繁忙期を迎えた2024年1月~3月(第1四半期)の新築マンションの募集賃料は、各社強気の値付け姿勢となった。坪賃料、前年同期比ともに、全般的な上昇基調を継続している。

 これまで面積帯が大きくなればなるほど、坪当たり募集賃料が下がっていたが、今期は、特に大型住戸の需要が強い東京都区部と大阪市で、どの面積帯も25m2帯と同水準かそれ以上の募集賃料となった。

 要因の一つとして、インバウンド増加による観光業や飲食・宿泊業の活性化がある。インバウンド消費が増えている都心部では、人手不足に伴う賃金の上昇も見えてきた。そのため、賃金がより高くなっている都心部への人口流入が集中している。2024年以降もこの傾向は変わらず、全国的な都心回帰の動きは継続する見通しだ。

 このほか建設業界では、人手不足による工期の長期化の改善は難しい状況が続いている。さらに2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された。長時間労働の常態化などを理由に設けられた5年の猶予期間が2024年3月末で終了し、罰則付きの残業規制が適用されることになる。こうしたことから当面、建設費の高騰は続き、賃料にも影響を及ぼすと考えられる。

 また、都心部は持ち家価格が高く、賃貸住宅に住む世帯数の割合が多いこともあり、調査対象の地域においては、2024年第2四半期以降も需給はひっ迫すると予想される。

■新築マンションの坪賃料(2024年第1四半期)
札幌市 都区部 横浜市 名古屋市 大阪市 福岡市
新築マンション
坪賃料
(円/坪)
25m2
坪単価
8,144 16,599 12,745 9,661 10,465 9,599
40m2
坪単価
6,381 16,054 11,600 8,833 10,481 8,168
55m2
坪単価
6,906 16,025 11,339 8,703 10,546 8,731
70m2
坪単価
6,971 16,492 12,222 8,667 10,880 8,469
2024年
第1四半期
前年同期比
25m2 -0.7% 3.9% 3.2% 1.5% 2.3% 3.5%
40m2 2.3% 3.7% 0.9% 2.7% 3.8% 4.6%
55m2 13.3% 4.5% 3.3% 4.4% 4.6% 12.7%
70m2 14.3% 4.2% 7.5% 0.2% 1.6% 7.3%
(資料:スタイルアクト
■新築マンションの25m2における坪単価の前年同期比
札幌市 都区部 横浜市 名古屋市 大阪市 福岡市
2019年
(2018年比)
第1四半期 8.2% 5.8% 3.0% 1.7% 2.2% 0.9%
第2四半期 0.9% 2.4% 0.7% 0.6% 0.7% 1.2%
第3四半期 1.9% 1.2% 1.2% 0.3% -0.9% -0.6%
第4四半期 4.7% 2.0% 2.1% 0.5% -0.7% -1.6%
2020年
(2019年比)
第1四半期 4.8% 1.8% 1.6% 0.4% -1.0% -1.6%
第2四半期 4.0% 1.7% 2.1% 0.3% -0.3% -1.5%
第3四半期 2.5% 1.8% 2.0% 1.0% 1.5% 2.2%
第4四半期 -4.5% -1.2% -0.7% 0.0% 1.2% 5.4%
2021年
(2020年比)
第1四半期 -4.5% -2.3% -1.5% -0.9% 0.8% 4.6%
第2四半期 -3.4% -1.7% -1.8% -1.1% 0.5% 4.4%
第3四半期 -3.9% -1.8% -0.8% -1.4% 0.1% 2.7% 第4四半期 -7.8% -0.7% -0.2% -0.9% 0.3% 2.0%
2022年
(2021年比)
第1四半期 -1.3% -0.4% 0.5% -0.9% 0.5% 1.7%
第2四半期 -2.0% -0.3% 1.2% -1.2% 0.3% 1.8% 第3四半期 0.2% 0.8% 0.7% -0.3% 0.4% 3.3% 第4四半期 8.3% 2.1% 0.4% -0.8% 0.2% 2.6%
2023年
(2022年比)
第1四半期 1.8% 3.2% 0.2% 0.6% 0.7% 2.3%
第2四半期 2.6% 3.5% 0.7% 0.9% 1.1% 3.8% 第3四半期 1.4% 3.7% 1.3% 0.5% 1.5% 3.9% 第4四半期 0.9% 4.1% 2.6% 1.1% 1.8% 2.2%
2024年
(2023年比)
第1四半期 -0.7% 3.9% 3.2% 1.5% 2.3% 3.5%
参考:
2024年
(2019年比)
第1四半期 -0.2% 6.2% 4.1% 0.7% 3.3% 10.9%
(資料:スタイルアクト
調査概要
  • 調査方法:
    調査期間における各エリアの新築物件で各面積(25m2、40m2、55m2、70m2)に補正したマンションの坪当たり募集賃料を算出

  • 調査対象エリア:
  • 札幌市(中央区、北区)
  • 東京都区部(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、豊島区)
  • 横浜市(鶴見区、神奈川区、西区、中区、港北区)
  • 名古屋市(千種区、東区、中村区、中区、昭和区)
  • 大阪市(都島区、福島区、西区、天王寺区、浪速区、淀川区、北区、中央区)
  • 福岡市(博多区、中央区、南区、早良区)

  • 調査期間:
    2018年第1四半期~2024年第1四半期

澤邦夫、小田桐知誠(スタイルアクト)