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高専から駅弁大学から東工大を経て大企業へ 浅く広い趣味とかキャリアの日記を

美術館巡り記

pytho.hatenablog.com

これに引き続いて5/23は美術館巡り
ぐるっとパスの面目躍如

この日は合計して4つの美術館へ

三鷹天命反転中!!――荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ

Reversible Destiny NOW: Arakawa and Madeline Gins’ Exercises for Not Dying
会期:2025年3月22日(土)~5月18日(日)
会場:三鷹市美術ギャラリー

三鷹も同じく会期末

この企画展はポスターの奇抜さに目を引かれたし、ほぼ一目惚れだった
建築的な要素も個人的な興味をよりそそられた

当日は雨だったこともあり、現地の建物はまだ実際に見れていない
この建物を軸としつつ、作者の個展を織り交ぜたような内容

冒頭は専ら個展であり、作品は直接的に問いかけてくるようなものが多い
木箱の中にいびつなセメントを詰めて、その開けて見る動作を行わせたり
肖像画に人形すら書かずに部位の単語を書くのみで、見る人への想像力をはたらきかえたり
中頃の作品もミクストアートでありながら、手紙のような文字を直接記載していたり

自身の哲学に沿って、メッセージをときには単語のように直接的に伝えることを第一としていたようだ

そこから建築系の話へ移る
岐阜の公園も存在は知っているので、いずれ行ってみたいところだ

養老天命反転地|施設案内|養老公園(岐阜県)|アートと歴史にふれる自然の地形を生かした観光スポット

核心となる部分は三鷹の住宅にしても同様のようだ
同一の要素として現代の工業的な方法が排され、曲線が多様され、もはや反バリアフリー的である
しかしそれこそがむしろ訪れる人に平等な機会を与えたりすることで、むしろ真のバリアフリーであるとの主張は一定理解できる
これはバリアとか障害とかで綺麗事のように語られているが、実際は功利主義的に全体最適化された画一的で暗黙の普通とそこから漏れたものというご都合主義に過ぎない点を指摘したものと個人的には理解する
そこまで飛躍するかわからないが、延長として自然と工業という対立軸にも持っていけるし、自然からスピリチュアルへも繋げうるだろう

また設計云々のほかにも実際の施工やプロジェクトとして関わった方々のインタビュー等も展示されている
後半はそういったパネル展示的で、ちょっと美術館っぽさは弱い
とはいえ、普通に芸術作品だけを展示されたものも飽きたりするので、これはこれでいい

春のたましんコレクション展 対話する美のかたち

会期:2025年4月19日(土)~7月6日(日)
会場:たましん美術館

せっかく三鷹に来たので中央線沿線を攻めることにした
ここは立川が最寄り
立川に降りたのはなんだかんだ初めてだったように思う

この美術館は臨時でちょうど無料開放されていて、ぐるっとパスは関係なかった
さらに目録も無料で配布されていた
中は硬派な展示だった
中世の東アジアの陶磁器や現代の国内の油彩が中心
こじんまりとしたサイズで手軽に芸術を感じるにはちょうどいい施設

イメージの魔術師 エロール・ル・カイン

会期:2025年4月5日(土)~6月1日(日)
会場:八王子市夢美術館

これが思いの外よかった
完全についでで、エロールさんは全く存じ上げていなかった
しかし結局、デザインに惚れ込んで、本を一冊買ってしまった
売店に陳列された洋書はECでも取り扱いがなく
絵本なので言語はさほど問題にならない
仮に子どもができたなら、もっと買い揃えたっていい、とにかくそういう理由付けがあれば全然買える

作者は文化的に多様だったらしい

1941年にシンガポールで生まれ、アジアで幼少期を過ごしたエロール・ル・カインは、15歳で単身イギリスに渡り、アニメーションを学びます。

エロール・ル・カイン展 | 展覧会 | 八王子市夢美術館
終了後は多分下記にリンクとなるはず
八王子市夢美術館

個人的に好きだった作品順に感想をまとめておく
「魔術師キャッツ」は劇のキャッツの延長らしい
踊りだしそうで愉快げな雰囲気がいい
ただ可愛いだけのネコというわけでもないのがポイント高い

