどで湯田温泉に到着、お目当てはご当地出身の中原中也記念館です。学生の頃彼の詩が好きで「サーカス」を暗誦したなあ、なんてあまづっぱい思い出にひたりながら見学。この詩に出てくるサーカスが興行された場所を金沢で見た覚えがあるのですが、年譜を見ると、中也の父は陸軍軍医で彼が5~7歳の頃金沢に赴任していたとのこと、納得。彼の詩の特徴のひとつはオノマトペ(擬声語)なのですが(ex.ゆやーんゆよーんゆやゆよん)、小学校6年の時に書かれた作文を読んでこれも納得しました。「たゞ白雲が綿のやうにプアプアたゞよふて居た」 栴檀は二葉より香し、ですね。 山口駅で自転車を返却し、再び新山口へ。徒歩で山頭火の旧居を復元した「其中庵」と、現役で実働している転車台を見物して、山陽本線で岩国へ移動です。 防府・柳井に後ろ髪を引かれつつ約2時間で到着、すると小糠雨です。感謝の舞が気に入らなかったのか、猫のせいか、山ノ神の神罰かな。バスに乗ってまずは旧岩国学校(現教育資料館)へ直行。典型的なインク壺型の擬洋風学校建築です。唐突にとってつけたような鐘楼部分がキュート。そして歩いて十分、錦帯橋へ。初めて拝見するのですが、プロポーションといい、ロケーションといい見事な橋ですね。下から見上げると橋裏の構造がまた凄い。今年架け替えられたばかりですが、これからは技術伝承のために五十年ごとに架け替えるそうです。竹筋コンクリートという珍しい構造の岩国徴古館(昭和20年築)を見物してタクシーで駅へ。山陽本線で広島乗り換え、今夜の宿泊地、呉に到着しました。夕食はもち、カキフライ定食。口福口福。 本日の二枚は、瑠璃光寺と錦帯橋です。 #
by sabasaba13
| 2005-02-07 16:52
| 山陽
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こんにちは。旅行記を中心に、書評やら雑感を書き綴ってみます。まずは昨年の秋に徘徊した山陽路の旅行記です。
広島県に「毒ガス島(大久野島)」があります。かつて日本軍が極秘に毒ガスを製造していた島で、それに関する資料館や廃墟となった施設があると知り、かねてから行ってみたいと思っていました。うしっ、決行。ここを中心に山口から岡山までの四泊五日の彷徨を計画、秋吉台やら尾道やら閑谷学校やら、未踏の地を組み込みながらニヤニヤしていました。するとあるサイトで、瀬戸内海(尾道⇔今治)を自転車で縦断するサイクリング・コースの存在を発見。売られた喧嘩は買いましょう。また立花隆の本を読み、香月泰男という画家にも興味を持ったので、故郷山口県三隅町にある美術館にも行きたいな。「いいとこにはずっといて、あきれたらすぐ立ち去る」「天使の如く大胆に、悪魔の如く細心に」という原則を胸に、いざ山陽路へ。 朝の天気予報では、山口地方は降水確率90%の断固とした傘マーク。腐っても気象庁、まさか外しはすまい。機中で小生の灰色の脳細胞は目まぐるしく動きます。「秋吉台・香月美術館はカット、明日行く予定の山口に防府を組み合わせて今日はしのごう…」 しかし諦めきれず、「二度と煙草は吸いませんから、陽光をもたらして下さい」と山ノ神に願をかけました。すると山口宇部空港に着陸する頃になると、黒雲は消え、陽がさしているではありませぬか。嗚呼、奇跡だ。さっそく空港ロビーで人目を憚らず、約束どおり感謝の舞を山ノ神に奉納しました。♪ラリホーラリホーラリルレロ、コイルはでぶっちょぼよよんのよん♪ さっそくバスで新山口(小郡)に行きました。ここ小郡は種田山頭火が最も充実した日々を過ごした所で、彼の銅像が駅前で出迎えてくれました。「まったく雲がない笠をぬぎ」「空へ若竹のなやみなし」 バスを乗り換えて秋吉台へ。砺波平野の散村、木曽三川の輪中とならぶ社会科見学三大聖地の一つです。内部がだだっぴろい鍾乳洞の秋芳洞を通り抜け、坂道を少し登ると、秋吉台を一望できる展望台に到着します。うずくまっている羊のような石灰岩が、広大な山腹に点在する雄大な眺望。でもすぐに見飽きて昼食。 