新しい Outlook for Windows (以下、新しい Outlook) でも POP/IMAP サーバーがサポートされるようになりました。
ただ、通常の POP/IMAP クライアントとは異なる動作をします。
通常の POP/IMAP クライアントでは、そのクライアント自身が POP や IMAP というメール受信のためのプロトコルを使用してサーバーからメールを受信し、SMTP というプロトコルでサーバーにメールを送信します。
しかし、新しい Outlook ではこれらのメールのプロトコルはサポートされていません。
その代わりに、POP/IMAP アカウントを構成すると、Micorosft のデータセンターにあるサーバーに HTTPS でアクセスし、サーバーが新しい Outlook の代わりに POP/IMAP でメールを受信し、SMTP でメールを送信するという動作になります。
通常の POP/IMAP クライアントと新しい Outlook のデータの流れの違いを図にすると以下の様になります。
このような構成にすると以下のようなメリットがあります。
1.クライアントでのメールなどのバックアップが不要になる
クライアントの障害でローカルのデータが失われても、クラウド上にメールや予定表のデータが保持されているのでバックアップが不要です。
2.複数クライアントで予定表や連絡先が同期できる
POP/IMAP アカウントでは、メールはサーバー上にありますが、予定表や連絡先はローカルにのみ格納されているため、複数クライアントで同じアカウントを使用している場合、予定表や連絡先は PST のコピーなどで同期する必要があります。
しかし、新しい Outlook では予定表や連絡先もクラウドに格納されるので、複数のクライアントで同一アカウントを使用する場合には予定表や連絡先も同期されることになります。
また、POP アカウントの場合は未読/既読の状態やフォルダー分けも同期されます。
3.クライアントのディスク使用量の抑制できる
新しい Outlook でオフラインで使用するメールの期間を少なくしたり、オフラインを無効にすると、クライアントのディスクの使用量が削減できます。
こうしたメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
1.認証情報がクラウドにキャッシュされる
新しい Outlook の代わりにクラウドのサーバーからアクセスするため、認証情報はクラウドのサーバーにキャッシュされます。
当然、認証情報は高度なセキュリティで保護されていますが、何らかの形で流出するというような可能性もゼロではありません。
ただし、セキュリティの強度としてはクライアントに保存されている資格情報よりも高いと考えられます。
2.インターネットからアクセスできない POP/IMAP サーバーのアカウントは追加できない
クラウドのサーバーはインターネット上にありますので、組織内のファイアウォールの内側にあり、インターネットからのアクセスができないサーバーとは通信ができません。
そのため、そのようなサーバーのアカウントは追加できません。
3.オフラインでアクセスできるメールに制限がある
新しい Outlook ではオフラインに保存できるメールの期間は最大 180 日です。
そのため、それより前に受信したメールを参照する場合は、インターネットに接続する必要があります。
4.サーバーに接続するクライアントの IP アドレスが Microsoft クラウドのアドレスに変わる
上記の図の通り、新しい Outlook を使うと POP/IMAP/SMTP のアクセスは Microsoft クラウドから行われるようになります。
これは、ISP のサーバーから見ると、クライアントの IP アドレスが Microsoft クラウドのものになるということを意味しています。
もし、セキュリティなどの理由で特定のアカウントの接続元 IP アドレスが制限されているような場合、新しい Outlook に切り替えると接続が拒否されるようになると考えられます。
上記のようにこの構成にはメリット・デメリットがありますが、新しい Outlook のアーキテクチャ上、このような構成は避けられないものであるため、もし不都合があるのであれば何らかの対応をする必要があるでしょう。
参考リンク:
Outlook で Microsoft Cloud にアカウントを同期する – Microsoft サポート