【真っ白なキャンバス連載】「かわいいだけじゃないアイドルがいい」──ひとりのアイドルとして、橋本美桜が救いたいもの
アイドル・グループ、真っ白なキャンバス(通称、白キャン)のメンバー個別インタヴュー企画「真っ白なキャンバス Road to Be the IDOL」。グループとして、そしてメンバー個人としても大きな変化の中にいる彼女たちの素直な気持ちに迫ったこの連載。第3弾となる今回は、橋本美桜が登場。冷静に物事と向き合う彼女だからこそ抱く、グループに対する想いや、アイドルとしての今後の目標について伺いました。
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INTERVIEW : 橋本美桜 (真っ白なキャンバス)
インタヴュー&文 : 宗像 明将
写真 : YURIE PEPE
2017年に結成され、2020年にはメジャー・デビューを果たし、Zepp DiverCity(TOKYO)での3周年公演も成功させた真っ白なキャンバス(以下、白キャン)。その新メンバーのオーディションに、当初は「じゃあ私の分も探しといてくれや」と思ったというのが橋本美桜だ。子役、舞台役者を経て2018年12月31日に白キャンのメンバーとしてお披露目され、しっかり者キャラとしてグループを俯瞰して見てきた。彼女が現在、新メンバーとして「人生ぐしゃぐしゃの人」を求める理由とは……?
ライヴを一個重ねるごとにどこか成長してないと
──橋本さんって、しっかり者キャラじゃないですか。正直なところ疲れないですか?
橋本美桜(以下、橋本) : 疲れないかもしれない。別に「しっかりしなきゃ」って思ってるわけではなくて、「この人たちはできないからやったほうがいいのかな」ぐらいだけど、「ここはやりたくないな」と思ったらやらないし、そういう空気を自分が出してるから(小野寺)梓ちゃんとかが「やるよ」って言ってくれたりもするから。別にやりたくないことを無理矢理やってるわけじゃないから、そんなに疲れてはないかもしれない。
──立ち位置的に肩の力を入れてる部分はあります?
橋本 : ないかも(笑)。でも、すごいできる人と思われたら嫌だなと思う。できないことも全然あるし、「どうせできるよね」って思って任されちゃうと、「できないんだけどな」って思いながらやりはするんですけど、青木さん(青木勇斗/プロデューサー)が考える成功がわからないから、結果を出せている感じがしなくて、「これで良かったのかな?」って思うことはめっちゃ多い。
──「これで良かったのかな?」って考えることって、たとえば何ですか?
橋本 : MCも、別にしゃべるのが得意だったわけじゃなくて、私、本当は黙ってたいタイプの人なんですよ。でも、しゃべろうと思えば全然しゃべれるし、シーンとした空気がいちばん苦手だから。「橋本がいるからまあいいか」って思われるとちょっと困るなと思う。ファンが「MC面白いね、期待してるよ」と言ってくれるからギリギリがんばれてるけど、私も普通に頭の中ごちゃごちゃになってるし、MCのことを考えてライヴに集中できないとか全然あるんですよ。
──プレッシャーは強く感じるタイプですか?
橋本 : お披露目も緊張してなくて、子役時代や舞台をやってるときも緊張とかあんまりなかったんですけど、白キャンは歴を重ねるごとに「ちゃんとしなきゃ」っていう思いがすごい強くなって、ライヴとかもだんだん緊張してくるようになって。青木さんが結果主義だから、途中の頑張りも見ててくれてるけど、結果を出さない子には「結局この努力って無駄だったじゃん」ってたぶん思っちゃう人だから。結果が出せない感じがすると、ライヴごとにだんだん緊張してくみたいなプレッシャーがあります。
──ここまで全員、青木さんの話になるんですよね。
橋本 : ダメだったら、青木さんが私たちを切るかって言ったら、そんなことはまったく思ってなくて。ただ「自分がそう思われたら嫌だな」っていうプレッシャーだから、青木さんが悪いってよりは自分の捉え方だと思います。
──さっき「ちゃんとしなきゃ」と言ってましたが、そう意識するポイントは何ですか?
橋本 : メンタルがやられちゃう人が多いから、いかにそこを傷つけないかって(笑)。すごい悩んでる子がいたら、そこに触れずにレッスンでもあんまり話しかけないでおくとか、そういうのもたぶん私は見れる人だし。ライヴ前も、その子の様子を見ながらMCを手伝ったほうがいいのかなとか、めっちゃ頭働かせてます。でも、それでその子の個性を潰してしまうのはもったいないから、自分が出すぎないようにしています。
──他のメンバーのことも気にしつつ、自分の歌やダンスについて意識しているポイントはありますか?
