豪鬼メモ

MT車練習中

ブロンプトンのホイールをCospaiiに換装

ブロンプトンのホイールをCospaiiのものに換装した。ブロンプトンは仕様が特殊なので選定に慎重を要した。結果的には326.9gの軽量化と惰性空転時間1.72倍を達成でき、乗ればすぐ違いを体感できる程度に走行性能が向上した。

製品選定

ブロンプトンを2016年3月に購入して以来8年以上乗っているが、ホイールのハブがゴリゴリして回転が渋くなってきた。通勤やら旅やらトレーニングやらでもう5万kmくらいは乗っているので、さもありなんだ。ハブがカップアンドコーン方式である前輪はグリスアップできるが、ハブがシールドベアリング方式である後輪はメンテできない。しかもフリーハブボディが固着して外れなくなってしまい、ハブのメンテもできなくなった。ボルトやシャフトも錆びているし、もうとっくに替え時だった。

純正のホイールを調達するのが最も率直な方法だが、純正ホイールの値段はかなり高い。前輪が15400円、後輪が36300円で、合計51700円なり。なので、サードパーティ製のものを探すことにした。そうなると、互換性について慎重に検討しなければならない。純正ホイールのエンド幅(ホイールを挟むフレームの左右の間隔)は、フロントが74mm、リアが112mmだ。多くの自転車のリアのエンド幅は130mmなので、ブロンプトンのホイールは16インチ(WO規格の349C)というマイナーな規格の中でもさらに特殊な存在だ。ほぼブロンプトン専用と言っていい。なお、純正ホイールのリム幅は内幅が18mmで外幅が23mmだ。



私が愛用するタイヤであるシュワルベワンとシュワルベマラソンレーサーは双方も16×1-1/3(35-345)という規格だ。これは、タイヤ外径16インチかつ幅1+1/3=1.33インチくらいで、タイヤ幅3.5cmかつリム外径34.5cmという意味だ。ブロンプトン用を謳っているタイヤなら345Cサイズであることは自明だが、リムの幅はホイールによってまちまちなので、タイヤとの相性問題が発生する。リム内幅の1.4から2.4倍が適正なタイヤ幅であるという経験則が流通しているが、それに照らすとワンやマラソンレーサーに適正なリム内幅は14.55mmから24.94mmということになる。

純正ホイールのリム外幅は23mmで、リム内幅は18mmだ。このリム内幅はマラソンレーサーを装着するとまさに最適だ。適正範囲内でも、リム幅が狭いほどタイヤ断面は丸っこく膨らんで、リム幅が広いほど蒲鉾型になって高さも幅も小さくなる。タイヤが膨らんでいる方が柔らかい乗り心地になるが、カーブで横方向の力がかかった際の変形が大きくなり、不安定になる。膨らんでいるほどに空気抵抗も大きくなる。逆に蒲鉾型の場合、同じ空気圧なら乗り心地は硬くなるが、空気圧を下げれば同等の乗り心地になる。それでいて、カーブで横方向の力がかかった際の変形は小さいので、安定性は高い。空気抵抗も低くなる。ならばリム内幅は広ければ広い方が良いという話になりそうだが、そうするとリムが重くなる。よって、重量と利便性のバランスを取ってリム幅の仕様が決められることになる。

後輪のフリーハブにスプロケットを取り付ける方式は、シマノの9スプライン方式が主流だ。ブロンプトン純正もそうなのだが、スプロケットの留め具がサークリップなのが特殊だ。この方式では、全てのスプロケットをスプラインに貫通させる必要があるため、留め具にロックリングを使うカセットスプロケットの唾付きトップスプロケットが装着できない。私は11Tを使いたいのだが、11Tは強度の都合で唾付きのものしか流通していない。よって、ロックリング方式のものが私には望ましい。これが純正ではなくサードパーティ製のホイールにしようと思った理由の一つだ。ロックリング方式だとエンド幅一杯にスプロケットを並べられるので、3速以上の多段化もしやすい。

