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映画「Love Letter」(岩井俊二、1995)監督長編デビュー作。


「Love Letter」(1995)は岩井俊二監督の長編映画監督第1作。美しい雪景色の小樽を舞台に、手紙のやり取りを通して故人への一途な想いを深めてゆくラブストーリー。

主演は中山美穂、豊川悦司。共演は加賀まりこ、名わき役として注目される前の光石研、范文雀、子役で坂井美紀のほか、篠原勝之、田口トモロヲ、塩見三省、鈴木蘭々など。

公開時、日本や中国でも好評だったが、韓国では特に爆発的な人気を呼んだという。日本語の「お元気ですか?」という言葉はアジアでも話題になったという。

日台合作の「青春18×2 君へと続く道」(2024)では「LOVE LETTER」が劇中の映画館に上映されるなど、同作品へのリスペクトを感じさせた。

博子も樹(いつき、女性)も中山美穂が一人二役を演じていてまぎらわしいが、樹(女性)は“風邪をひいている”という設定にして区別している。

<ストーリーあらすじ>

事故で婚約者の樹(いつき)を亡くした博子は、国道になってしまったという彼が昔住んでいた住所に届くはずのない手紙を出した。しかしその手紙は、婚約者と同姓同名の女性のもとへ届き、2人の不思議な文通が始まる。
・・・
神戸に住む渡辺博子(中山美穂)は、婚約者で山岳事故で亡くなった藤井樹の三回忌に参列したあと、彼の母・安代(加賀まりこ)から彼の中学時代の卒業アルバムを見せてもらう。博子はそのアルバムに載っていた藤井樹(柏原崇)が昔住んでいたという小樽の住所へ「お元気ですか。」とあてのない手紙を出す。

博子の手紙は、小樽の図書館職員で同姓同名の女性・藤井樹(中山美穂二役)のもとに届く。樹は不審に思いながら返事を出すと、博子からも返事がくる。

奇妙な文通を続けていたが、博子の友人・秋葉茂(豊川悦司)の問い合わせで事情が判明する。博子は樹に謝罪し、婚約者だった藤井のことをもっと知りたいと手紙を出す。

樹は藤井とクラスメイトだった中学時代の思い出を手紙に綴る。同姓同名の二人の藤井樹はクラスで囃(はや)し立てられ、図書委員にされてしまう。

女子の樹は誰も借りない本ばかり借りるなどの風変わりな男子の藤井に戸惑う。博子から樹に学校を撮ってきてほしいとインスタントカメラが送られてくる。

樹は久しぶりに母校を訪ね、図書委員の女子生徒たちから、図書カードに残る「藤井樹探しゲーム」が流行っていると聞かされる。

秋葉茂は博子を連れて、藤井樹が死んだ山のふもとの山小屋に泊まる。小樽の樹は風邪をこじらせて倒れる。樹の父親は救急車が間に合わず亡くなっていた。祖父の剛吉(篠原勝之)は吹雪の中、樹を背負って病院に運ぶ。樹は祖父とともに入院する。

翌朝、秋葉は藤井が死んだ山に向かって「博子ちゃんは俺がもろたで」と叫ぶ。博子は「お元気ですか。私は元気です」と繰り返し呼びかけて号泣。ようやく藤井への思いを断ち切る。小樽の樹も病床からうわごとで「お元気ですか」とつぶやくのだった。

小樽の樹は中学3年の正月に父親を亡くしたが、なぜか藤井が訪ねてきて図書室で借りた本を樹に預けて引っ越していった。

博子は退院した樹に今までもらった手紙を「あなたの思い出だから」と送り返し、藤井は図書カードに樹の名前を書いていたのではないかと問う手紙を添える。

樹の家に図書委員の女子生徒たちが訪ねてくる。藤井が樹に預けた本の図書カードの裏には、樹の似顔絵が描かれていた。樹は藤井の初恋に気付き照れながら涙ぐむのだった。

・・・
死者に宛てた手紙で幕を開けた「Love Letter」は、死者からの手紙(図書カードの裏側の似顔絵)を受け取ることによって幕を下ろす。

中学生で同じクラスに同姓同名、しかも男女がいたら何かと混乱するが、まわりの生徒は面白がって、同姓同名同士を同じ係にさせたりしてからかう。

登場する女性教師が何年も前のクラスの生徒の名前をすらすらと番号とともに覚えているということに驚く。

最近のドラマ「地面師たち」で極悪人を演じている豊川悦司がうざい若者を演じている。

岩井俊二監督は女優の魅力を最大限に引き出すのが得意のようだ。
「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」(1995)では奥菜恵「四月物語」(1998)では松たか子「リリイ・シュシュのすべて」(2001)「花とアリス」(2003)では蒼井優「リップヴァンウィンクルの花嫁」(2016)では黒木華など。

これらはすべて見ているが、長編デビュー作「LOVE LETTER」は初見。同姓同名で手紙のやり取りをするという風変わりなストーリーだが、味わいのある作品。

<キャスト>
■渡辺博子:中山美穂…主人公。2年前に婚約者の男性・藤井樹を登山で亡くしている。
■藤井樹(いつき):中山美穂(二役)…博子の婚約者と同姓同名で、しかも中学のクラスメートだった。
■秋葉茂:豊川悦司…博子に好意を寄せている。
■藤井晶子:范文雀…樹(女性)の母親。
■藤井剛吉:篠原勝之…樹の祖父。
■藤井精一:鈴木慶一
■藤井慎吉:田口トモロヲ
■樹(少女時代):酒井美紀…図書委員の一人。中3の冬、父親を肺炎で亡くす。
■樹(少年時代):柏原崇…内気な性格で誰も読まないような図書を借りまくる。中3で転校により神戸に引っ越すことになる。図書室で借りていた本を樹の自宅に行き返却する。その本の貸し出しカードの裏には…。
■藤井安代:加賀まりこ…樹(男性)の母親。
■阿部粕:光石研
■及川早苗:鈴木蘭々
■梶親父:塩見三省
■浜口先生:中村久美
■利満:うめだひろかず
■春美:長田江身子
■鈴美:小栗香織
■治夫:神戸浩
■運転手:酒井敏也
■担任:山口晃史
■阿部粕の妻:山口詩史
■学年主任:山崎一
■男:徳井優
■看護婦:武藤寿美
■図書委員 遥香:藤村ちか
■図書委員 恵子:市川さき
■図書委員 真理:林美恵
■図書委員 優子:高原遊
■図書委員 彩:園田亜季子
■図書委員 智加:木村絢

<第19回日本アカデミー賞>
優秀作品賞
優秀助演男優賞:豊川悦司
話題賞(俳優部門):豊川悦司
新人俳優賞:柏原崇
新人俳優賞:酒井美紀
優秀音楽賞

 

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