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「おやさいクレヨンVegetabo」デザイン事務所が作った”お米と野菜から作られたクレヨン”

 世の中、思いこみだけで判断していることが多々ある。文房具というのは文房具メーカーが開発するものだと思っていたのもそのひとつだが、クラウドファンディングなどを利用して個人で文房具メーカーを立ち上げている方がいるのを知ると、それも思いこみだったんだなと思う。先日見かけたエコなクレヨンも、デザイン会社が開発した素敵な文房具だった。 

お米と野菜から作られたクレヨン 

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 かわいいパッケージに入ったクレヨン。そのまま本棚に入れても似合いそうなこのクレヨンは、お米と野菜から作られた「おやさいクレヨン ベジタボー シーズン3」という商品だ。開発したのは青森県青森市にある「mizuiro株式会社」という会社。広告等を手がけるデザイン会社だが、全くの畑違いである文具の世界で新たな商品を開発した。

 おやさいクレヨンには、米ぬかから抽出された米油とライスワックスをベースとして、本物の野菜粉末が入っている。また、10色のクレヨンにはそれぞれ配合された野菜の名前がついていて、「キャベツ」「ネギ」「むらさきいも」など色と野菜の名前がリンクしているのも楽しい。

 天然素材で作られているクレヨンは幼い子ども達が口に入れてしまっても安全なだけではなく、廃棄される野菜が有効活用されるという意味でもすばらしいなと思う。値段が普通のクレヨンよりもかなり高いのは、販売される数がまだまだ少ないことや大量生産を行わずひとつひとつ手間をかけて作っているからにほかならない。

 「色の名前」という既存概念をとりのぞいて、野菜そのものの色を使用しているおやさいクレヨン。自然界には存在しない色は使われていないので、逆に自然界の色そのものを再現することができるのではないかと思う。

 「空は青」「キャベツは緑」「サツマイモは紫」といった色の固定概念を外すという意味でも、子ども達に使って欲しい商品だなと感じた。 

おやさいクレヨン ベジタボー シーズン3

おやさいクレヨン ベジタボー シーズン3

 

形を変えた地産地消商品

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 おやさいクレヨンの開発は、デザイン会社の代表である木村尚子さんが「地元青森の美味しい野菜を新しい形でアピールできないか」と考えたことがきっかけだった。青森で広告デザイン等を行っている小さなデザイン会社ならではのフットワークの良さで、市場調査から商品開発までを一気に行ったというのはとてもアクティブだなと思う。

 商品開発も試行錯誤を繰り返したようで、それでも商品化まで持っていけるというのは、小さな会社ならではの意志決定の速さと熱い想いがあってのことだろう。

 クレヨンを作る際には蝋に着色成分を混ぜる必要があるが、野菜の場合には細かく砕いた粉末が必要で、最初の頃はボソボソとした固い書き味で失敗作が続いたようだ。それでも、農家が出荷できない傷物商品や廃棄されるキャベツの外葉などを使い、細かい粒子の野菜粉末を作るなど工夫を凝らして商品化が進む。

 主成分であるワックスも米ぬかからとれるライスワックスを使い、成形は地元のクレヨンを造れる工場で手作りするなど、実現に向けての取り組みはひとつの物語と言えるぐらい山あり谷ありの取り組みだったようだ。

新商品開発のお手本となる取り組み内容

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 おやさいクレヨンが商品として発売されるまでの過程を見ると、新商品開発に必要な要素がすべて詰まっているなと感じた。

 市場調査をすることによって「他のメーカーにはないニッチな商品開発を行う」という方針を導き出し、デザインメーカーならではの「色の規格概念を外す」という方向性を導き出すなど、商品コンセプトをきちんと固めているところがすばらしい。

 さらに、実際に野菜を使って試作品を作り、商品の課題を導き出すとともに解決策を模索する。そして、農家や工場などの協力者との連携を図ることによって原料の確保から製造までのラインを確保する。さらに、商品パッケージを工夫してプロモーションビデオも自作し、ギフトショーに出展してバイヤーや小売店とのつながりを持つとともに、マスコミの取材を通じて広報活動を行う。

 おやさいクレヨンという新商品の発想から商品化、販売までを列記してみると当たり前のことのように思えるかもしれないが、それを実践するというのはかなりのパワーが必要だと思う。

 商品開発には王道は無いと思うが、おやさいクレヨンの開発には見習うべきことがたくさん入っているのではないだろうか。こういったことができるようになると、仕事も楽しくなるんだろうなと感じた。