「いばらひめ」は洋書を買った作品
この作品に限る話ではないが、文字部分のフレームのデザインもいちいちかわいい
ファンタジー感はことさら好相性な印象もあり

「とぶ船」はロシア風
漠然とサンクトペテルブルクのような雰囲気がある
というか東ヨーロッパ的な厳粛さと豪奢さとかであろうか

「キューピッドとプシケー」は等身が高くモノクロの表現がかっこいい
雰囲気的に「宝石の国」に近い印象もある

このほか東アジアを題材にした作品もあれば、西洋風な牧歌的で典型的な絵本の世界のものと表現の幅も広かった

グラフィックデザインとモダニズムの再発見

戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見

先週末5/23は会期末だったこの展示へ庭園美術館
1年ぶり3回目くらいの印象
天気はここのところ毎週末だがあいにくの雨

ぐるっとパスを利用して企画展を観覧できるとのこと

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先日のリビングモダニティとも類似しているような印象の部分も
ドイツとしてバウハウスはさすがに筋違いなもののドクメンタ的な息遣いも感じる

ここは香水室の隣で扉の柄と展示のポスターとの対照も面白い
ピクトグラムは最近では東京五輪2020が思い出されるが、原点といえば1964の方である
その後のベルリン五輪の折に再利用され、欧州の高いデザインセンスで洗練されて磨かれている
1964は専ら伝達手段としての実用性が重視されいたものと思われるが、こちらは芸術としての意識付けが重い
単純な色彩は哲学を踏襲した部分とも言えるか

代わって反対側の壁にはベルリン五輪のデザイン
ピクトグラムのほか、こちらは色彩豊かである
曰くナチス配下で厳粛な色使いが多様されたため、一転してパステルカラーを用いることで変化をアピールしたそうな
今日で見てもセンスを感じさせる色使いであり、またドイツらしく感じられないところが裏切られる

一方で構図やバランス感の観点ではドイツ的な実直さがあるような印象も受ける

このほか、入口にはルフトハンザ航空のロゴやポスター

食堂にはキールウィークのポスターなど
こちらは全般的に抽象的だが色味から海を形からヨットを感じさせる要素から程よくぼやかされた具体が表現されている印象
歴史も面白く、当初は学生コンペだったものの、次第にデザインコンペとしての格式が高まり、プロ向けとなっていたらしい

喫煙室にはそれこそドクメンタのポスター
Dと数字を合わせた機能性の高いドイツらしい実直さのあるデザイン
タイポグラフィ

2階にはBlue NoteやJazzイベントのポスターも多数
全体的に抽象的なデザイン多数
個人的にはベルリン自由芸術劇場がよかった
一見、絵のように見えるが、よく見ると直線の具合が微妙に歪んでいる
なるほど、一度紙に塗った柄を立体的に展開した上で写真撮影しているのだと
よく見ると手が込んでいて非常に味わい深い

本館が上記で周り終わって11時半くらいで、朝食も特段とっていなかったので、昼食を館内でとることにした
個人的にこの美術館のカフェはTierが高い
なにより景色がいいし、それでありながら立地が都心
ただサンドイッチセットで1700円くらいした記憶、ちょい高い


新館はより近代で商業に近いものの割合が高い
全体的な印象として、既存の形というフレームの中に新たな要素を融合させながら埋め込む手法が巧い
それでいて具体的すぎず抽象的なので、クドさがない

現代の日本のWeb広告や該当ポスターにこうしたデザイン性の高いものを見る機会はないのが残念だ
もちろん商業広告なのでわかりやすさは重視されるべきであるが、デザイナーというプロの想像力や受け手へ訴えかける広告主の感情のようなものがどんどんと希薄化しているように思えてならない

