Windows Update により Windows 10 に新しい Outlook for Windows がインストールされる

既に Windows 11 では 23H2 で自動的に新しい Outlook for Windows (以下、新しい Outlook) がインストールされるようになりましたが、Windows 10 についても1/28 にリリース予定のオプションの更新プログラムや、2/11 にリリース予定のセキュリティ修正プログラムをインストールすることで、新しい Outlook がインストールされます。

Windows 10 に同梱されていた Windows メールとカレンダーについては昨年の 12/31 にサポートが終了しているため、その後継である新しい Outlook がインストールされるというのも自然な流れと考えられます。

なお、新しい Outlook がインストールされるといっても、従来の Outlook が置き換えられることにはなりません。

もし何らかの理由で新しい Outlook をインストールさせたくないということなのであれば、更新の適用前に以下のレジストリを設定してください。

キー: HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\WindowsUpdate\Orchestrator\UScheduler_Oobe
名前: BlockedOobeUpdaters
種類: REG_SZ
値: ["MS_Outlook"]

新しい Outlook for Windows を使用するメリット

今年の 1 月 1 日から Windows メールと予定表を起動しようとすると新しい Outlook for Windows (以下、新しい Outlook) が起動されるようになりました。
また、従来の Outlook を使用している場合でも、Enterprise ライセンスがなければ今月から既定で新しい Outlook に移行されるようになります。
そのため、今年から新しい Outlook の利用が本格化してくると考えられます。
一方で、従来の Outlook に比べて新しい Outlook では不足している機能があり、新しい Outlook を使うメリットがわからないというような話も聞きます。
そこで、今回は新しい Outlook を使うメリットを紹介します。

メリット 1: 従来の Outlook よりも多くの Copilot の機能が使用可能

Microsoft 365 製品では Copilot を使用することで生成 AI による様々な機能が使用できますが、新しい Outlook では従来の Outlook では使用できない Copilot の機能があります。

一つ目は、Copilot in Outlook のチャット機能です。
従来の Outlook にも左側のアプリ バーに Copilot のアイコンがありますが、こちらで使用できるのは Microsoft 365 製品共通の Copilot チャットであり、Outlook 固有の作業はできません。
一方、新しい Outlook のタイトルバーの右側、最小化ボタンの左にある Copilot ボタンをクリックすると、Outlook 固有の Copilot チャットが使用できます。
これを使うと、自動仕分けルールの作成や会議の作成など、Outlook 固有の操作ができるようになります。

二つ目は、メール スレッドから会議出席依頼を作成する機能です。
メールでのやり取りが長引き、会議で話し合ったほうが良いというようなことになった場合、[Copilot を使用してスケジュールする] を使用してそのメール スレッドを基にした会議出席依頼を作ることができます。
これによって作成された会議出席依頼は、出席者にメールスレッドの受信者が含まれ、本文にはメールスレッドの要約が含まれています。

三つ目は、Copilot で Outlook テーマを作成する機能です。
従来の Outlook では Office 共通の数種類のテーマの中から選択するしかありませんでしたが、新しい Outlook では Copilot を使用して現在地や天気などを基にしたテーマが生成できます。
また、テーマを日替わりにすることもできます。

メリット 2: 会議に関する新機能が使用可能

新しい Outlook では、従来の Outlook で実装されていない様々な会議に関する新機能が使用可能です。

一つ目は、Teams 会議の概要を表示する機能です。
Teams 会議で録画をしておくと、会議終了後に録画された内容をもとに会議の概要が本文に表示されるようになります。
そして、[要約を表示] をクリックすると、Teams の会議の要約画面が表示され、会議のトピックごとのまとめや、会議後にすべきアクションなどが表示されます。
これを使うと議事録作成がほぼ不要になります。

