18 周年

2007 年にこのブログをはじめて、18 周年になりました。

昨年は約 50 万アクセスとなり、相変わらず低下傾向ですが、それでも数多くの方々に読んでいただき、コメントでご要望をお寄せいただくことで何とか毎週更新ができております。

本当にありがとうございます。

今年から Enterprise 以外では新しい Outlook への移行が進むことになるようですので、新しい Outlook の記事も増えると思いますが、引き続き従来の Outlook も活用してもらうべく、様々なマクロや Tips を紹介してまいりますので、よろしくお願いいたします。

新しい Outlook の迷惑メール処理について

従来の Outlook では、迷惑メールのオプション設定によりフィルターのレベルや受信拒否リストなどの設定ができます。
しかし、新しい Outlook ではアカウントによっては迷惑メールの設定がない場合があります。
これは、新しい Outlook 自体に迷惑メール フィルターの機能がないためです。

アカウントが Outlook.com や Exchange Online の場合、これらのサービスはサーバー側に迷惑メールのフィルター機能があり、この機能の設定が新しい Outlook で表示されます。
しかし、それ以外のサービスについては新しい Outlook に迷惑メールの機能がないため、迷惑メールの設定も表示されません。

プロバイダーによってはサーバー側で迷惑メールのオプションが提供されている場合があるので、そちらを使用して迷惑メールの対策が可能ですが、新しい Outlook ではマイクロソフト以外のプロバイダーの迷惑メールオプションの設定は今のところできないようです。

なお、従来の Outlook でも迷惑メール フィルターの機能の削除が予定されています。
実際には一度削除されたのですが、不具合により想定外の動作が発生したため、一時的に復活しているという状況です。

マイクロソフトの方針としては迷惑メールの処理はサーバー側でのみ行うということになるようなので、どうしてもクライアント側で迷惑メールの処理をしたいのであれば、他のメーカーのメールソフトを使う必要があるでしょう。

参考リンク:
Outlook の迷惑メール フィルター処理が実行されているが、[迷惑メール Email オプション] 設定が削除されている – Microsoft サポート

共有メールボックスを追加のアカウントとして使用する方法

追加のメールボックスと追加のアカウントのコメントにて以下のご質問をいただきました。


いつも非常に興味深く拝見させていただいております。

古い投稿へのコメントで失礼いたします、AutoMappingがOffで、同一組織内でフルアクセスがある共用メールボックスのアカウントとしての追加は現在もサポートされないかご存知でしょうか。

以下公開情報の中でサポートや別組織の記述がなかったため気になりました。

Add a shared mailbox as an additional account in Outlook Desktop – Outlook | Microsoft Learn


結論から言えば、AutoMapping がオフであれば、共有メールボックスを追加のアカウントとして設定することはサポートされます。
引用いただいている技術情報は、共有メールボックスを追加のアカウントとして設定する方法に関するもので、この手順において AutoMapping をオフにするというものがあります。
そのため、AutoMapping がオフなのであれば、サポートされるということになります。

ただし、Microsoft 365 Apps で共有メールボックスを追加のアカウントとして設定する場合に一つだけ注意事項があります。
それは、コントロール パネルの [メール] を使用して追加できない場合があるということです。
以前、コントロール パネルの [メール] でプロファイルの作成に失敗する場合があるという話を書きましたが、プロファイルの作成だけでなくアカウントの追加についても失敗する場合があります。
そのため、追加する際には上記の公開情報の通りに Outlook からアカウント設定を行う必要があるでしょう。

新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (エンタープライズ向け)

先週、新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (2024 年 12 月現在) として Enterprise ライセンスを持っていない場合に 2025 年 1 月以降に Opt Out フェーズに移行するという記事を書きましたが、12/6 にエンタープライズ ライセンスを持っている場合の Opt Out フェーズが  2026 年 4 月になると発表されました。