バルブ穴は細めの仏式用のものと太めの米式用のものがあるが、私は米式のチューブを既に多く持っているので、米式用が望ましい。私が持っている空気入れはフロアポンプも携帯ポンプも仏式と米式の両方に対応しているが、米式の方がバルブが頑丈なので個人的には好きだ。

せっかくなので超軽量のカーボンホイールも検討したのだが、思いとどまった。まず、カーボンだと値段が高すぎる。10万円とか14万円とか出す気にはなれない。そして、カーボンは硬度が低いのでリムブレーキだと摩耗が速いらしい。ブロンプトンのような小径車だとさらに摩耗が早くなり、また発熱による問題も出やすい。私は旅で峠も走破するので、長い下り坂でのブレーキングの発熱は無視できない問題だ。よって、ホイールは普通に鉄製かアルミ製のものが良さそうだ。

AmazonやAliExpressで入手できる製品を調査したところ、CospaiiとJKlapin(Litepro)とAceoffixとSilverockのものが要求に適っていた。もっと高い製品なら他にもいくつかあったが、手頃なのはこれくらいだった。





それらの仕様をまとめると以下のような感じだ。いずれもロックリング方式でベアリング内蔵だ。最安でも2万円もかかるのだが、それでも純正よりはかなり安い。ていうかブロンプトンのパーツ高過ぎ。3万円あったらママチャリ1台買ってお釣りが来る。

価格 前後重量合計 リム内幅 バルブ
Cospaii 30800円(28800円+送料2000円) 910g 16.0mm 米式
JKLapin 18300円(18300円+送料0円) 1070g 16.0mm 米式
Aceoffix 26905円(19484円+送料7421円) 990g 17.5mm 米式
Silverock 33213円(33213円+送料0円) 890g 12.5mm 仏式
Silverock 48497円(48497円+送料0円) 1040g 19.0mm 仏式

価格ではJKLapinが最善で、重量ではSilverockの1番目のが最善で、リム幅ではSilverockの2番目のが最善で、AceoffixとCospaiiはそれぞれ重量とリム幅に利点がある。特に価格のJKLapinとバランスのCospaiiで悩んだのだが、結論としてはCospaiiにした。JKLapinはラチェット音がうるさいらしいのと、重いのが気になった。Cospaiiは、名前はダサいが、日本のメーカーなので、もし不具合等があった場合の交渉もしやすそうだ。また、CospaiiはMintbikeなるブロンプトンクローンも作っているので、それなりの数の顧客のフィードバックを得て実用になる部品を作っていそうな気がする。リムハイトがちょっと高めのセミディープになっているので、空力と剛性と放熱性が良さげなのも美点だ。30800円は痛いが、それが最善ならば躊躇しても仕方がない。

取り付けと測定

ポチって2日後に製品が到着した。早い。当然だが、ちゃんとエンド幅は74mmおよび112mmで、リアハブは9スプラインだ。振れ取りもちゃんとされていて、歪みは全く視認できない。ホイールには最初からリムテープが巻かれていたが、これは使わないので外した。ロックリングと工具も別に注文しておいたのが届いていたので、早速組み立てを始めた。



まずは、純正で使っていたVeloplugsを新しいホイールに移植した。これをつけるとリムテープを省略できて、軽量化になるし、耐久性もリムテープの比じゃなく高い。本当は赤色でなく黄色のVeloplugsの方が穴のサイズに合っているのだが、間違って買ったのを接着剤で無理やりつけている。

後輪はスプロケットの移植も必要になる。2速の場合、7.42mm分(シマノ11速用の2.14mmスペーサを3枚と1mmスペーサを1枚)のスペーサを入れてから、スプロケットガードをつけて、ローギアとスペーサ付きトップギアを並べて、最後にロックリングで締めれば良い。トップギアは9速用、ローギアは11速のものを使って丁度良かったが、おそらく異なる組み合わせでもいける。このハブならおそらく最大6段くらいのギアを入れられるが、現状のシフターとチェーンでは対応できないので、とりあえずは2段で運用する。