橋本 : ファンの人から手紙をもらって、ひとりだけ気づいてくれてる方がいて。ライヴを一個重ねるごとにどこか成長してないと、っていう気持ちがあって。ダンスもその日いちばんいいものを見せるけど、次の日に同じじゃダメだし、それより劣っちゃいけないから、毎日ライヴがあっても、1日おきに絶対違うものを見せてて。怒られるときに「お遊戯会」ってめっちゃ言われるけど、自分的には「ここは成長させてる」っていうのはライヴごとに1個ずつあります。
──毎回自分自身にプレッシャーをかけているみたいですよね。橋本さん自身のメンタルは大丈夫なんですか?
橋本 : うん、すごい心配されるんですけど。全然別のことで急にパキッと折れちゃったりはするけど、「パフォーマンスが」「白キャンが」って感じではない。
「まあ、そのうち大丈夫になるか」と思って
──いま、自分が抱えてる悩みや葛藤みたいなものってありますか?
橋本 : 悩みはあったはずなんですけど、別に気にならなくなってきた。そのときは「嫌だなー」って思うんですけど、別にそうでもないかなって思って(笑)。最初は新メンバーがすごい嫌で、「嫌だ嫌だ」っていうのをメンバーにもすごい出しちゃって、メンバーをマイナスに引っ張っちゃってたんですけど、私はもう「嫌なこともワクワクできたらいいな」って思いはじめちゃったから、あんまり悩んではない。
──その新メンバーのオーディションをやると聞いたときはどう思いましたか?
橋本 : 「じゃあ私の分も探しといてくれや」って思いました(笑)。正直、自分の代わりというのはけっこういると思っちゃってるから。そのときは「自分いらないんじゃないか、白キャンに役に立てなかったなー」みたいな気持ちになっちゃいました。
──いまはそんなことはないんですか?
橋本 : なんだろう、時が経てば大丈夫なタイプなんで(笑)。スッキリしちゃった。
──2年半もやっているし、もうちょっとワガママでもいいんじゃないですか?
橋本 : 子役時代からこの業界に浸かっちゃってるから、なんかもうどう言ったって大人の意見はねじ曲げられないっていうのがある。自分がずっと決めてるのは、青木さんがやりたいことで自分もおもしろいと思ったらついて行きたいし、ちょっと違うなと思ったら辞めようっていうことで。結局すごい説得された感じになっちゃったけど、青木さんの考えが納得できたし、これからも楽しいことを考えようと思ってるんだな、っていうのが伝わってきたから、スッキリしたんだと思う。
──スッキリしたのは、青木さんと橋本さんと浜辺(ゆりな)さんが通話したというタイミングで?
橋本 : バラバラに青木さんにLINEを送って、同じ質問だったから3人で通話しようってなって、「新メンバーを入れるメリットって何なんですか?」っていう問いかけをふたりでして。
──入れるメリットは何だと言われたんですか?
橋本 : とりあえず「嫌だ」っていうのを伝えたんですよ。そしたら「今年の周年ライヴに大きいところを設定して、5人でそれを達成できるのか」って言われたときに、「たしかに無理かもしれないな」って思って。青木さんもいろんなことを考えたうえで、私たちに一番速攻で効果があるのが新メンバーだって伝えられて。新メンバーが入ってきたら、メンバーも焦ってレベルが上がるし。たしかに「5人で無理」って自分で思っちゃったから、そうなったら解散か、新メンバーを入れて継続かしかなくなっちゃうよな、っていうのはすごいわかりました。
──完全にスッキリするまでどれぐらい時間がかかったんですか?
橋本 : 発表しちゃったら「もういいやって」(笑)。引き戻せないし、別にいい子が来なかったら白キャンに入らないっていうのも知ってるし、「まあ、いいか」って。
──それはポジティヴとネガティヴ、どっちだと思います?
橋本 : けっこうポジティヴだと思います。「まあ、そのうち大丈夫になるか」っていう。
──橋本さんって白キャンのことを俯瞰して見るじゃないですか。
橋本 : よく言われる(笑)。
──橋本さんの考える白キャンっぽさって、どういうものでしょう?
橋本 : 人生がうまくいかない人たちが集まって、それでも成功できるんだぞ、っていうのを見せられたらいいのかなっていうのはあるんですけど。
──青木さんは、幕張メッセのホールでやりたいという目標をメンバーに話してますよね。
橋本 : 「やりたい」ってより、やるんだろうなって思います。メンバーが誰であれやるんだろうなって思うから、自分がいられたらいいなと思うんですけど、自分がいるうちに行けるのかわからないし、でも白キャン自体は行くんだろうなって思います。青木さん、できないことを言わなそう。
──自分がいるかわからない、というのは?
橋本 : 自分も急にオーディションを見つけて「入りたい」って思って入ったし、白キャンってけっこう衝動的なメンバーが多いと思うから。衝動で入るとか、衝動で辞めるとか、全然ありうる話だと思ってて。自分ももしかしたら急に「辞めます」ってなるかもしれないし、「ここで達成したいな」と思ったらずっといるかもしれないし。
アイドルを通してカウンセラーっぽいことができたら
──白キャンにずっと残るとしたら、自分の変えていきたい部分ってありますか?
