すべての道はローマに通ずではないけれど,とどのつまりすべての知識の蓄積はビジネスに活かせると思える今日このごろである.
研修として色々なフレームワークなどを詰め込まれているための全能感だろう.
ただ自分なりの工夫点もあって,システム開発系を主とした工程管理の話であれば,土木の計画理論,プロジェクト管理で習ったクリティカルパスなどの知識を外挿し,有機的な知識の蓄積に努めている.
今回はリスクにおいて記された下記の書籍を中心に扱うつもりだが,リスク管理もビジネス的に重要な観点なので,本書の内容や私自身の感想だけでなく,そうした累積された知識も表出されるだろう点をご留意いただきたい.
リスクといって,現在まず思いつくのはコロナだ.
自身に感染した際の症状の重さや病院の受け入れ可否のほか,他人にうつさないか,会社でどう扱われるか心配はつきない.
なぜ,これが第一に浮かんだのだろうか.
これはビジネス的に考えれば,オーダーオブマグニチュード的なものと考えられる.
感染力が強く確率が高い割に,その影響も最悪死に繋がる大きいものであるからだ.
確率だけなら,猫に顔を引っかかれたり,道端で転ぶ方が高いだろう.
影響度だけなら,自然災害や戦争の方が高いだろう.
しかし複合的に大きいために筆頭に挙がる.
本書ではコロナ前の書籍であり,アメリカで書かれたため,911テロがまず挙げられる背景を例示している.
ただここには心理的なギャップが存在する.
同等に確率・影響が高いものとして,気候変動を挙げて比較をする.
下記の動画はそういった点で非常に視覚的効果が高い.
このテーマでアメリカで書かれているのは,筆者の狙いだろうが皮肉的だ.
さて,その心理的ギャップとは,色々あるが経験の有無や国際的利害関係がある.
詳しくは本書に譲るが,人間の心理的特性としてか,愚者は経験に学ぶので,経験の作用が強く表れる.
911によってアメリカはテロに対し過剰に恐怖心を抱き,言わば影響度を過剰推計した点が挙げられる.
これは他山の石だ.
日本でも震災後の復興計画において,その適切性は大いに議論になるだろうが,超巨大な防潮堤を計画し,原発も完全に停止した.
原発問題は現在も尾を引いている.
911も日本のエネルギー問題も国家的予算が絡んでいるため,定量的に適切な施策が取られることが望ましい.
本書ではブッシュ政権時におけるテロの恐怖心への扇動と軍事派遣を痛烈に批判している.
あるいは世代間格差的要素などにも注目している.
テロが自分ごとなのに対し,環境問題は後世の他人事で場合によっては一切関係ない.
そのため動機づけが弱くなる.
この点は冷静な分析的視点ではその通りで,SDGsなど持続可能性を謳う世の中になっても難しい問題だろう.
これも日本の年金問題などに近いようにも見える.
さらにSARSに関する言及もある.
コロナと関連させながら,当時の反省点などを振り返って読むのも面白いだろう.
緊急事態宣言や蔓延防止措置は感染と経済のジレンマに立たされ,社会的批判も高まっている.
背景には動学的不整合が多分に含まれることと推測されるが,一年前のコロナが未知の状態からはかなり改善した.
そのため論理的に正しく休業要請や補助金支給が行われることを望む.
最後にリスクに関する経験として,私の学部での卒業研究が挙げられる.
落橋に関する指標推定を行い,確率はごくわずかながら影響が大きい特徴がある.
橋はこうした指標を用いて保守管理が行われていることを,この経験を通して学んだ.
コロナなど未知のリスクに関しては,こうした既存のフレームワークを部分的にでもとりあえず当て嵌めてみることもできるのではないだろうか.