Cospaiiのホイールはハブを貫通するスルーアクスルで車体に固定する方式で、それは剛性や強度に利点があると言われている。装着の際に前輪はスルーアクスルで留めるだけでよいので簡単だったが、後輪は手間取った。というのも、ディレイラーテンショナーの固定方法が変わるからだ。純正だとホイール軸から左右に突き出たネジ溝にボルトを締めてホイールを固定した上で、右側のボルトにはディレイラーテンショナーを上から被せて、さらにその上からボルトを締めてディレイラーテンショナーを固定する。スルーアクスルの場合、ホイール軸から左右に突き出たネジ溝には固定力が全くないので、そこにボルトをつけて締め込んでもなめてしまうだけだ。そこで、左側はボルトをつけずにスルーアクスルの固定具だけにして、右側はホイール軸のネジ溝に軽くボルトを通すだけで締め込まずにおいて、その上にディレイラーテンショナーを被せて、その上にスルーアクスルの固定具をつけて締め込む。すなわち、ホイールとディレイラーテンショナーを一度にスルーアクスルの張力だけで固定することになる。固定力がちょっと心配になる方法だが、それ以外にやりようがない。途中の六角ボルトはむしろ締め込みの邪魔になるので、敢えてネジ溝を潰してしまった。本来はボルトと外径が同じワッシャーを使うべきだろう。

スルーアクスルの締め込みは4mmのアーレンキーで行う。よって、ホイールの付け外しに15mm六角ボルトを回すためのスパナは不要になる。これは、パンク修理キットから15mmスパナを取り除けるということを意味する。ロングライドにはパンク修理キットを携帯することが多いが、15mmスパナの重量が地味に重いのが気になっていた。スルーアクスル化によって実質の乗車重量が15mmスパナ分だけ減るのは嬉しいことだ。

外した純正ホイールと新しいCospaiiのホイールの重量を実測で比較する。双方ともVeloplugsもリムテープも付けていない状態だ。実測だと純正は前輪569.0gで後輪702.9gの合計1271.9gで、Cospaiiは前輪396.5で後輪548.5gの合計945.0gだ。つまり326.9gも軽量化ができたことになる。Tライン純正のスーパーライトホイールは前後合計で950gらしいので、それよりも軽くなっている。なお、車重と登坂抵抗への影響を考えるなら、スルーアクスルは留め具込みで前輪が29.8gで後輪が36.5gなので、その合計と外した六角ボルト4個分の差を軽量化分から差し引いて考えるべきだ。





純正とCospaiiでハブの重量はほぼ同じで、重量の差は主にリムの違いからきていると仮定するなら、加減速にかかる慣性力の差は326.9gの2倍である653.8gになる。回転速度の変動と車体の推進速度の変動の両方に慣性力がかかるからだ。水平方向の加速性能に限定して言えば、フレームを653.8g軽量化したのに匹敵すると考えると、それは大したものだ。実際にはリムはタイヤよりも内側にあるので慣性力2倍というのは言い過ぎなのだが、加速性能に体感できる違いがあるのは本当だ。

新しいホイールを装着した状態がこれだ。黒のリムが引き締まって見える。リムについていたCospaiiのロゴはシールなので剥がした。本当はシュワルベワンも黒が欲しかったのだが、たまたまオクで安かったのでタンウォールにしてしまった。でもちょっと汚れて渋い感じが悪くないと思い始めてきている。ワイヤービードのマラソンレーサーをつければタイヤも黒いままだ。そのために絶番になったワイヤビード版マラソンレーサーをオクで探して4本も眠らせている。

換装前と換装後の写真を並べてみる。セミディープだと速そうで格好いい。純正ホイールもブラックエディションなのでリムの内側半分とスポークは黒いのだが、Cospaiiは全部が黒いのが良い。私としては、できるだけ黒のパーツを増やして、カワサキのエリミネーター400っぽくしたいのだ。



