Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大学コンソーシアム京都主催の第20回FDフォーラムに参加しました(1日目)

high190です。
平成27年2月28日〜3月1日の2日間で同志社大学にて開催されたフォーラムに参加してきました。
このフォーラムは全国で開催されるFD関係イベントでも最大級のもので、私も2回目の参加になります。今回もhigh190が参加したセッションについて、所感をまとめてみました。分量が多いので1日目のプログラムに関して先にまとめます。理解違いなどがある可能性がありますので、悪しからずご了承下さい。

  • 第20回FDフォーラム(出典:大学コンソーシアム京都)


シンポジウム「学修支援を問う〜何のために、何をどこまでやるべきか〜」

  • コーディネーター
  • シンポジスト
    • 日向野幹也氏(立教大学経営学部教授・リーダーシップ研究所所長)
    • 溝上慎一氏(京都大学高等教育研究開発推進センター大学院教育学研究科教授)
    • 浜島幸司氏(同志社大学学習支援・教育開発センター准教授)
    • 岡部晋典氏(同志社大学学習支援・教育開発センター助教)
  • 村上先生による導入説明
    • 大学においても様々な学修支援(アクティブラーニング、PBL、ラーニング・コモンズ)が行われるようになっている。
    • 2012年の中教審答申では、生涯学び続けることを求められる。十分な総学習時間の確保。授業外学習+主体的な学び。主体性を引き出しながら学修時間を増やす取り組み。
      • しかし、やりだしたらきりがない。どこまでやるべきか?(主体的な学びをどのように支援していくか?参加大学の個別の状況に応じて異なる)
        • 正課内の学習支援(日向野先生)
        • 学習支援を高等教育の観点から捉える(溝上先生)
        • ラーニングコモンズから学習支援を捉える(浜島先生)
        • 図書館情報学の観点から学習支援を捉える(岡部先生)
    • 世の中で「アクティブラーニング」という言葉はたくさん使われているが、実際にやってみよう。
  • 日向野教授による発表
    • 教育学の専門学ではなく、トライアンドエラーで対応していたらそのままアクティブラーニングになっていた。
      • 以前は東京都立大に在籍していたが、金融論を担当する研究者だった。その後、立教大に移るが、金融論に加えてリーダーシッププログラムも担当する事になった。(気軽な気持ちで引き受けてしまった)その際、立教大でも就職活動の変化に対応にするように、授業やゼミでプレゼンやグループワークなどを重視する教育を行ってきた。リーダーシップを全学部必修化するところまで繋がった。(当時からするとかなり変わった取り組み、学内でもなかなか理解が得られなかった)
      • 2008年に教育GPに採択。財源面で一定の目処がついたので、事務局・補助教員・SAトレーニング開始
      • 2011年頃からリーダーシップ教育に風が吹き始めた。
        • 職員からの要望で教員が職員のリーダーシップ開発。
        • ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)=スパイラルラーニングを学習モデルとして採用*1
        • リーダーシップ+専門知識を身に着けることが大切。「不満を苦情として伝えるのは消費者。不満を提案に変えて持っていくのがリーダーシップ」
        • リーダーシッププログラムでの「学生ポートフォリオ」活用
    • 松岡洋祐さんの発表(株式会社イノベスト代表*2・BLPプログラム1期生)
      • アクティブラーニング・リーダーシッププログラムは大学内だけで完結するものではない。企業内の人材育成にも活用できる。
      • リーダーシッププログラムの運営は、教員+職員+SA+企業コーディネーターなどが相互連携して実施している。
      • 学生の教育の質を高めるために教育目標を明確にする事。
    • 八田有里さん(立教大学経営学部2年次生・BLPのSA)
      • SAによるピアラーニングが特長。SAが後輩学生のロールモデルとなった。無知の知に気づく(学びの楽しさを知る)
      • 自分がお世話になったSAのようなSAになりたい。熱の循環(教員が「熱く」それがSAに伝わり、SAの「熱さ」が新入生に伝わっていく)
  • 浜島先生、岡部先生による良心館ラーニング・コモンズの紹介
    • 細かいエリア分け。ワークショップルーム、グローバルエリア、グループスタディルーム、プリントステーション、マルチメディアラウンジ(デザイン工房)、アカデミックサポートエリア(教員が常駐)
      • コンセプト:知的欲望開発空間(2013å¹´4月に開設)
      • 図書館とは別校舎に設置し、教室等の中心部においていることが特徴。
      • 学習支援・教育開発センターは他部門とも有機的に連携して業務を進めている。(ITサポートオフィス、国際センター、図書館、業務委託)
      • 柔軟性、快適性、感覚刺激性(他者の学修行動が「情報」になる空間)
    • 実際のデータ
      • ICカード管理なので、そのデータを活用している。最も利用しているのは1回生。3回生・4回生の部分でも学修行動の変化が分かる。
    • 人的支援体制
      • 「アカデミック・インストラクター」学習支援を主たる業務とし、シフト制で回している。
      • チームティーチングで取り組んでいる ラーニング・アシスタント(大学院生)、情報検索アシスタント(図書館職員)
      • 高利用度の学生に対してインタビュー調査を行う。具体的に何が役立つのかを重視しなければならない。学習相談は概ね好意的に評価されている。
      • 質的調査以外に量的調査も行っているので、その結果もどこかで報告したい。
    • 今後「何をどこまでやるべきか」
      • 学習支援の範囲
      • 学習相談者の認識(教える、ではなくアドバイス、助言)
      • 学習相談環境の構築と維持(ラーニングセンターとしてのラーニング・コモンズ、サステナビリティの維持)
      • 学習支援のターゲット(アカデミックスキルを習得すべき学年は?大学での学習が可能となるスキル(汎用的と専門的)の獲得とは?)
      • 全学的学習支援の射程(それぞれの守備範囲を理解。あらゆる専門領域をカバーするのは不可能。学習支援スタッフは教員の授業展開のサポート役に)
    • まとめ:学習支援の場とは?
      • サポートに頼らなくてもよくなるためのサポート
      • ラーニングコモンズは万能ではない(できること・できないことの理解は大切)
      • 多くの教職員の協力無くしてラーニング・コモンズ及び学習支援は成立しない