アートと建築の融合:住まいの実験

リビングモダニティ展







ぐるっとパス

展覧会名 美術館名 会期 ぐるっとパス
西洋絵画、どこから見るか?─ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館 国立西洋美術館 2025年03月11日~2025年06月08日 NA
三鷹天命反転中!!─荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ 三鷹市美術ギャラリー 2025年03月22日~2025年05月18日 一般料金:1,000円がパスだけで入場できます。
リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s 国立新美術館 2025年03月19日~2025年06月30日 NA
ミロ展 東京都美術館 2025年03月01日~2025年07月06日 NA
つくるよろこび 生きるためのDIY 東京都美術館 2025年07月24日~2025年10月08日 入場
戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見 東京都庭園美術館 2025年03月08日~05月18日 一般料金:1,400円がパスだけで入場できます。
LOVEファッション―私を着がえるとき 東京オペラシティ アートギャラリー 2025年04月16日~06月22日 一般料金:1,600円がパスだけで入場できます。
マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート 森美術館 2025年02月13日~2025年06月08日 ぐるっとパスご利用の場合、当日窓口で200円引ですが、パスを利用せずにオンラインで事前購入した場合と金額が同じになります。
藤田嗣治 7つの情熱 SOMPO美術館 2025年04月12日~2025年06月22日 NA
企画展「メキシコへのまなざし」 埼玉県立近代美術館 2025年02月01日~2025年05月11日 一般料金:900円がパスだけで入場できます。

2025年度開講授業 演習:アートプロジェクト したまちフィールドワーク | CCS GEIDAI キュレーション教育研究センター

旅の記録:瀬戸内国際芸術祭の素晴らしさ

瀬戸内国際芸術祭、いわゆる瀬戸内トリエンナーレの感想メイン
4/18の京都・大阪に続き、4/19の開幕初期にまずは豊島を攻略
直島と小豆島は別シーズンの予定

前段:移動

前泊は適当に神戸の安宿で済ませる
大阪は万博で高い印象もあったので
結局、神戸で途中下車しつつ、京都から岡山まで全線在来線で乗り通した
安上がりでいいね

ラ・マル・ド・ボァ

当然、朝イチで島に乗り込んでもよかったのだが、せっかくなので他の要素でも観光を楽しみながら旅行したいと思い、本列車に乗車
やや遅めの列車出発に昨夜からの工程を合わせてコストも効率化した格好

路線は短めだが単線なので待ち合わせの停車が多い
ローカルチックで既に気分は(JR)四国

社内は名前の通り木の暖かさのある空間でキレイ
上段には網棚ではなく本棚があり、関連する地域の芸術系の書籍があり、やや図書館チック

それでいうと走る図書館がコンセプトの観光列車がどこかにあってもいいと思うなあ
気動車かハイブリット車にすれば、アウトリーチ的な文化活動もできるわけで
似たような船のコンセプトが大阪の安藤忠雄展の中にあった

駅ビルで買った名物の稲荷を持ち込みつつ
他に桃ジュースとレモン海苔菓子も車内販売で購入

宇野線に入ると一環としての駅舎のリノベーションも行われていて既に楽しみ

宇野港

宇野駅で事前購入したオールシーズンパスを引き換え
無難に紙にしておいた
ただ買っておきながら仕組みが途中まで分かっていなかった

ひとまず船まで小一時間あるので、その間に近所の作品を徒歩で散策
意外とそれらをまとめた地図がないのが微妙だった
結果、見落としがあったのはやや残念になってしまった
みな、どうしているのだろう

この作品はプラスチックを主として鮮やかなゴミを再構成したわかりやすい感じのもの
意図は難しいが手前のものは口から滑り台として中に入ることもできる
ゴミでありつつも一点物で構成されているので、特に目など裏表で表情が異なるのも面白い
また一定期間が経過した野ざらし、海風ざらしの作品でありながら、ことのほか色鮮やかで劣化があまり見られないのがギャップがあった