古い純正ホイールの回り方と、新しいCospaiiのホイールの回り方を比べてみよう。タイヤを装着した状態で全力で撫でて回してみて、停止するまでの時間を5回ずつ測った。負荷がない状態での抵抗と乗車荷重をかけた状態での抵抗は異なるが、傾向を見る分には参考になる。この結果から明らかなように、Cospaiiの方が明確に抵抗が少ない。純正では車輪の回転と同時にゴロゴロという音が聞こえるが、Cospaiiではそれがない。手でペダルを漕いでホイールを空転させただけでも以前より軽く感じる。

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1 2 3 4 5 平均
古い純正の前輪 104 105 108 106 98 104.2
古い純正の後輪 41 45 46 43 44 43.8
Cospaiiの前輪 163 168 168 167 165 166.2
Cospaiiの後輪 74 77 78 75 77 76.2

惰性空転時間は前輪で1.59倍、後輪で1.72倍にもなっている。純正ホイールの前輪はハブ内にボールベアリングを裸で入れるカップアンドコーン方式なので自分でグリスアップしてメンテできていたが、後輪はシールドベアリングなのでラチェット部分しかグリスアップできなかった。つまり、グリスアップでメンテしていたカンプアンドコーンよりも、そしてグリスアップできなかったシールドベアリングよりも、Cospaiiのシールドベアリングの抵抗は遥かに低いということだ。8年前の部品と比べているので当然の結果とも言えるが、期待以上に円滑に回るようになったので、Cospaiiは良い製品だと言える。名前がダサいとか言って悪かった。

上記の後輪の計測ではホイールとスプロケットが同期して回転していて、フリーハブは作動していなかった。ゆえにラチェット音もしなかった。以下に示すように、スプロケットにチェーンをかけた状態で回すとフリーハブが作動して、ラチェット音も聞こえるようになる。そうすると18秒で停止するので、フリーハブの抵抗は無視できないことが分かる。ゆえに、惰性で走行する際にもラチェット音がしない程度にペダルを回転させた方が速度が落ちにくい。
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純正に比べるとCospaiiのラチェット音は大きい。私はラチェット音が小さい方が好みなので、純正ですらフリーボディの中のバネを弱いものに変えてラチェット音を小さくしていた。Cospaiiでもいずれ同様の改造をするかもしれないが。しばらくはこのまま使おう。なお、グリスを多めに封入してラチェット音の低減を図る人がいるが、それは良い方法ではない。多すぎるグリスは抵抗を増やすし、早晩溢れてきて、音が元に戻るだけだ。

リム内幅が狭くなることでタイヤの形がどう変わるか比較してみた。双方とも空気圧90psiにしているが、純正(18mm)よりもCospaii(16mm)の方が若干ながら大きく膨れている。純正はタイヤのリムからの高さは31.5mmでタイヤの左右の幅は34mmだったが、Cospaiiでは高さ32mmで幅35mmになった。フェンダーとのクリアランスに問題が出るかもと懸念していたが、高さの増加が0.5mmで済んだので大丈夫だった。



ホイールとタイヤの形状が変わると空力性能も多少変わるらしい。ディープリム化はスポークが短くなることで空力抵抗を低減させる効果があるとされる。ホイールの径に関わらず走行時のリムの上端の対地速度は走行速度の2倍になり、その速度でスポークが空気を攪拌するが、ディープリムでスポークの径を減らすとそれを緩和できる。ロードバイクの場合はディープリム化はかなりの効果があるらしいのだが、それはホイールの径が大きいからというのもあるが、高速で走るからというのもある。私はブロンプトンではせいぜい30km/hくらいしか出さないので空気抵抗は比較的小さく、その低減の効果も小さいだろう。それにこのセミディープくらいの高さではスポークの径も大して変わらないし、タイヤの幅が増えたことによる抵抗の増加もあるので、全体的な空力向上の効果はほぼないと推測する。なお、リムハイトが上がれば剛性も上がり、乗車状態で回転する際の変形が減って僅かながら抵抗も下がるとされる。とはいえ、もともと小径車でホイールの剛性が問題になることは稀なのであまり意味がない。要は、飾りだ。セミディープに抑えられているのは、手元にある米式バルブのチューブ(シュワルベAV4 16'')がそのまま使えるという利点がある。仏式バルブだと空気入れのソケットを深めに被せないといけないので、バルブエクステンダーが必要かもしれない。