不味いうどんを食いながら、午後の日程を沈思黙考。タクシーを使えば、香月美術館に加えて、角島灯台+土井ヶ浜遺跡を見られそうですが、バス・電車利用だとおそらくどちらかは無理。うーん、よろしい、泣いて馬謖を斬る、タクシーで行きましょう。さっそく車をつかまえて、約20分で三隅町立香月泰男美術館に到着しました。香月泰男(1911~74)、山口県三隅町出身。東京美術学校卒業。満州に応召され、敗戦時にシベリアへ抑留される。戦後、その体験をテーマに<シベリア・シリーズ>を発表し、炭と方解末を使った材質感と、深い人間性の洞察をふまえた制作で著名。と、無味乾燥な説明で恐縮ですが、実は先日出版された立花隆の『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』を読んで、いたくこの画家に興味を抱きました。戦争・収容所体験や死んだ兵士への鎮魂を、自ら解説文を書き添えた、具象と抽象の間でギリギリのバランスをとった重厚な画面で表現し尽くそうとする姿勢には感銘を受けます。<シベリア・シリーズ>全57点は山口県立美術館が所蔵しており(スペースの関係で一括展示は不可能)、この美術館には小品や家族に送った絵葉書、彼が製作したおもちゃや遊具、そしてアトリエが復元されています。彼が肌身離さず持ち歩いたボロボロの絵具箱には胸を打たれました。外へ出ると、彼が<私の>地球と呼んだ三隅の光景が広がります。 ここから日本海に向かい南下すること約一時間、コバルトブルーの美しい海にかかる大橋を渡って角島に到着。お目当ては、1873(明治6)年にH・ブラントンによって設計起工された日本で一番美しいと言われる角島灯台です。均整のとれたプロポーション、えもいわれぬ色合いの御影石による造形、放物線状のアーチが連続する装飾。貴婦人のようなその姿に見惚れました。手が回りきれないけれど、抱きしめたくなるような灯台です。105段の螺旋階段を上り頂上に出ると、360度のパノラマ、眼下には美しい日本海。呆然・恍惚としてしばらく眺め入ってしまいました。ふう。 そして次なる目的地、土井ヶ浜遺跡へは車で約20分。保存状態の良い弥生人骨300体以上が、装身具や土器と一緒に出土した遺跡として、業界では著名です。まず人類学ミュージアムを見物。展示は陳腐でしたが、展望室の表示が傑作でした。西海観光バスに乗ってやってきた無法松みたいな九州人に「見えんじゃなかとか!」と叱責され、新任学芸員の山尾恵さんが涙を浮かべながら書き込んでいるシーンを想像してしまいました。ドラマだなあ。ヨンさま主演で「海がちょっとだけ見える展望室」という映画を作ってはいかが。本当にちょっとだけしか海が見えませんでした。外に出ると、コーティングしてレプリカの人骨をちりばめ、ドームで覆った遺跡を見学できます。これはいいアイデアですね。体中に矢尻がささり、首を切り取られた「戦士の死体」は圧巻でした。 そして山陰本線特牛(こっとい)駅まで送ってもらい、乗車。第六感に襲われて途中の滝部駅で下車して、旧滝部小学校へ。ペディメント(三角破風)と三連アーチをファサード(前面部)に構えた凄まじい物件です。現在は郷土資料館として利用されているのですが、二階の講堂に上がると、やっぱし御真影を収納する奉安庫があった! 係の方の許可を得て撮影し、この辺にこうした物件は他にないかと尋ねたところ、あるとのこと。神に愛されし者よ。さっそく「歩いて何分ぐらいですか」と能天気に訊いた瞬間に、ストップ・モーションのように空気が凍りつきました。礼を言ってそそくさと立ち去りましたが、まあいいや。下関まで行き、山陽本線に乗り換えて新山口に帰着。 本日の一枚は角島灯台です。 #
by sabasaba13
| 2005-02-06 08:43
| 山陽
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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