そういえば系統としては最近やや炎上したロンドンのプラスチックごみのクジラとも似ているか
ただこっちのほうが政治性が薄く美しい


このほか立て看板的な簡易的な作品や船のスクリューに鉄材を結合した作品も見学
ここは港という立地もあって、振り返ってみると海性が強かった印象

豊島

豊島横尾館

館内は撮影禁止だったので野外のみ
全般的に前衛的というかアバンギャルドというか

まず窓に赤いガラスを使っているので、館内は独特の光空間になっている
当然、絵を見るにも普段とは違う印象が避けられない

中庭は鯉が泳ぎリッチだが、そこもこれみよがしに派手に装飾されている
この池は母屋の床にも侵食していて、母屋の床はガラスになっているので、鯉も家に出入りしてくる
壁面はスモークガラスになっており、2階部分や屋根にまで広がる
結果として母屋は非常に開放感のある空間になっている

このほか、既存の油彩画にLEDをぶち込んで、光と色の三原色を意識させるような作品も

母屋の中は入って玄関正面に小窓があり、その奥に廊下の壁面として作品があり、構造的に不思議な空間になっている

建物としては特徴的な塔もあり、中は壁面に小さな橋の版画がびっしり貼られ、上下はそれぞれ鏡面で縦方向が無限に広がる錯覚を覚えさせる構造
やや暗めな釣り照明も一役買っていて、あれは一度入ってみてもらわないことにはどうにも伝えにくい

全般的に派手で王道的な現代芸術でもあるので、好みは分かれるとも思う

ちなみにどうやらパスポートを使えば、そこで料金が代替されたようなのだが、ここだけ普通に料金を払ってしまって600円損した。。。

針工場

ここの作者は組み合わせの魔術師のようなのだとか

そしてここは名前の通り、針の工場の跡地にちょうどいい大きさの舟形を搬入してきて収めた
良くも悪くもそれだけの空間・作品

針の工場は島という限られた環境で産業を興した貴重な例だったのだとか
舟形は宇和島からわざわざ搬入し、豊島の移動では小さなお祭りのような様子だったとか

工場の手前は木造にペンキ塗りなのがノスタルジックでいい
木の舟形との材料の相性もいい
一方、工場自体は鉄骨
これもサビ具合、寂れ具合がノスタルジック
ほとんど骨組みで周囲の自然が建物内から感じられるのは世紀末的な雰囲気もある

海岸線

解説等がなくコンセプトとかがよくわからないまま見ていたが
島々を除く砂浜という借景、空間自体が贅沢だ

ちなみにここは到着した北西の港と真逆の真南の位置
峠を電動自転車で超えてそこそこに疲れた
25度くらいで4月にしては暑く峠を越えたのでなおさらだが、海風の涼しい空気も心地よかった

塩田千春@空き家

直近でも見ていたけど
空き家をベースにしていると、また雰囲気が異なる

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島キッチン周辺

島の誕生会の開催日
せっかくなのでその日に旅程をあわせた
ちくわ笛奏者の人がゲストでいらしていた
おそらくトリエンナーレもあって活況を呈していて外国人も多かった
壇上にあがったアジア人の方とビートルズのセッションをしていて、ローカルなのにグローバル

蔵?

かつての蔵のような倉庫のようなを活用した作品
暗室にして抽象的な表現が投影されている
天井を剥いで立体的な視覚効果を高めているような
そもそも古い建物で天井も低いのだが

劇場?

もう少し早く来れば劇を見れたらしい
このあたりはスケジュールミスか
とはいえキャパが小さそうだが
こちらは典型的でもう少し現代の倉庫が回収されている
内装も劇の内容にあわせてか可愛らしく装飾されている
椅子や骨組みの部材が不揃いで臨機応変に構成されているのが現代の都心の物質主義に抵抗していると見るのは無理があるか