  • 溝上教授による発表
    • 「学修」とは単位制(学習時間)に基づく与えられた枠(正課教育)内の学習のことである
      • アクティブラーニング=主体的学びではない
      • 主体的な学びとは、決してアクティブなだけではない。質的転換答申が入れたかった事。
    • 質的転換答申における「学修」の意義
      • 授業外学習をさせようと思うなら、学生の自主性だけではなく、教員側に責任主体を置くこと。(土持)
      • 質的転換答申の金沢工業大学、国際教養大学に関する事例紹介
    • 大学設置基準での用字・用語としての「学習」
      • 設置基準でも授業外学習に関しては「学習」の言葉を充てている。
      • 質的転換答申では「生涯学習」「高校生の学習」と2カ所でてくる。「学修」の枠を超える「学習」
      • 「学修」と「支援」のカップリングには疑問を感じる。「教授」「指導」「ファシリテーション」「介入」「育成」などとすべき。
        • 何のために:ディプロマポリシーに即して学習成果を上げるために
        • 何を:カリキュラム、プログラムを見る
        • どこまで:単位制で学修時間が設定されている。少なすぎるのは問題だが、大幅に超過するのも問題である。
    • 「学習支援」と捉え直して、枠を超える学習を再度捉える必要があるのではないか。
      • 学習環境:授業外学習と自主学習
      • 学習の大枠に学修(正課教育)、プロアクティブラーニング、学習支援
      • アクティブラーニングに対応するのはパッシブラーニングである。これはアメリカでもそのように定義されている
    • 「与えられる枠を超える関与」という学習態度
      • トランジション課題の解決のために−学校から仕事・社会へのトランジション(移行)
      • 職業人養成だけに特化することは危険。よき市民、家庭人、社会人などの育成に関する問題もある。
      • アクティブラーニングを持ち出さなくても、単位制度の枠の中で超えていく態度。例示すると教員からの指示を充足すればそれでいいと思う学生と、自分の納得するところまで到達しようと試行錯誤する学生との違い。枠は枠としてミニマルリクワイアメントとして捉える。
    • トランジションの文脈で求められる主体的な学習態度
      • アウトサイドインとしての(主体的な)学修態度:個人→与えられる枠組み
      • インサイドアウトしてゆく(主体的な)学習態度:個人(プロアクティブラーニング)→与えられる枠組みを超えていく
    • トランジションの文脈で求められる授業外学習
      • 授業外学修を出発点としながらも、インサイドアウト的な授業外学習とする(プロアクティブラーニング)
        • 自身の理解を確認する
        • 既有知識や経験と繋げる(deep approach to learning)
        • 授業で出てきた分からない言葉や知識で調べる
        • 参考文献を読む
  • パネルディスカッション(日向野教授、溝上教授、浜島准教授、岡島助教、村上准教授(コーディネーター))
    • フロアからの質問事項に対するコメント
      • 日向野先生
        • フリーライドする学生に対する対処は?
          • 社会に出た場合、全員の手を借りないといけない場合、巻き込めない人も悪い。リーダーシップに対する持論を書かせ、数ヶ月での変化を見ている。巻き込めないことを変えていけるようにする
      • グループワークについていけない学生(内向的)
          • 内向的な学生は自己に中立的な人が多い。むしろそういう人にこそリーダシップが必要であると教える。
        • SAの育成に関するリソースは?
          • 夏ぐらいから選抜を兼ねたSAの訓練を行っている。PBLで企業からの課題に対処していくが、学生に考えさせる質問ができるSAを育てていく。質問力は訓練する必要がある。
          • 答えを教えるのではなく、答えを出す補助役としてのSAの役割。どの学生がフリーライドしているか?ということは教員よりもSAの方が理解している(ボディランゲージを含めて)「先輩」としてのロールモデルとしての効果。費用としては90分分の対価は支払っているが、それ以上の満足度がある。
      • 岡島先生
        • 図書館とラーニングコモンズの関係性、同志社は切り離しているがどうか。
          • 物理的に図書館にラーニングコモンズを作れなかった用地的な制約が大きい。最近の関西圏での理解は、必ずしも図書館内に作らなくてもいいという認識が広がっている
          • 図書館の外にあることで「しゃべっても良い」という意識に繋がっている。「賑やかな学修習慣」図書館の内にある場合には「ゾーニング」「遮音性」などの面で配慮しなければならない。
      • 図書が無くて困ることは無いか?
        • 今まで特に困ったことはない。図書館から歩いて至近にあるので、そこまで困ることは無い。また電子ジャーナル等のリソースを活用したり、図書館とラーニングコモンズが相互に利用促進を行うような対応をしている。(役割分担が明確)
      • 溝上先生
        • プロアクティブラーニングを教員がどこまで把握すべきなのか?
          • 修める学修と習う学習。大学側が責任を持つべきなのは「修める」方である。
          • プロアクティブというものは成績などを超えた部分であるので、評価の対象にはならない。
          • 学生が教員の与えた枠の中でしかやっていないのか、枠を超えているかのチェックはしてもいい。(評価ではないことに注意) 講義を前提としながらもアクティブラーニングに繋げるツールとして「ワークシート」というものを配付している。3〜4枚の資料。
          • アクティブラーニング型の授業を進めれば進めるほど、どうしても色々とステップが細かくなる。そうした中で知識をしっかり習得させ、教科書がしっかり整備されていることがまず重要。宿題・課題を課している中で、その達成状況を回答させることでチェックすることはできる。評価というのは、教員が学習目標を立てて行為主体者・学習者側に目線をあわせることでアクティブになる。
        • 枠を超えたアクティブラーニングをどう評価したら良いか?
          • 評価しないことが重要では。与えられたことだけこなす京大生は好きじゃない。超えて欲しいという願いは是非伝えていきたい。
    • アクティブラーニングによって学力差がさらに拡大するのではないか?(村上先生)
      • 日向野先生
        • 言葉数少なくても30分自己の存在が認められれば、学生間での差が出るということはない。
        • 立教大学でもリーダーシップ教育に関心があるのは理学部である。まず全学対象科目を受講できるように。
