自分のあるいは家族のメインの生活の糧を、会社員として働いて給与として得るか、それ
とも(個人)事業を行って得るか、は大きな選択です。
会社員として働いているけど、組織の中でやっていくのは、ちょっとどうかな、と考えた
り、
前回(#7)述べたような税制面でのメリットから、独立して、個人事業でやっていこう、と考えることもあると思います。逆に、事業
を営むと、帳簿をつけたり、健康保険のこととか、いろんな面倒なことがあるから、会社
員として、気楽にやっていきたい、と思う人もいるかもしれません。どちらにしても、最
終的な結果は、会社や他人がとってくれるわけではなく、自分自身に返ってくるので、き
ちんと考えた上で決めるのがいいと思います。
いろんな考え方がありますが、ここでは、「やさしい経済」シリーズの一環として、経済
的な面から考えてみます。まず、個人事業を行う場合は、自分の活動が、すべて収入や支
出と直結しています。自分の活動で得た収入は、すべて自分のものとなります。しかし、収
入が十分得られなかったり、支出が想定した以上に多い場合は、十分な利益が得られず、個
人的な生活に当てるお金が不足することもあります。つまり、仕事の実績が、そのまま経
済的な結果となり、それに全責任をとらなければいけません。事業が順調なときは、メリ
ットも大きいわけですが、継続的に事業を行う間には、思うようにいかない場合も出てく
るかもしれません。そのときに、ちゃんと対処していく覚悟や準備が不可欠です。
一方、会社員として働く場合は、CEO や役員の場合を除き、直接、会社の経済的な状況に対して、責任を負うことはありません。自
分の働きが、会社への貢献として、間接的に評価されて、給与あるいはボーナスとして支
給されるわけです。通常の場合、会社の業績があまりかんばしくなくても、毎月の給料は
保障されているので、自分のあるいは家族の生活をまかなうことができます。ただし、そ
れは絶対的な保障ではないことは、覚えておくべきです。極端に会社の経営状況が悪化す
れば、アメリカの場合、レイオフされる可能性がありますし、最悪、会社が倒産すること
もあるわけです。このような場合、会社や国が、個人の経済状況を考慮してくれることは
なく、最終的には、自己責任であることには、変わりはありません。つまり、給料が安定
しているかどうか、ということより、仕事の結果が、経済的な収支の責任に直結している
かどうか、がポイントだと思います。
同じ会社員でも、数人から数十人のスタートアップ企業と、数千人以上の大企業を比べる
と、会社の経済的な収支に対する感覚は異なってきます。スタートアップ企業の場合は、利
益が出て IPO に持ち込めれば、stock option で大きな見返りがありますが、その前に資金を使い果たしてしまえば、存続できなくなっ
てしまいます。一方、大企業の場合、自分の仕事が、直接、いくらの収益に貢献している
のか、考えるのはまれかもしれませんし、実際、それを知ることは不可能な場合も多いか
もしれません。それよりも、必要な予算を確保して、その中で最大限の実績を出すことに
より、会社に貢献するということになります。
公務員の場合は、国という、倒産する可能性のない巨大な組織の中で働くことになるので、さ
らに、財務上の収支とは遠くなります。このため、無駄な支出をしても、平気になったり
する人もいるようです。これは、大企業でも見受けられることがあります。
また、芸術家や音楽家といった職業では、事業といった感覚はないかもしれませんが、経
済的には、個人事業と同等の責任がついてきます。芸術活動を行っているからといって、経
済的な責任が免除されるわけではないので、このあたりはしっかり認識しておく必要があ
ります。
Tags: tax