オーストラリアと自然属性

オーストラリア出身のアーティストの作品とのこと
先住民族だとか
それとアニメとかによくあるような魔術の元素をベースとした内容はコンセプトとして面白い
原住民だから魔法と親和性があると捉えるのも安直だし偏見的でもあるが
火のセクションは下記の灰がテーマ
これを用意するにあたり本を燃やしたのだとか
容積はかなり小さくなると思われるので、結構な本を燃やしたのではと感じさせる
風のセクションも本のページを切り取って、葉のようにして吊るして窓からの風に漂わせていた

豊島美術館周辺

ルーズな日程組だったので予約できなかった
あえなく館外から建物の雰囲気を味わうのみ
この美術館だけのために島に再訪というのもなかなかハードルがあり惜しい機会だった

心臓の音アーカイブ

砂浜、海岸の近くにある小さな建物
館内は撮影禁止
とはいえ外国人の数名は入口でその旨の案内があったにも関わらず撮影しておりもはやモラルハザードであった
コンセプトはその名の通りで心音
心音の音波に合わせて電流が調整されて電球が点滅する
暗く細長い空間がメイン
そこでは心音も反響する

加えてアーカイブとして録音室と鑑賞室のようなものが建物として設けられている

心音は昨今YouTubeで高性能マイクで録音したものも聴ける
個人的にはフェチだ
鑑賞室でも聞けたがマイク品質が低くモノラルなのが個人的には残念というか技術的・時代的な差分を感じた

ただコンセプトは理解できることで、プライベートで生身な心音を芸術を通して一般化することで、平和を促すような効果があるようには感じられる
この地だけでなくしばしば海外でも収録イベントを行っているそうで、これがより一層世界恒久平和への希求を感じさせる

高松港

宇野に戻ってもよかったのだが港で適当に列に並び、入港のタイミングもありせっかくなので臨時便で高松にも行ってみることにした
距離が長い分、運賃は高めで1000円くらいだったか
あいにく満席な上、列の最後の方だったので30分くらい船内は屋外で立ちだった
しかし夕暮れの空と水面、さらに雲間から差し込む光の筋、瀬戸内の島々がキレイだった

香川県庁舎東館

帰り

久しぶりのサンライズ
いい具合に席をとれず岡山で車両を乗り換え
弾丸はここが弱い。。

費用の部

交通費:30,000円
宿泊費:5,000円
観覧費:8,000円
飲食費:4,000円

やはり結構交通費がかさんでしまった。。

建築的視点から見る住宅の挑戦

安藤忠雄展|青春
4/19

来歴


六甲の住宅
建築的視点では不安定極まりない立地
しかし土木的視点に立つと擁壁である
機能を統合したものと考えると一定の合理性もある
背後の斜面は依然として住宅としては不安もあるものの、崖沿いの立地によりグランドレベルが豊かで低層階でありながら高層階のような眺望を与えたりすることができる



光の教会
代表作でスケッチから試行錯誤の過程をうかがえる
十字架の切れ込みは当然としてL字型の壁の配置も難しかっただろう
特に平面図として上記のバランス感も難しかったか
段階によってはL字型が光を遮っているように見えるものもあった
幅と奥行きで光の直進する進路上にはこの壁を置くことはできない
さらに回折を加え光の強度が幅と奥行きで変わる
十字架の立面上の縦横比だけでなく、3次元的な検討が必要だったことがうかがえるか



東大の講堂
細長い初期の代表作の長屋も思わせる構造
近年で多用される半地下の検討も見られる
周辺の環境との適合性の検討と内部空間の検討の結果のようだ
このあたりは表参道での経験もかなり活きていそうだ
加えて傾斜などの詳細の検討も事細かく歴史的建造物との比較や参考も見られる
現場に対するリスペクトもいい


お寺
格子状の木の骨組みの密度によってちょうどいい明暗を生み出している
光の活用の和の進化版
振り返って考えてみると、伝統的な寺を代表とした日本建築においても、軒や障子、欄間によって、主に側面からちょうどいいバランスを狙っていたか
風通しの要素も大きく、建築が魔法小説に出てくるような自然属性の要素を意識させる