    • 同志社のラーニングコモンズでも学生が来ないことはないか?
      • 浜島先生、岡本先生
        • 使っている学生かそうでない学生かという部分は検証中。グループワークに行くまでに結構な障壁を感じているよう。まずは来てもらえるように積極的に情報発信している。これからさらにニーズが出てくれば、どこで戸惑っているかの分析が出来るようになる。教員によっては、授業での学生に対する課題や伸びが弱いような問題もある。
      • 溝上先生
        • 個人的には学力差(ディバイド)は拡大すると考えている。社会性の問題、関係性の問題が今後クローズアップされてくると思う。
        • 自分は青年心理学が専門なので「発達」が研究テーマである。大学生になってから急にできるようになるかどうかは大学教育の課題である。高校段階で実証分析を行うと、高校段階でも主体性を身につけている生徒は少ないのでは。京大生でも処理能力は高いが、対人能力に問題があるので採用されない学生もいる。そういうことは非常にもったいない。これはどのレベルの大学でも起こりうることであり、個別の大学でも課題はあるので、どこに課題設定をして学生を育成していくかが大切。
        • 理系からアクティブラーニングが発生していることは案外理系の教員は知らない。 専門職として仕事をするとき、ひとりで仕事することはあり得ない。他者と協働することは必要不可欠なので、理科系だからできないということはない。
    • 立教大のBLPで学生が楽しいと感じているのはPBLだけではないのか?
      • 日向野先生
        • PBLではなく論理を学ぶスキル系の授業は必修ではないが、履修者は増え続けている。企業からの課題に対するプレゼンに対して厳しい指摘が入る。そこは論理の飛躍などに原因があるため、その重要性を伝えている。出欠、発言などを加味して成績を付けている。
        • リーダーシップの理論については、どれかを使わないとリフレクションできないので、そのことを説明している。まず第一にリーダーシップに関する成果目標を自分が率先垂範して決める。しかし、それで全員ができる訳ではないので、リーダーシップの3条件。企業連携のコツはひとつの大学でPBLをやる場合、教員が交渉するのは非効率である。よって、外部で企業とのコネクションを持ち、調整できる他者と協働した方が望ましい。
    • ラーニング・コモンズを利用している学生の学習成果に関して何か調査をしているか。
      • 浜島先生
        • 教育評価に関しては、学生のヘビーユーザーに対するアンケート調査などは行っている。利用している学生、その他の学生も含めた大規模アンケートを実施した。スキル系・学士力に関する質問を織り込んだので、それを分析している。ラーニングコモン ズを利用する学生に関しては学習に関する意識差の格差などは表出してくる可能性がある。自由記述欄を設けたところ、不満が3点上がってきた。
          • メディア環境を充実させて欲しい(性能がいいもの)
          • 全エリアで飲食可能にしてもらいたい(せめて飲料ぐらいは)→学生にしっかり対応策が行き渡っていない?
          • 声の大きさに対する不満(自分たちの話が隣のグループの声でかき消される、勉強したいのに別目的で使っているなど)学習に関する点については、利用者相互で意見交換を促している。
    • 学部間・部署間での連携をしているか。
      • 浜島先生
        • 週1回で情報共有できる場を設けており、スムーズに運営できている。
        • 学部教員に関しては2ヶ月に1回検討委員会を開催しており、教員からの要望を聞く機会を設けている。ただ、それだけでは足りないので、各学部の初年次から卒業 までのカリキュラムの話を聞き、自分たちに出来る支援のあり方などについて意見交換を行った。初年次で学習した内容を忘れている学生に対して、指導できる期間があることはいいとの評価を教員から得ている。
    • ラーニングコモンズにも行きたがらない学生に対する指導はどうしたらよいか?
      • 溝上先生
        • 学生の「面倒くさい」という意見を汲み取りすぎず、教員が求める評価基準に到達することで、枠にあてはめて考えることは必要。ある授業での単位修得条件がある場合、それをしっかり学生に説明して理解してもらえるようにクリアするポイント。京大生はこなすことがうまいので、枠に到達する学習はしっかりやってくるが枠を超えようとしない。そこを超えさせる努力を教員がしている。
        • 伝統的学力が低い学生はそもそも枠にはめられない。教室には来るが、多くの学生(3分の1以上)は学習意欲が低く授業を妨害する。そういった学生を相手に何とかコミット・エンゲージメントさせるかということが大切。例えば映像教材を活用すると、その時はいいが理論の説明になると嫌がる。ディスカッションさせるにしても、頭の中で全然進んでいないような状況はいけない。枠は与えているんだけど、そこに乗ってこない学生が乗ってきたことがある。授業を90分で完結させるのはなく、60分で授業を終了させ、残りの時間で確認テストを行い、リフレクションを行った(よくできましたのハンコを押す)ところ、学生の学習意欲が高まった経験である。そういった教員から認められる、達成感を感じていること自体が少ない。そういう個々の学生に課していくことが学習意欲を生む。
        • 枠を設定して、そこに到達させるための工夫を行っていくかが教員の力量で、これは各大学で異なる。
    • 汎用的なスキルが必要なのは分かるが、教員にそもそも教えられるのか?
      • 日向野先生
        • SAを導入したことでブレイクスルーが起きた。授業の中にFDを内蔵すること。その問いは学生から出てくることに意味がある。学生に対して質問力を育成することの重要性がある。
      • 浜島先生
        • 授業外でのサポートをしているが、学生の質問からどの教員がどういう課題を出しているかは分かる。ある意味、教員の方が汎用力があるという前提に立って話をしているが、学問的な作法に関して最善の部分を意見交換していくか。教員には汎用的能力は備わっているという前提。
      • 岡本先生
        • 汎用的スキルがあるかないかについては、ラーニングコモンズでは教員のやり方に対して意見を述べることはない。もちろんそこが悩ましい部分はあるが、学生にはなるべく色々な先生に話を聞きにいくように指導している。
      • 溝上先生
        • 教員のジェネリックスキルが弱いというのはあると思う。そういう教員がPBLなどをやっていくには研修しかないと思うが、ハイパフォーマーをモデルにするのはよくない。立教の八田さんの話を聞いて感動した。学生調査にしても「役割モデルになる人」があまりにも身近すぎるのが問題であると感じる。