リムの繋ぎ目には筋が視認できるが、段差はないのでブレーキに支障はない。接合方式は商品説明に書いていなかったが、おそらくピンジョイントだ。溶接痕が無いのでウェルドジョイントではなく、接合部から光が透けるのでスリーブジョイントでもない。よって消去法でピンジョイントとなる。ホイールを浮かせるとバルブが重みで下に来て止まるので、ピンのせいで重量バランスが崩れているということはなさそうだ。バランスウエイトで調整する必要も特に感じない。

リム内幅だけでなくリム外幅も純正より2mmくらい減っているので、そのままだとブレーキが効かなくなってしまう。アジャスタで調整できる範囲を超えているので、ワイヤを引っ張って固定しなおさないといけない。これを忘れて走り出すと死ぬかもしれないので要注意だ。

実走

実際に乗って走ってみたところ、予想していたよりも大きな乗り味の違いがあって驚かされた。軽い。速い。盛らないで表現するなら、「無風から追い風5mになったような」感じで推進力が増した。

街乗りでまず感じたのは、漕ぎ出しが軽いのと、脱力して漕いだ空走状態での速度の減衰が緩やかなことだ。機械抵抗の低さが如実に体感できる。特に、低速走行時には空気抵抗よりも機械抵抗と路面抵抗が支配的になるので、機械抵抗が低下したことの恩恵は低速走行時に感じやすい。実際、ゆっくりダラダラと漕いでいる時に、あまり力を入れなくても意外に速く進んで、漕ぐのを止めても意外に伸びて車体が進んでいくと感じる。この感覚は快楽をもたらし、街乗りをより楽しくしてくれる。慣れるまでは歩道で徐行する時に速度が上がりすぎてしまうくらいだ。

リム幅が狭くなったおかげでタイヤがリムの外側に膨らんでプニプニ感が増したこともあり、乗り心地が若干柔らかくなった。尻に優しくなって、段差を踏んだ際に尻に起きるチクッとした痛みが緩和された。路面の小さい凹凸による高周波振動の吸収性も良くなり、おそらくそれは路面抵抗の低減に寄与している。歩道の段差を踏んだ際にハンドルに伝わる衝撃も緩和されたが、振動が吸収しきれなかった場合に反動で車体が跳ねる度合いは大きくなった。また、接地感は希薄になった。接地感はタイヤから伝わる振動とタイヤが変形し始めた時の振動の変化が運転者の体に伝わることで生じるが、もともとタイヤの変形が進んでいる状態だと違いが分かりにくくなる。そして、高速旋回時の安定性は低くなった。スラローム走行をすると、横Gがかかった際にタイヤがグニっと変形する度合いが大きくなったように感じる。とはいえ、スラローム走行したり峠の下りで50km/h超えで旋回したりしない限りは気にならない程度の違いだ。リム幅は広い方が嬉しかったというのが正直なところだが、普通に乗る限りは、2mmくらいなら狭くなっても実用上の問題はないことも分かった。

空力の向上に関しては、予想通り、実感は全くない。重量軽減や機械抵抗の低減の影響に隠されるので空気抵抗の微妙な違いは判別できない。私には認知できないだけで、実際には向上しているのかもしれないし、そうでないかもしれない。剛性の向上に関しても全く感じなかった。タイヤのプニプニ感に隠されるので、剛性の微妙な違いは判別できない。これまた私には認知できないだけで、実際には向上しているのかもしれないし、そうでないかもしれない。