橋本 : 人に意見とかを言うのが得意じゃなくて、一番得意そうなのに(笑)。頭の回転が速いってよく言われるじゃないですか? でも、伝えようと思って言葉にしようとした途端に、考えが変わったりするんですよ。だから「病んでる? 話聞くよ」って言われて話を聞いてもらってる途中に、「あっ、そうでもないわ」ってなっちゃう人だから、伝えた相手に伝わらない。
──橋本さんの話は話半分で聞かないといけない?
橋本 : 話しているときに意見が変わることもあるよ、っていう前提で聞いてほしい(笑)。
──でも、そんな感じだからオーディションについて長く病まずに済んだのかもしれないですね。新メンバーはどんな人が入ってくるといいと思いますか?
橋本 : まとめるのを手伝ってくれる人。あと、人生ぐしゃぐしゃの人。
──そんなにまとめないといけないほど、おかしなグループなんですか?
橋本 : 一応バランサーは必要だと思う。みんなメンタルが負に行ったらガーって行くと思うんで、ちょっと明るい子もいたほうがいいのかなって。
──もう一個の「人生ぐしゃぐしゃの人」って何ですか?
橋本 : やっぱりふさわしいかなって(笑)。なにもいままで成し遂げてこなかったけど、グループで素晴らしい何かを成し遂げたいと思ってる人がいたら、ちょうどいい場所かな。
──「なにか成し遂げたい」という野心的な部分があったほうがいい?
橋本 : それがないと、ついてこれないと思います。
──橋本さん、自分は野心的じゃないことを前提にしゃべってません?
橋本 : そこにいれたらいいし、自分も人生で「これは成功だよね」って言えることってないから、なにか成し遂げられるんだったら行きたいなって気持ちがあるんですけど、「私は本当にいるのかな?」っていう考えもあって。目標とか立てるのがすごい苦手なんですよ。
──そうなると、今後の橋本さんの目標ってなにかあります?
橋本 : 目標って言われるとわかんないかもしれない。有名になるとかじゃなくて、失礼な言い方になっちゃうけど、廃れた人を救えたらいいなと思います。
──廃れた人?
橋本 : 白キャンに入る前は、私もけっこう廃れてたんですよ。「別に生きてても死んでてもどっちでもいいな」みたいな。「まぁ悲しむ人がいるから」ぐらいのテンション感でバイトしたり、好きな舞台に出たりしてて、別にすっごい全部がやりたかったことかって言ったら、そうじゃなくて。だから自分は「死んでも生きててもどっちでもいい」っていう人の気持ちもわかるし。自分もけっこうADHDみたいな一面があったんですよ。だからそういう人の気持ちもわかるし、アイドルを通してカウンセラーっぽいことができたらいいなと思う。白キャンの曲を私たちがちゃんと届けられれば、死ぬのをやめたりすると思う。なんかそういう存在にはなりたい。「死にたい」っていう感じになってるときって、五感がすごい研ぎ澄まされるんで、その聴覚にちょっと行きたいな(笑)。
──大きい会場とか、そういうイメージではないんですね。
橋本 : そうなったら多くの人を救えるんだろうなとは思うけど、表面的にアイドルが好きな人に刺さりたいわけではなくて。かわいいだけじゃないアイドルがいい。
──いま、その目標に対してどれぐらいだと思います?
橋本 : 全然だと思います。自分がファンを病ませてしまったりもするし、私と「アイドル」っていう捉え方が違うから恋愛的に見たりして病んじゃうっていうのもあって。でも、病ませすぎてしまうのは自分の問題だし、なんかそういう人にも優しくできたらいいなと思うんですが、めちゃくちゃ難しい(笑)。そう捉えてしまうのって、心の拠り所を求めてるからだし、なにかがあった人だから、深層心理まで行けたらいいなって。目が笑えてない人が特典会に来て、明るい感じでしゃべってるけど、「絶対この人、元気ないわ」って思ったりして「大丈夫?」って聞いたら「本当は大丈夫じゃないんだよね」っていうことがあるから、そういうのに気づける人になりたいなって思います。
編集 : 平石結香莉、西田健
LIVE INFORMATION
〈Be the IDOL〉
2021年7月21日(水)東京都 TSUTAYA O-nest
2021年7月22日(木・祝)東京都 TSUTAYA O-crest
2021年7月23日(金・祝)東京都 TSUTAYA O-WEST
2021年7月24日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
2021年7月25日(日)東京都 duo MUSIC EXCHANGE
PROFILE:真っ白なキャンバス
2017年9月結成。2020年3月にキングレコードよりメジャーデビュー。以降、Zepp DiverCityでのワンマンライブや1st Major アルバム『共創』の発売などを行い、武道館や幕張イベントホールでのワンマンライブを目指し、活動中。
【公式HP】
https://shirokyan.com/
【公式Twitter】
https://twitter.com/info_shirokyan
【公式Instagram】
https://www.instagram.com/shirokyan_staff/