瀬戸内


海の図書館
設計において船の設計図に上書きしてしまうのはもはやミクストメディアのアート
しかし当然合理的だ
まあこれは設計士なら誰しも一度は考えることかもしれない
かくいう私も建築系の講義でGIS地図をCADのレイヤーにしてその上に公園のアイデアを作図したことがある

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直島の起伏な地形と豊かな自然環境が建築を地下に拡大させていく
現地にはまだ行けていないが容積の割に自然との調和がなされているというか圧迫感がない
透過するとまた違った印象があるのだろうが



水の教会

暗室の前面に水を張って波紋をつけさせつつ、プロジェクターで風景を投射している
北海道に手軽にやってくる錯覚を味わえる

ポンピドゥー・センター


建築の中の建築のような野心的な作品
比較的豪華な元の構造に対して、増築は大胆な設計ながらも地味で落ち着いたコンクリートを用いることでバランスがとれている印象がある

今日のプロジェクト

作品は多くあるが現時点でも狭小住宅を扱っている点は特徴的だ
書籍にも書いてあるがやはり最小単位の住宅こそが本領を発揮する領域に思える
大きな箱物は潤沢な予算や広大な空間により自由度が高いが、住宅には一般にそれらに大きな制約がかかるから
だからこそ面白いというのは同意できる気がする

楽天ブックス: 安藤忠雄住宅 - 安藤忠雄 - 9784871406727 : 本

とはいえ最近は面積が小さく鉛直方向への自由度が高い作品がやや多いようにも見える
積層的長屋のような印象

講演

たまたま本人がいらして、図録とシャツにサインをいただいたほか、講演を聴くこともできた

冒頭は時事問題として関税が挙げられた
加えて世界でプロジェクトを進行しているとの紹介だ
資本自由主義におけるグローバルな建築家だからこそ、反グローバリズムへの危機感が強いのだろう

世界に進出する背景として、設計マージンが国内2.5%で海外20%だそうだ
このあけすけでありつつも嫌な感じがないのは大阪人らしい

話の途中は突飛な構成にも思えたが振り返ってみると要点を抑えている

  • 仕事はチームワークである点
  • そこに目標や計画が必要である点

昔は灘高東大の脳死キャリアが王道だったが、彼自身が現場の叩き上げであり、今日は逆説的にその教育のコスパならず効果についてもやや懐疑的か
とはいえ、勉強しろというメッセージ自体は大人だ
ただ手段が目的化していることに警鐘を鳴らしていたような印象もある

旧帝大のバイトの英語レベル

日本人が交渉しないという問題点も指摘した
これはことさら東京人ということかなという印象も受けた
東大の特任教授の打診を複数受けたが、年収のあまりの低さに断ったというのも面白い
中身も面白いのだが表面的にも噺屋風で年度ごとの交渉のダメさをボケに落とし込んでいる

質問パート
後悔だが住宅への執念も含めて社会問題と絡めつつ空き家については尋ねてみてもよかったかもしれない

東京五輪のザハについても、やはり彼はザハ案がよかったらしい
同感だ
ただ本来的な意味での政治のプロセスにおいては課題もあったか
競技やエンタメを実施する複合施設の機能性を追求する側面とアイコニックな芸術的建築を追求する側面とがあり、日本人の大衆においては残念ながら後者は重視されていなかったらしい
ここが1つ広報的な失敗だったかもしれない
加えて前者のメッセージ性が悪かったのは彼自身の口からも聞かれた
当初は全天候型で五輪後の音楽ライブ等も含めた機能要件で検討していたが、コストの膨張とともにこの機能も落とされてしまった
この点はコスパ重視であろうとも落ちる部分ではないはずだが

ウメキタ
この企画展が実施されているのもその空間の主に地下の一角になっている
計画時は高層ビルを建てて当然という風潮だったらしい
しかしやはり結果的にこれが優れている
空間的豊かさがある
経済的にも良好だったらしく、周囲の家賃を向上させられたらしい
この点は統計的な研究を期待して待ちたい

ソーク研究所がおすすめらしく、これも人生で一度訪れてみたい