二つ目は、会議のフォロー機能です。
従来の Outlook では、会議に対するアクションは承諾、仮承諾、辞退の 3 つだけでしたが、新しい Outlook にはフォローというアクションが加わります。
これは、都合により参加できない会議について、後で会議の結果を参照したいという意思を開催者に伝え、自分の予定表には空き時間として保存するというものです。
この機能を使うと、実際には参加できなかった会議についても前述の Teams 会議の概要により、会議でどのようなことが話し合われたなどが確認できます。

メリット 3: 新しい機能が早く追加される

マイクロソフトとしては今後は新しい Outlook への移行を促すため、新機能のほとんどは新しい Outlook に先行で追加されていくことになるでしょう。
そして、それらの中には従来の Outlook には実装されず、前述のような新しい Outlook でしか使用できない機能というものが、今後も増えることが予想されます。

メリット 4: HTML メールがブラウザで表示される

従来の Outlook では HTML を含むすべてのメール形式の本文が Word のコンポーネントにより表示されていました。
そのため、Word でサポートされていない HTML タグや CSS のスタイルを使用したり、Word 固有のタグに変更などが加わることで、表示が乱れたり、本文の一部が表示されないというようなトラブルが発生していました。
一方、新しい Outlook では本文の表示が WebView2 という Microsoft Edge や Google Chrome と同じエンジンにより表示されるので、HTML メールの表示で問題が発生することが非常に少なくなるでしょう。

18 周年

2007 年にこのブログをはじめて、18 周年になりました。

昨年は約 50 万アクセスとなり、相変わらず低下傾向ですが、それでも数多くの方々に読んでいただき、コメントでご要望をお寄せいただくことで何とか毎週更新ができております。

本当にありがとうございます。

今年から Enterprise 以外では新しい Outlook への移行が進むことになるようですので、新しい Outlook の記事も増えると思いますが、引き続き従来の Outlook も活用してもらうべく、様々なマクロや Tips を紹介してまいりますので、よろしくお願いいたします。

新しい Outlook の迷惑メール処理について

従来の Outlook では、迷惑メールのオプション設定によりフィルターのレベルや受信拒否リストなどの設定ができます。
しかし、新しい Outlook ではアカウントによっては迷惑メールの設定がない場合があります。
これは、新しい Outlook 自体に迷惑メール フィルターの機能がないためです。

アカウントが Outlook.com や Exchange Online の場合、これらのサービスはサーバー側に迷惑メールのフィルター機能があり、この機能の設定が新しい Outlook で表示されます。
しかし、それ以外のサービスについては新しい Outlook に迷惑メールの機能がないため、迷惑メールの設定も表示されません。

プロバイダーによってはサーバー側で迷惑メールのオプションが提供されている場合があるので、そちらを使用して迷惑メールの対策が可能ですが、新しい Outlook ではマイクロソフト以外のプロバイダーの迷惑メールオプションの設定は今のところできないようです。

なお、従来の Outlook でも迷惑メール フィルターの機能の削除が予定されています。
実際には一度削除されたのですが、不具合により想定外の動作が発生したため、一時的に復活しているという状況です。

マイクロソフトの方針としては迷惑メールの処理はサーバー側でのみ行うということになるようなので、どうしてもクライアント側で迷惑メールの処理をしたいのであれば、他のメーカーのメールソフトを使う必要があるでしょう。

参考リンク:
Outlook の迷惑メール フィルター処理が実行されているが、[迷惑メール Email オプション] 設定が削除されている – Microsoft サポート

共有メールボックスを追加のアカウントとして使用する方法

追加のメールボックスと追加のアカウントのコメントにて以下のご質問をいただきました。


いつも非常に興味深く拝見させていただいております。

古い投稿へのコメントで失礼いたします、AutoMappingがOffで、同一組織内でフルアクセスがある共用メールボックスのアカウントとしての追加は現在もサポートされないかご存知でしょうか。

以下公開情報の中でサポートや別組織の記述がなかったため気になりました。

Add a shared mailbox as an additional account in Outlook Desktop – Outlook | Microsoft Learn