最も嬉しいのは、11Tの鍔付きスプロケットがそのまま付けられるようになったことだ。自分で鍔を削った11Tが最後に壊れてからずっと52T/12T=4.33の変速比で乗っていたのだが、それが52T/11T=4.72に戻った。これはケイデンス70rpmの巡航速度が24.3km/hから26.6km/hに上がったことを意味する。数値だけ見ると微妙な違いなようだが、街乗りでだらだら漕いでいる際にクロスバイク勢を抜けるか彼らに抜かれるかの境界線くらいなので、重要な違いだ。もちろんその分だけ運動負荷は上がるのだが、ケイデンスを上げて高速化するのと違って心拍がそんなに上がらず、汗もかかないで済む。十分な筋力がある今では、多少重いギアの方が楽しく乗れる。筋力の維持向上にも繋がるし。そして、12Tから11Tになったのに、機械抵抗が低減したおかげか、踏み応えの重さをあまり実感しない。それこそ、「ギア1枚分軽くなったような」感じだ。

踏み応えが重い方が良いならチェーンリングを大きくする手もあるが、チェーンリングの歯数を52Tに抑えることでローギアで52T/18T=2.88の変速比が得られるのは捨て難い。それに、52T/11Tに匹敵する変速比を12Tスプロケットで実現しようとするとチェーンリングは57T以上になるが、それだとでかすぎて折り畳みの際にフェンダーステーと干渉してしまう。重量の観点でも52Tの方が望ましい。摩耗しやすい11Tでも鍔を残してあれば割れることはないので、安心して乗れる。ただし、機械抵抗に関しては12Tより11Tの方が大きい。チェーンにテンションがかかった状態でコマが大きい角度で曲がると、コマの壁同士が擦れて抵抗になる。この抵抗はチェーンラインが斜めになるほど大きくなる。とはいえ、フロントダブル化した私のブロンプトンではアウターチェーンリングとトップスプロケットのチェーンラインはほぼ完全に真っ直ぐなので、11Tと12Tの機械抵抗の差は小さいはずだ。インナーの36T/11T=3.27および36T/18T=2.00と合わせると、4速ながら街乗りから峠まで対応できる構成になる。

機械抵抗の低減と軽量化は登坂性能も向上させる。帰省する際によく通る碓氷峠の旧道を走ってみたが、ここでの体験は鮮烈だった。ここの平均勾配は4%程度だが、距離が14kmもあるので、以前なら後半はアウターローを出さないと足が止まりそうになるコースだった。しかし、今回Cospaiiを履いて行ったらアウタートップのまま峠を走破できた。ホイールが軽量化された効果もあるだろうが、それよりも機械抵抗低減によって低ケイデンスでも足が止まりにくくなったのが大きい。急坂でダンシングをしている際に、ペダルを乗せた足が力を入れなくてもスッっと下がっていくので、「休むダンシング」がかなり楽にできるようになった。そして緩めの坂なら、あたかも平坦であるかのように加速して登っていけた。予想以上にグングン登れたので、Cospaiiが一気に好きになった。



湯の丸高原の地蔵峠も登ってみた。平均勾配が10%が10kmも続くコースだ。峠の1732m地点には中央分水嶺も通っている。ここはいつもならインナーローでないと走破できないところだが、今回アウターローで挑んで走破できた。ほとんどの区間で休むダンシングを続けなければならなかったが、一度の足つきもなしに登れた。Cospaiiのハブは乗車重量による負荷だけでなくチェーンの張力が上がって強い負荷がかかった場合でも抵抗が少ないらしく、ケイデンスがめちゃくちゃ下がっても円滑に回せた。純正との抵抗の差は空転時よりも乗車時の方が大きいのかもしれない。ここまで登坂性能が上がったなら、インナーローなら御岳山や暗峠も行けるのではと期待してしまう。あと、ブレーキの摩擦熱の放熱性能も純正よりCospaiiの方が良さそうだ。触れないくらい熱くなっても3分くらい待てば冷める。地蔵峠くらいの坂なら休まず下ってもゴムが溶けたりチューブが破裂したりするほどの温度にはならなそうだ。