2012年に公表された中教審答申を踏まえ、アクティブラーニングの進展などは各大学で取り組まれていることですが、具体的に何をどこまでやるべきなのか?という点で、先進事例の紹介と意見交換が行われました。なお、大学教育学会の小笠原会長は、2012年に「アクティブラーニングの実施は教員・学生を疲弊されるので、科目数を減らした上で大規模授業を組織化していくことが重要」との指摘をされています。*3
立教大学の日向野先生の発表を聞いていて感じたのは、立教大学経営学部のビジネス・リーダーシップ・プログラムでは、SAを活用したアクティブ・ラーニングの取り組みが紹介されていましたが、学生を授業を創る上でのパートナーとして捉えていらっしゃるのが印象的でした。教職学協働といいますが、授業内だけに留まらず、幅広い展開をされているのだと思います。リーダーシッププログラムを職員にも伝授されているそうですが、これはSDの取り組みとしても興味深いものですね。
同志社大学のラーニング・コモンズの取り組みに関しては、学生の学習支援に向けて部署間が相互に連携する仕組みが作られていることについて、規模の大小とは関係無く連携できる制度に関心を持ちました。私の職場でもラーニングコモンズの設置に向けた検討がようやく始まったのですが、これは是非本学の担当者にも伝えたいなと思った次第です。
溝上先生の講演では、大学設置基準上での「学修」と「学習」の違い、「トランジションの文脈で求められる主体的な学習態度」、「インサイドアウトとしての(主体的な)学習態度=プロアクティブラーニング」など、2012年の「質的転換答申」をより噛み砕いた内容で、非常に分かりやすく整理することができました。また、発表用のスライドをすぐにWEBで公表して下っているのは大変助かります。*4こういった場での発表資料を公表するということは、その後のリフレクションにとっても非常に重要なことですので、もっと様々な場で広がっていけばと思います。(現在はSlideShareのように便利なWEBサービスがあるので。)