結論から言えば、AutoMapping がオフであれば、共有メールボックスを追加のアカウントとして設定することはサポートされます。
引用いただいている技術情報は、共有メールボックスを追加のアカウントとして設定する方法に関するもので、この手順において AutoMapping をオフにするというものがあります。
そのため、AutoMapping がオフなのであれば、サポートされるということになります。

ただし、Microsoft 365 Apps で共有メールボックスを追加のアカウントとして設定する場合に一つだけ注意事項があります。
それは、コントロール パネルの [メール] を使用して追加できない場合があるということです。
以前、コントロール パネルの [メール] でプロファイルの作成に失敗する場合があるという話を書きましたが、プロファイルの作成だけでなくアカウントの追加についても失敗する場合があります。
そのため、追加する際には上記の公開情報の通りに Outlook からアカウント設定を行う必要があるでしょう。

新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (エンタープライズ向け)

先週、新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (2024 年 12 月現在) として Enterprise ライセンスを持っていない場合に 2025 年 1 月以降に Opt Out フェーズに移行するという記事を書きましたが、12/6 にエンタープライズ ライセンスを持っている場合の Opt Out フェーズが  2026 年 4 月になると発表されました。

1 年以上先になりますし、Opt Out フェーズになっても従来の Outlook に戻す方法は提供されるので、従来の Outlook は 2026 年 4 月以降も使い続けられることになります。

ただ、いずれは従来の Outlook は廃止される予定なので、新しい Outlook に移行する準備はしておく必要があるでしょう。
特に、新しい Outlook で使えなくなった機能については、今のうちにフィードバックをしておけば実装されるようになるかもしれないため、早めにフィードバックはしたほうが良いと考えられます。

新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (2024 年 12 月現在)

以前、新しい Outlook による従来の Outlook の置き換え時期 (2024 年 5 月現在) において、以下の様に説明していました。

次の Opt Out フェーズがいつになるのかについては現時点で決まっておらず、遅くともこのフェーズに入る 12 カ月前にはスケジュールが公表されることになっています。
現時点 (2024 年 5 月) でそのようなアナウンスはありませんので、Opt Out は 2025 年 5 月以降は確定ということになります。

しかし、Ignite 2024 において以下のような発表がされました。

What to expect

Over the past few years, we have been in an opt-in phase for the new Outlook. As we plan to transition to an opt-out model, some organizations have already begun migrating on their own. We anticipate that small and medium-sized businesses (SMBs) with Microsoft 365 for business plans will begin to be moved into this phase starting in January 2025, and with customers with Microsoft 365 for enterprises licenses following in 2026.

また、5 月に公開された新しい Outlook による置き換えについてのブログにも以下の記述が追記されました。

Edit 11/5/2024: Clarified that only managed customers with enterprise licenses will be notified 12 months in advance before opt-out

したがって、12 カ月前までに Opt Out フェーズの案内がされるのは Microsoft 365 for Enterprise のライセンスを持っている場合だけで、それ以外のライセンスについては 2025 年 1 月以降に順次 Opt Out フェーズへの移行が始まるようです。

Microsoft 365 Business Standard または Microsoft 365 Premium を使用していて、新しい Outlook for Windows への移行をしたくない場合は、今月中に 新しい Outlook のインストールと使用を制御する の「新しい Outlook の意向をオプトアウトする」に記載されている方法で自動移行を無効にしておく必要がありますね。

新しい Outlook for Windows で c:\users\ユーザー名\appdata\local\Microsoft\Olk\Logs フォルダーに数十ギガを超えるファイルが生成される

新しい Outlook for Windows を使用していると、c:\users\ユーザー名\appdata\local\Microsoft\Olk\Logs フォルダーに .log というファイルが生成されます。
これはトラブルシュート用のログファイルなのですが、このフォルダーに数十ギガを超えるファイルが生成されるという不具合が報告されているようです。

