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【新薬】ダリドレキサント(クービビック)
不眠症に国内3剤目のオレキシン受容体拮抗薬

2024/12/27
北村 正樹=医薬情報アドバイザー

 2024年12月19日、不眠症治療薬ダリドレキサント塩酸塩(商品名クービビック錠25mg、同錠50mg)が発売された。同薬は、9月24日に製造販売承認、11月20日に薬価収載されていた。適応は「不眠症」、用法用量は「1日1回50mgを就寝直前に経口投与。なお、患者の状態により1日1回25mgを投与することが可能」となっている。

 不眠症は日常の生活の質(QOL)を低下させ、うつ病発症のリスク因子となることが明らかになっている。また、不眠症患者は、健常者と比べて糖尿病や高血圧の有病率が高く、これらの発症を促す要因としても注目されている。日本では、成人の3人に1人が「寝つきが悪い」、「睡眠中に何度も目が覚める」など何らかの不眠症症状を有しているとされる。

 現在、不眠症治療の中心となるのは薬物療法である。睡眠薬には、ペントバルビタール(ラボナ)などバルビツール酸系の依存性の強い睡眠薬や、より認容性の高いトリアゾラム(ハルシオン他)などのベンゾジアゼピン系、ゾルピデム(マイスリー他)などの非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬などがあり、使用されてきた。

 しかし近年、睡眠薬の処方頻度が高まる中、一部の患者では長期服用時の依存形成(耐性、離脱症状、高用量服用、多剤併用)や乱用(過量服用など)の発生が大きな社会問題となっている。そのため、ベンゾジアゼピン受容体に作用しない新しい作用機序を有するメラトニン受容体作動薬ラメルテオン(ロゼレム他)、オレキシン受容体拮抗薬スボレキサント(ベルソムラ)、レンボレキサント(デエビゴ)などが関心を集めている。

 ダリドレキサントは、国内ではスボレキサント、レンボレキサントに次ぐ3剤目のオレキシン受容体拮抗薬である。同薬は覚醒を維持する神経伝達物質であるオレキシンの受容体(オレキシン1およびオレキシン2)への結合を競合的に阻害することで、過剰な覚醒状態を抑制し、脳を覚醒状態から睡眠状態へと移行させる生理的なプロセスをもたらす。

 成人(20~83歳)の不眠症患者を対象とした国内第III相試験(検証的試験)において、同薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2024年6月現在、米国、欧州連合(EU)、英国、スイス、カナダ、北アイルランド、香港など、世界の33の国または地域で承認されている。

 副作用として、主なものに傾眠(3%以上)、頭痛・頭部不快感、倦怠感・疲労、悪夢(各1~3%未満)などがある。

 薬剤使用に際して、下記の事項について留意しておかなければならない。

●薬物相互作用としてCYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾールなど)との併用は、同薬の代謝が阻害され、副作用が増強する可能性があることから禁忌となっている。また、中程度のCYP3A阻害薬と併用する場合は、患者の状態を慎重に観察し、投与の可否を判断する。併用する場合には同薬の投与を1日1回25mgとし、慎重に投与すること(添付文書の「禁忌」「相互作用」「薬物動態」を参照)

●入眠効果の発現が遅れる恐れがあるため、同薬の食事と同時または食直後の服用は避けること。食後投与では、空腹時投与に比べ、投与直後の同薬の血漿中濃度が低下することがある(添付文書の「薬物動態」を参照)

●重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者には、投与禁忌である。また、中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)を有する患者では、同薬の血漿中濃度が上昇する恐れがあるので1日1回25mgとし、慎重に投与すること(添付文書の「禁忌」「特定の背景を有する患者に関する注意」「薬物動態」を参照)

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「薬物乱用の可能性」「自殺念慮・自殺行動」「睡眠時随伴症」「睡眠時麻痺」「ナルコレプシー」が挙げられている

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