日経不動産マーケット情報は、ビーエーシー・アーバンプロジェクト(本社:渋谷区)の協力を得て、東京・大阪の主要商業エリアにおける2023年第4四半期(10月~12月)の店舗賃料調査を公表した。渋谷と心斎橋は、1階の募集賃料が2009年第1四半期以降の15年で過去最高額を更新。渋谷では募集件数も減少傾向にある。
フロア区分 | 銀座 | 表参道 | 新宿 | 渋谷 | 心斎橋 | |
---|---|---|---|---|---|---|
募集賃料 (円/坪) |
全フロア | 39,314 | 43,837 | 34,087 | 42,015 | 23,763 |
1F | 70,870 | 57,632 | 45,367 | 63,203 | 41,823 | |
1F以外 | 34,256 | 37,420 | 32,216 | 35,847 | 17,760 | |
募集件数 | 全フロア | 406 | 463 | 166 | 148 | 363 |
1F | 52 | 138 | 23 | 30 | 84 | |
1F以外 | 354 | 325 | 143 | 118 | 279 |
2023年下期以降、コロナ禍前の2019年時点の売り上げまで回復した商業施設が多くみられるようになってきた。飲食店は居酒屋など一部の夜型業態で弱めのトレンドが続くものの、例えば都心部の専門店ショッピングセンター(SC)では衣料品より飲食店の方が顕著な回復がみられるなど、勢いが戻っている。
2023年の訪日外国人数は約2506万人と、2019年比78.6%まで回復した。ラグジュアリーブランドや観光地の商業施設、サブカルチャーなど日本発のコンテンツを扱う店舗が恩恵を受けている。2023年の全国百貨店売上高(既存店ベース)は2019年比3%減であったが、免税売上高は約3500億円と過去最高額を記録した。ラグジュアリーブランドを抱える百貨店や専門店SCは、2024年に入っても好調に推移するとみられる。
銀座や表参道などのブランドストリートは依然として高い賃料を維持している。インバウンドに強い心斎橋や京都、福岡などでも賃料マーケットは上向き傾向となっている。2023年第4四半期の1階の募集賃料は、銀座を除いて2019年を上回った。銀座はややダウンしたものの、5エリアのなかでは最も高い水準を維持し続けている。
路面店は募集件数の減少など需給バランスを取り戻す一方で、1階以外の募集件数は高止まりが続いている。飲食店も既存店ベースでは売上回復傾向であるが、新規出店はいまだ少ないと推測される。
銀座では、虎屋銀座ビルにラグジュアリーブランド「バレンシアガ」の出店が発表されるなど、今後もブランド店の新規出店・移転が控えており、賃料マーケットは当面高水準を維持すると想定される。
心斎橋でもブランドストリートである御堂筋は、従来の相場観を超える成約も聞かれる。一方で、心斎橋筋商店街はドラッグストアの出店が戻っているが、賃料面ではコロナ以前のような勢いはない。
渋谷は外国人の訪問率で新宿を抜き首位となった。空室も改善されつつあり、カルチャー発信の街として活気を取り戻している。
表参道・原宿エリアでは、一時空室が増加した明治通りやキャットストリートで空室解消が進み、回復基調にある。古着やシューズなどストリートカジュアルの業態やコスメを扱う店舗などが牽引している。