2024年4月~6月(第2四半期)は、調査対象の地域において新築マンションの募集賃料は堅調に推移した。前期に引き続き、大型住戸の需要が特に強い東京都区部と大阪市は、どの面積帯も25m2帯と同水準かそれ以上の募集賃料となった。面積帯の違いによる坪あたり賃料の差は前期より縮小した。

 より良い労働条件を提示できる都市部に人口が偏重する傾向は、全国的に続いている。特に東京都区部の有効求人倍率は全国と比べ突出しており、人口流入は高い水準で推移し、潜在需要の高い状況が継続している。

 一方、供給面でみても、すぐに賃料が下がるような環境にはない。依然として、建築業界の労働力は不足し、建材価格は高騰している。2024年4月からは新しく、「建築物の省エネ性能表示制度」がスタート。事業者が新築建築物を販売・賃貸する際に、省エネ性能ラベルの表示が必要となった。さらに2025年4月からは、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務付けられる。こうした低炭素関連の動きからも、建築コストの下落は当面考えにくい。

 これらの動きは、持ち家価格の高騰にも影響を及ぼしている。特に、首都圏の新築分譲マンション価格は引き続き高止まりしており、持ち家に移行したくてもできない賃貸世帯は増加し続けている。調査対象の地域においては2024年第2四半期以降も、賃料は底堅く推移する見通しだ。


■新築マンションの坪賃料(2024年第2四半期)
札幌市 都区部 横浜市 名古屋市 大阪市 福岡市
新築マンション
坪賃料
(円/坪)
25m2
坪単価
8,050 16,763 12,869 9,679 10,529 9,486
40m2
坪単価
6,455 16,269 11,808 8,868 10,719 8,253
55m2
坪単価
6,943 16,142 12,240 8,638 10,909 8,731
70m2
坪単価
7,087 16,413 12,679 8,633 11,059 8,467
2024年
第2四半期
前年同期比
25m2 -1.4% 4.6% 3.0% 1.5% 2.5% 2.0%
40m2 2.9% 5.1% 0.7% 2.9% 5.9% 4.8%
55m2 14.0% 4.9% 8.9% 2.3% 7.2% 9.5%
70m2 15.5% 3.6% 11.4% -0.9% 3.6% 10.0%
(資料:スタイルアクト
■新築マンションの25m2における坪単価の前年同期比
札幌市 都区部 横浜市 名古屋市 大阪市 福岡市
2019年
(2018年比)
第1四半期 8.2% 5.8% 3.0% 1.7% 2.2% 0.9%
第2四半期 0.9% 2.4% 0.7% 0.6% 0.7% 1.2%
第3四半期 1.9% 1.2% 1.2% 0.3% -0.9% -0.6%
第4四半期 4.7% 2.0% 2.1% 0.5% -0.7% -1.6%
2020年
(2019年比)
第1四半期 4.8% 1.8% 1.6% 0.4% -1.0% -1.6%
第2四半期 4.0% 1.7% 2.1% 0.3% -0.3% -1.5%
第3四半期 2.5% 1.8% 2.0% 1.0% 1.5% 2.2%
第4四半期 -4.5% -1.2% -0.7% 0.0% 1.2% 5.4%
2021年
(2020年比)
第1四半期 -4.5% -2.3% -1.5% -0.9% 0.8% 4.6%
第2四半期 -3.4% -1.7% -1.8% -1.1% 0.5% 4.4%
第3四半期 -3.9% -1.8% -0.8% -1.4% 0.1% 2.7% 第4四半期 -7.8% -0.7% -0.2% -0.9% 0.3% 2.0%
2022年
(2021年比)
第1四半期 -1.3% -0.4% 0.5% -0.9% 0.5% 1.7%
第2四半期 -2.0% -0.3% 1.2% -1.2% 0.3% 1.8% 第3四半期 0.2% 0.8% 0.7% -0.3% 0.4% 3.3% 第4四半期 8.3% 2.1% 0.4% -0.8% 0.2% 2.6%
2023年
(2022年比)
第1四半期 1.8% 3.2% 0.2% 0.6% 0.7% 2.3%
第2四半期 2.6% 3.5% 0.7% 0.9% 1.1% 3.8% 第3四半期 1.4% 3.7% 1.3% 0.5% 1.5% 3.9% 第4四半期 0.9% 4.1% 2.6% 1.1% 1.8% 2.2%
2024年
(2023年比)
第1四半期 -0.7% 3.9% 3.2% 1.5% 2.3% 3.5%
第2四半期 -1.4% 4.6% 3.0% 1.5% 2.5% 2.0%
参考:
2024年
(2019年比)
第2四半期 -0.4% 7.8% 5.3% 0.4% 4.1% 10.9%
(資料:スタイルアクト
調査概要
  • 調査方法:
    調査期間における各エリアの新築物件で各面積(25m2、40m2、55m2、70m2)に補正したマンションの坪当たり募集賃料を算出

  • 調査対象エリア:
  • 札幌市(中央区、北区)
  • 東京都区部(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、豊島区)
  • 横浜市(鶴見区、神奈川区、西区、中区、港北区)
  • 名古屋市(千種区、東区、中村区、中区、昭和区)
  • 大阪市(都島区、福島区、西区、天王寺区、浪速区、淀川区、北区、中央区)
  • 福岡市(博多区、中央区、南区、早良区)

  • 調査期間:
    2018年第1四半期~2024年第2四半期

澤邦夫、小田桐知誠(スタイルアクト)