大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(喫茶とgallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

人生の梅干し


許容量を超えて仕事をすることが続いてたこの数か月、私の一週間の目覚ましはCreepy Nutsが主題歌を歌うアニメ「ダンダダン」。毎週丁度気持ちの疲れのピークが来る朝録画を見て、気持ちを支えてもらった。

分野を区切らず、表現のあらゆる分野でホットなものが好き。だからここ数年、漫画やアニメ界が盛り上がりに盛り上がっていて、とても嬉しい。アニメーション技術の展開は革新的で、「ダンダダン」は色彩設計さんの名がタイトルに大きく出ている通り、すばらしかった。

いつもワクワクしたい。森の中で穏やかな生活を望む夫の希望に付き合ってここにきたものの、私にとっては図書館もレコやも本屋も遠すぎ。コロナ以降は配信サービスが進み、インターネットの恩恵を受ける。友達はそれなりに増えたけど、会うのも一苦労だから、手直に摂取できる漫画、アニメ、音楽、ラジオが心の友だった。

自然の美しさが好きだし、現代美術にも食傷気味で移住してきたから、美と言うことに関しては、研ぎ澄まされた体験ができて感謝しているけど、人が作ったものを見たい気持ちは、それで埋まることはないんだと知った。今を生きている人の表現が、数々の名作を越えてゆくところを見るのは何にも代えがたい喜び。

 


一方僻地のおかげで、古典にも多く触れることができた。古典はやっぱりすごい。特に児童文学の名作は、人生を支えてくれる芳醇な世界。息子のおかげで、自分ひとりでは読めない名作もたくさん読めた。

『飛ぶ教室』(ケストナー、高橋健二/訳、岩波書店)を今読んでいる。ケストナーの代表作だけど、『ふたりのロッテ』や『点子ちゃんとアントン』よりとっつきにくい感じがあり、長らく出だしでストップしていた。

中高一貫の男子校に通い、寮に住むマルチンが、友人たちと過ごすクリスマスまでの日々を描く。マルチンは成績優秀で絵がうまく、家は稼ぎの少ない給費生だ。誰かさんが思い浮かび、すっかり感情移入して、ラストを読んだ蔦屋のスタバで号泣してしまった。

1回目は講談社青い鳥文庫で読んだのだけど、2回目を次男と岩波書店のハードカバーで今読んでいる。あらすじを伝え、まるでお兄ちゃんみたいだね、というと、たちまち気持ちが傾いて読んで読んで、とリクエスト。挿絵と訳が変わると雰囲気がだいぶ変わるのことを味わいながら再読。

男の子たちのけんかの場面や先生へのいたずらでは、息子2大喜び。登場人物の名前が似てる子が2人いるので、マルチンはまるちゃん、と読み替えたり、マチアスはジャイアンみたいだね、と想像しやすいようにしてみたり。

本当はもちろんそのまま読んだ方がいいけれど、今の子供たちが入り込むのが難しい時は、ちょっとした工夫でとにかく入っていってもらえるように。心温まる名作だった。

4年間私の氷河期を支えてくれたクリーピー、今年はとうとう紅白、レコたい。「土産話」の宣言通り。努力を重ねてきた人が目もくらむようなスポットライトを浴びている様子は胸がすく。

ここ数年、もう紅白見るのはやめようかと思うくらい、この時期クリーピーナッツが選にもれることに気持ちを落としていたけど、今年は年末まで嬉しい忙しさ。今日はNHKスペシャル。

個性的なふたりが、「たりないふたり」のままで世界から注目される。こんな夢のある話あるかしら。そのままでいい、自分のままいこう、そう背中を押してもらえる人たちが、まだまだ続いてゆくだろう。

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