Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

静岡大学発のITベンチャー、埋もれた論文を低価格で電子書籍にするサービスを提供

high190です。
静岡大学発のITベンチャー企業が、学術論文を5万円から電子書籍化するサービスを始めたそうです。


静岡大学発のITベンチャー「静岡学術出版」が、学術論文や絶版になった書籍を電子書籍化し、低価格で出版・復刻するサービス「新電子出版 知の偉産シリーズ」を開始した。電子書籍化の価格は1冊あたり5万円。出来上がった電子書籍は、ネット小売り最大手「アマゾン・ドット・コム」や同社のウェブ書店で、1冊500円程度で販売されるという。
同社によると、博士・修士論文は毎年、合計約10万件が作成されているが、そのほとんどは出版されず、大学図書館などに眠ったままになっている。同社では、これまでも紙での自費出版を1000部約50万円で請け負ってきたが、「長い年月や費用をかけた研究成果が、人の目に触れずに埋もれるのは大きな損失。もっと低価格で提供したい」として、電子書籍での出版サービス開始を決めた。
同社では著者から提出された原稿をDVDなどに移し、表紙や奥付のデータを付けて電子書籍化する。経費削減のため、カバーデザインは選択制とし、校閲なども省いた。入稿から約2週間で納品できるという。
作成された電子書籍は、1冊ごとに国際標準図書番号(ISBN)が付けられ、正式な書籍として国立国会図書館に納品される。紙の在庫を持つ必要がないため、同社が存続する限り絶版になる恐れもないという。
年間売り上げ目標は2012年度で3400万円。同社営業担当の三島美保さん(46)は「電子書籍向け端末も次々開発され、今後電子書籍のニーズは高まる」と自信を見せる。同社を指導している静岡大情報基盤センターの井上春樹副センター長は「電子書籍化によって、論文の検索や入手も容易になる。大学で生まれた研究成果を、広く社会に還元することが可能となる」と話している。

もともとは、静岡大学総合情報処理センターでのノウハウを学術機関、一般企業に還元するために設立された会社のようですね。
電子書籍化にあたって、どの程度の金額が妥当かはサービスの内容にもよると思いますが、1冊500円程度ならかなり安価なのではないでしょうか。これからの大学図書館は通常の蔵書のみではなく、iPadやAmazon Kindleの普及にあわせて電子書籍を多く扱うことになるでしょうから、学術論文もデジタルデータ化していくことは普通の流れであると思います。*1また、電子書籍であればWebを介する分だけ様々な人の目に触れる可能性が増しますので、自分の研究内容を世に問うにはとてもいい仕組みであると思います。学位の質保証という観点からも、研究成果の配布を容易にするサポートはこれからさらに拡大していくものと思われますので、静岡学術出版のこれからの期待を寄せたいところですね。

*1:これからの大学図書館はメディアセンターへ−http://d.hatena.ne.jp/high190/20100713