1 年以上先になりますし、Opt Out フェーズになっても従来の Outlook に戻す方法は提供されるので、従来の Outlook は 2026 年 4 月以降も使い続けられることになります。

ただ、いずれは従来の Outlook は廃止される予定なので、新しい Outlook に移行する準備はしておく必要があるでしょう。
特に、新しい Outlook で使えなくなった機能については、今のうちにフィードバックをしておけば実装されるようになるかもしれないため、早めにフィードバックはしたほうが良いと考えられます。

新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (2024 年 12 月現在)

以前、新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (2024 年 5 月現在) において、以下の様に説明していました。

次の Opt Out フェーズがいつになるのかについては現時点で決まっておらず、遅くともこのフェーズに入る 12 カ月前にはスケジュールが公表されることになっています。
現時点 (2024 年 5 月) でそのようなアナウンスはありませんので、Opt Out は 2025 年 5 月以降は確定ということになります。

しかし、Ignite 2024 において以下のような発表がされました。

What to expect

Over the past few years, we have been in an opt-in phase for the new Outlook. As we plan to transition to an opt-out model, some organizations have already begun migrating on their own. We anticipate that small and medium-sized businesses (SMBs) with Microsoft 365 for business plans will begin to be moved into this phase starting in January 2025, and with customers with Microsoft 365 for enterprises licenses following in 2026.

また、5 月に公開された新しい Outlook による置き換えについてのブログにも以下の記述が追記されました。

Edit 11/5/2024: Clarified that only managed customers with enterprise licenses will be notified 12 months in advance before opt-out

したがって、12 カ月前までに Opt Out フェーズの案内がされるのは Microsoft 365 for Enterprise のライセンスを持っている場合だけで、それ以外のライセンスについては 2025 年 1 月以降に順次 Opt Out フェーズへの移行が始まるようです。

Microsoft 365 Business Standard または Microsoft 365 Premium を使用していて、新しい Outlook for Windows への移行をしたくない場合は、今月中に 新しい Outlook のインストールと使用を制御する の「新しい Outlook の意向をオプトアウトする」に記載されている方法で自動移行を無効にしておく必要がありますね。

新しい Outlook for Windows で c:\users\ユーザー名\appdata\local\Microsoft\Olk\Logs フォルダーに数十ギガを超えるファイルが生成される

新しい Outlook for Windows を使用していると、c:\users\ユーザー名\appdata\local\Microsoft\Olk\Logs フォルダーに .log というファイルが生成されます。
これはトラブルシュート用のログファイルなのですが、このフォルダーに数十ギガを超えるファイルが生成されるという不具合が報告されているようです。

この不具合は新しい Outlook for windows の設定の [全般]-[Outlook について] にあるクライアント バージョンが 24241025003 以降で修正されているようですので、このような事象が発生したら新しい Outlook for Windows を更新すれば回避できます。
(更新は Microsoft ストア アプリから行えます。)

また、今後同様の不具合が発生したとしても、単なるログファイルなので手動で削除しても問題ありません。

なお、このファイルを作成しないようにするような設定は現時点ではありません。

参考リンク:

Outlook is creating Huge log files, up to 80gbs without logging – Microsoft Community

受信トレイなどのサブフォルダーを共有する方法

Exchange サーバー環境では、受信トレイだけでなくそのサブフォルダーについても他の人に参照などのアクセス権を与えることが可能です。
しかし、参照する側でそのフォルダーを開こうとしても、[他のユーザーのフォルダーを開く] ではフォルダーの種類として既定のフォルダーしか選択ができません。
メールボックス全体にアクセス権を与えればサブフォルダーもアクセスできますが、この場合はメールボックスのすべてのフォルダーにアクセス可能となってしまいます。

では、アクセス許可を与えたサブフォルダーのみを共有するにはどうすればよいのでしょうか?