余談

私はシュワルベワンを装着する際にチューブとタイヤの間にリムテープを挟んで運用している。シュワルベワンは走行性能が良いのだが、パンクしやすいのが難点だ。耐パンクベルトが省略されているので、ガラスや釘を踏んだらすぐパンクするだけではなく、駐車場や道端の尖った砂利を踏んだだけでもパンクする。そこで、シュワルベのハイプレッシャーリムテープをタイヤの内側に貼って、耐パンクベルトの代用にした。このテープは固いながらも微妙に伸びるので、空気圧でタイヤが膨らんでも問題ない。この状態で運用して1ヶ月ほど経つが、まだパンクしたことはない。



11Tがつけたいだけなら、純正ホイールのままフリーハブボディだけ換装してロックリング方式にする方法もある。私の場合はハブ自体が劣化していたのでこの方法は使えなかったが、そうでなければ11Tを含む多段化をするには最もコスパの良い方法だろう。
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純正ホイールと純正ハブのまま一体型のカセットスプロケットを導入することで11Tを使う方法もある。この方法だと11T-14T-17T固定になるし、11Tだけが擦り減った場合でも全体を換装しなければならなくなるが、導入は楽だ。
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自転車のカスタムと言うと、チェーンリングやらスプロケットやらBBやらのドライブトレイン系をいじる機械的性能重視派と、ハンドルやらペダルやらサドルやらの人間界面をいじる生理学的性能重視派と、各パーツの色や形や質感に拘る美観重視派に分類できるが、そのいずれでもホイールは後回しにされる傾向がある。かく言う私もそうだ。なぜかと考えるに、ホイールは価格が高いし、規格や互換性を調べるのが大変だし、取り付けが面倒くさいからだろう。しかし、自動車でも単車でも自転車でも、通ほど足回りからいじるとも言われる。すなわち、タイヤ、ホイール、サスペンションだ。私のような半可通でも、今ならその意味がよく分かる。足回りの部品は地味な存在とも言えるが、走行性能を大きく左右する。私は既にタイヤはシュワルベワン(旅用はマラソンレーサー)で、サスペンションブロックはジェニーサスに変えていたが、今回ついにホイールに手を出した。といっても、そもそもはやりたくてやったわけじゃなくて、純正が壊れたから仕方なくやったのだ。しかも、市場に流通している最も安価で、純正よりも安い製品を選んだ。にもかかわらず、結果的には走行性能も美観も向上したので、満足している。大満足と言ってもいい。これで純正ホイールのほぼ半額なのだから、文句のつけどころがない。もっと早めにやっていても良かった。

Cospaiiのホイールがどんな人に勧められるかというと、純正ノーマルホイールを長らく使っている人だ。おそらく私と同じように前輪も後輪も経年劣化で抵抗が大きくなっているだろうから、ホイールを変えればかなり抵抗が下がって、走行性能が上がるはずだ。純正ノーマルホイールよりはCospaiiの方が圧倒的に安いし、性能もおそらく上なので、純正を選ぶ理由がない。スペーサとロックリング用工具が必要になるが、それらは合計2000円もしない。一方、純正ノーマルでも新品であれば抵抗が低いのかもしれないし、純正スーパーライトならなおさらなので、その場合はわざわざホイールを変える必要があるかは要検討だ。現状のホイールを手で思いっきり空転させて、前輪で160秒くらい、後輪で75秒くらい回るのであれば、Cospaiiに変えても性能は上がらないだろう。それよりも顕著に渋いのであれば、換装する価値があるだろう。

まとめ

ブロンプトンのホイールを純正から変えるにあたって、価格や重量やリム内幅や形状を吟味する必要があった。結果としてはCospaiiのものを選んだが、満足のいくものであった。軽量化と抵抗低減によって乗り味が軽くなった。リム内幅が減ったことで振動が緩和されたが、旋回時の安定性や接地感は減った。後輪のフリーハブがロックリング方式になったことで11Tスプロケットがつけられるようになり、高い変速比が実現できるようになった。将来的に3速化以上を実現するのにも都合がいい。