また、シンポジウムのコーディネーターを務められた村上先生のファシリテーション力の高さは出色でした。溝上先生が持ち時間を超過してお話されていたのを、プロアクティブラーニングでの説明を引用し、「時間の枠を超える」という風におっしゃって、会場全体が和みました(笑)でも、ああいう大規模な会場の雰囲気を和らげるのは簡単ではないですし、授業でのアイスブレイクなどの手法にも繋がるものだな、と個人的には感心して見ていたところです。

色々と感じることは多かったのですが、アクティブ・ラーニングをどこまでやるの?ということについて、他大学の真似をしてもうまくいかないでしょうね。各大学が、自学の教育にアクティブ・ラーニングをどのように位置づけていくのか、そのことをしっかり捉えていなければ、深い学びには繋がらないだろうと思います。その点を強く意識させられました。
シンポジウムの後は京都ブライトンホテルに場所を移し、情報交換会が行われました。京都の大学の友人とも旧交を温めることができ、充実した1日目を過ごすことができました。次回は2日目の分科会参加報告です。

*1:BLPについて(立教大学経営学部)http://cob.rikkyo.ac.jp/blp/about.html

*2:株式会社イノベスト http://innovst.com/

*3:アクティブ・ラーニングと中教審答申をめぐる高等教育研究者の議論を聞いてきました http://d.hatena.ne.jp/high190/20121226

*4:学修支援なのか、学習支援なのか?−単位制とトランジションをどう折り合わせるか− http://goo.gl/1wLfGJ