例えば、受信トレイの下にある「共有用」というフォルダーを参照させるためには、まず共有する側で以下のアクセス権を設定します。

  • メールボックスのルート フォルダー (フォルダーツリーの一番上のフォルダー): [フォルダーの表示] のみ
  • 受信トレイ: [フォルダーの表示] のみ
  • 共有用: 他のユーザーに許可したいアクセス権

そして、参照する側では [アカウント設定] の Exchange アカウントの [その他の設定] の [詳細設定] タブで、[メールボックス] にある [追加] をクリックし、共有されたフォルダーがあるメールボックスを追加します。
これにより、フォルダーの一覧に追加されたメールボックスが表示され、アクセス権があるフォルダーのみが表示されるようになります。

RSS フィードや SharePoint リストの接続情報が保存される場所

Outlook ではメール アカウントのほかに RSS フィードや SharePoint リストなども同期できます。
そして、これらの接続情報 (URL など) はファイルやレジストリ、SharePoint リストの PST ではなく、受信トレイのメッセージ クラスが “IPM.Sharing.Configuration” となる隠しアイテムとして保存されています。
そのため、Exchange サーバー環境であれば、RSS フィードや SharePoint リストの接続情報は同じメールボックスに接続しているクライアント間で同期されます。

以下のマクロを使用すると、メールボックスに保存されている RSS フィードと SharePoint リストの情報を取得することが可能です。

'Sub ShowRSSandSharePointList()
     Const PROP_URL = "http://schemas.microsoft.com/mapi/id/{00062040-0000-0000-C000-000000000046}/8A73001F"
     Const PROP_NAME = "http://schemas.microsoft.com/mapi/id/{00062040-0000-0000-C000-000000000046}/8A75001F"
     Dim strFilter As String
     Dim oRow As Outlook.Row
     Dim oTable As Outlook.Table
     Dim oFolder As Outlook.Folder
     Set oFolder = Session.GetDefaultFolder(olFolderInbox)
     ' メッセージ クラスでフィルター
     strFilter = "[MessageClass] = 'IPM.Sharing.Configuration'"
     Set oTable = oFolder.GetTable(strFilter, olHiddenItems)
     ' 既定の列を削除
     oTable.Columns.RemoveAll
     ' 取得するプロパティを指定
     With oTable.Columns
         .Add PR_URL
         .Add PR_NAME
     End With
     ' テーブルの最後まで繰り返す
     Do Until (oTable.EndOfTable)
         Set oRow = oTable.GetNextRow()
         ' イミディエイト ウィンドウに URL を表示
         Debug.Print (oRow(PROP_URL))
         ' イミディエイト ウィンドウに名前を表示
         Debug.Print (oRow(PROP_NAME))
     Loop
End Sub

マクロの登録方法やメニューへの追加について

新しい Outlook for Windows と POP/IMAP サーバーの接続

新しい Outlook for Windows (以下、新しい Outlook) でも POP/IMAP サーバーがサポートされるようになりました。
ただ、通常の POP/IMAP クライアントとは異なる動作をします。

通常の POP/IMAP クライアントでは、そのクライアント自身が POP や IMAP というメール受信のためのプロトコルを使用してサーバーからメールを受信し、SMTP というプロトコルでサーバーにメールを送信します。
しかし、新しい Outlook ではこれらのメールのプロトコルはサポートされていません。
その代わりに、POP/IMAP アカウントを構成すると、Micorosft のデータセンターにあるサーバーに HTTPS でアクセスし、サーバーが新しい Outlook の代わりに POP/IMAP でメールを受信し、SMTP でメールを送信するという動作になります。
通常の POP/IMAP クライアントと新しい Outlook のデータの流れの違いを図にすると以下の様になります。
NewOutlookAndIMAP[8]
このような構成にすると以下のようなメリットがあります。