この不具合は新しい Outlook for windows の設定の [全般]-[Outlook について] にあるクライアント バージョンが 24241025003 以降で修正されているようですので、このような事象が発生したら新しい Outlook for Windows を更新すれば回避できます。
(更新は Microsoft ストア アプリから行えます。)

また、今後同様の不具合が発生したとしても、単なるログファイルなので手動で削除しても問題ありません。

なお、このファイルを作成しないようにするような設定は現時点ではありません。

参考リンク:

Outlook is creating Huge log files, up to 80gbs without logging – Microsoft Community

受信トレイなどのサブフォルダーを共有する方法

Exchange サーバー環境では、受信トレイだけでなくそのサブフォルダーについても他の人に参照などのアクセス権を与えることが可能です。
しかし、参照する側でそのフォルダーを開こうとしても、[他のユーザーのフォルダーを開く] ではフォルダーの種類として既定のフォルダーしか選択ができません。
メールボックス全体にアクセス権を与えればサブフォルダーもアクセスできますが、この場合はメールボックスのすべてのフォルダーにアクセス可能となってしまいます。

では、アクセス許可を与えたサブフォルダーのみを共有するにはどうすればよいのでしょうか?

例えば、受信トレイの下にある「共有用」というフォルダーを参照させるためには、まず共有する側で以下のアクセス権を設定します。

  • メールボックスのルート フォルダー (フォルダーツリーの一番上のフォルダー): [フォルダーの表示] のみ
  • 受信トレイ: [フォルダーの表示] のみ
  • 共有用: 他のユーザーに許可したいアクセス権

そして、参照する側では [アカウント設定] の Exchange アカウントの [その他の設定] の [詳細設定] タブで、[メールボックス] にある [追加] をクリックし、共有されたフォルダーがあるメールボックスを追加します。
これにより、フォルダーの一覧に追加されたメールボックスが表示され、アクセス権があるフォルダーのみが表示されるようになります。

RSS フィードや SharePoint リストの接続情報が保存される場所

Outlook ではメール アカウントのほかに RSS フィードや SharePoint リストなども同期できます。
そして、これらの接続情報 (URL など) はファイルやレジストリ、SharePoint リストの PST ではなく、受信トレイのメッセージ クラスが “IPM.Sharing.Configuration” となる隠しアイテムとして保存されています。
そのため、Exchange サーバー環境であれば、RSS フィードや SharePoint リストの接続情報は同じメールボックスに接続しているクライアント間で同期されます。

以下のマクロを使用すると、メールボックスに保存されている RSS フィードと SharePoint リストの情報を取得することが可能です。

'Sub ShowRSSandSharePointList()
     Const PROP_URL = "http://schemas.microsoft.com/mapi/id/{00062040-0000-0000-C000-000000000046}/8A73001F"
     Const PROP_NAME = "http://schemas.microsoft.com/mapi/id/{00062040-0000-0000-C000-000000000046}/8A75001F"
     Dim strFilter As String
     Dim oRow As Outlook.Row
     Dim oTable As Outlook.Table
     Dim oFolder As Outlook.Folder
     Set oFolder = Session.GetDefaultFolder(olFolderInbox)
     ' メッセージ クラスでフィルター
     strFilter = "[MessageClass] = 'IPM.Sharing.Configuration'"
     Set oTable = oFolder.GetTable(strFilter, olHiddenItems)
     ' 既定の列を削除
     oTable.Columns.RemoveAll
     ' 取得するプロパティを指定
     With oTable.Columns
         .Add PR_URL
         .Add PR_NAME
     End With
     ' テーブルの最後まで繰り返す
     Do Until (oTable.EndOfTable)
         Set oRow = oTable.GetNextRow()
         ' イミディエイト ウィンドウに URL を表示
         Debug.Print (oRow(PROP_URL))
         ' イミディエイト ウィンドウに名前を表示
         Debug.Print (oRow(PROP_NAME))
     Loop
End Sub

マクロの登録方法やメニューへの追加について