1.クライアントでのメールなどのバックアップが不要になる

クライアントの障害でローカルのデータが失われても、クラウド上にメールや予定表のデータが保持されているのでバックアップが不要です。

2.複数クライアントで予定表や連絡先が同期できる

POP/IMAP アカウントでは、メールはサーバー上にありますが、予定表や連絡先はローカルにのみ格納されているため、複数クライアントで同じアカウントを使用している場合、予定表や連絡先は PST のコピーなどで同期する必要があります。
しかし、新しい Outlook では予定表や連絡先もクラウドに格納されるので、複数のクライアントで同一アカウントを使用する場合には予定表や連絡先も同期されることになります。
また、POP アカウントの場合は未読/既読の状態やフォルダー分けも同期されます。

3.クライアントのディスク使用量の抑制できる

新しい Outlook でオフラインで使用するメールの期間を少なくしたり、オフラインを無効にすると、クライアントのディスクの使用量が削減できます。

こうしたメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。

1.認証情報がクラウドにキャッシュされる

新しい Outlook の代わりにクラウドのサーバーからアクセスするため、認証情報はクラウドのサーバーにキャッシュされます。
当然、認証情報は高度なセキュリティで保護されていますが、何らかの形で流出するというような可能性もゼロではありません。
ただし、セキュリティの強度としてはクライアントに保存されている資格情報よりも高いと考えられます。

2.インターネットからアクセスできない POP/IMAP サーバーのアカウントは追加できない

クラウドのサーバーはインターネット上にありますので、組織内のファイアウォールの内側にあり、インターネットからのアクセスができないサーバーとは通信ができません。
そのため、そのようなサーバーのアカウントは追加できません。

3.オフラインでアクセスできるメールに制限がある

新しい Outlook ではオフラインに保存できるメールの期間は最大 180 日です。
そのため、それより前に受信したメールを参照する場合は、インターネットに接続する必要があります。

4.サーバーに接続するクライアントの IP アドレスが Microsoft クラウドのアドレスに変わる

上記の図の通り、新しい Outlook を使うと POP/IMAP/SMTP のアクセスは Microsoft クラウドから行われるようになります。
これは、ISP のサーバーから見ると、クライアントの IP アドレスが Microsoft クラウドのものになるということを意味しています。
もし、セキュリティなどの理由で特定のアカウントの接続元 IP アドレスが制限されているような場合、新しい Outlook に切り替えると接続が拒否されるようになると考えられます。

上記のようにこの構成にはメリット・デメリットがありますが、新しい Outlook のアーキテクチャ上、このような構成は避けられないものであるため、もし不都合があるのであれば何らかの対応をする必要があるでしょう。

参考リンク:

Outlook で Microsoft Cloud にアカウントを同期する – Microsoft サポート

コントロール パネルの [メール] でプロファイルの作成に失敗する場合がある

Outlook のプロファイルを作成する際、従来はコントロール パネルの [メール] から作成することが一般的でした。
しかし、Version 2302 以降の環境では、特定の条件でコントロール パネルの [メール] からプロファイルが作成できず、Outlook からであれば作成できる場合があります。
これは、Version 2302 以降で新たに導入された先進認証のコンポーネントの制限によるものであり、例えばプロファイルを編集するという技術情報では以下の通り記載されています。

コントロール パネルの [メール] アイコンを使用して、[メール] アプレットを開き、Outlook のメール プロファイルを構成できます。 Outlook がインストールされ、少なくとも 1 回開かれない限り、[メール] アイコンは表示されません。 メール アプレットを使用して、Microsoft 365、Outlook.com、または Gmail などの先進認証を必要とするその他のメール アカウントのアカウントまたはプロファイルを追加することはできません。  

これを回避するには、プロファイルの作成を Outlook で行う必要があります。
Outlook が起動できるようであれば、[ファイル]-[情報] の [アカウント設定]-[プロファイルの管理] で [メール設定] ウィンドウを開き、[プロファイルの表示] から新規のプロファイルを作成します。

一方、プロファイルの破損により Outlook が起動できないような場合、Shift キーを押したまま Outlook を起動すると、[プロファイルの選択] ダイアログが表示され、[作成] をクリックすることで新しいプロファイルが作成できます。