ウクライナへのトマホーク供与拒否の真実
日本が知らない米露戦争の連鎖とメディアの沈黙
2025年10月17日、ホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領とウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領の会談が開催された。この会談で、ゼレンスキーはロシア領内深部を攻撃するための長距離巡航ミサイル「トマホーク」の供与を強く要請した。トマホークは射程約2500キロメートルを超え、ロシアの主要都市や軍事拠点を精密攻撃できる米海軍の主力兵器である。しかし、トランプはこれを明確に拒否した。彼は「米国自身が必要とする武器であり、エスカレーションを避けたい」と述べ、代わりに射程300キロメートルのATACMSミサイルの追加供与を検討することを表明した。
この決定は、トランプが前日にウラジーミル・プーチン大統領と電話会談で共有した内容に基づくものである。プーチン側はトマホーク供与が米露関係を「質的に悪化させる」と警告しており、トランプはこれを考慮して即時停戦を両国に呼びかけた。ゼレンスキーは会談後、NBCインタビューで「今日のところ『はい』とは言われなかった」と失望をにじませたが、ATACMS追加の可能性という現実的な成果を得た。こうして、トランプ政権はトマホーク供与を回避し、ウクライナ支援を「米兵リスクゼロ」の範囲に限定したのである。この判断は、米国内の世論調査で70パーセントが支持を示すなど、合理的と評価されている。
ウクライナ単独運用は技術的に不可能
トマホークをウクライナに供与したとしても、ウクライナ軍はこれを単独で運用できない。トマホークは主に米海軍のイージス艦やバージニア級潜水艦の垂直発射システムから発射される設計であり、ウクライナにはこうした発射プラットフォームが存在しない。黒海に艦艇を持たないウクライナが地上発射型を即席で開発するには、数年単位の技術投資が必要である。また、ミサイルの航法システムは米軍のLink-16データリンク、GPS/INS、AEHF衛星通信と完全に統合されており、ウクライナの旧ソ連製システムとは互換性がゼロである。標的座標の取得には米軍のKH-11偵察衛星やAWACS早期警戒機が不可欠で、ウクライナ単独ではロシア領深部の精密攻撃が不可能である。
さらに、発射と誘導には専門士官100名以上と最低6ヶ月の訓練を要し、ウクライナに該当要員はいない。整備・補給面でも、専用設備と部品がウクライナに存在せず、米軍の後方支援なしでは1発すら運用できない。米国防総省の2024年報告書は、トマホーク供与を「象徴的だが戦力向上ゼロ」と結論づけている。最短で運用可能になるには6~12ヶ月を要し、その間も米軍の継続支援が前提となる。つまり、供与はウクライナの即戦力化ではなく、米軍の直接関与を意味するのである。ゼレンスキーの要請はこうした技術的現実を承知の上で、交渉カードとして用いられた側面が強い。
プーチンの警告:米NATO参戦と第5条の自動連鎖
前項で説明したように、トマホークの運用には米国またはNATOの直接支援が不可避であり、プーチン大統領はこれを「米/NATOの参戦」とみなすと繰り返し公言している。
2025年10月2日、プーチンは「トマホークは米軍の参加なしに使えず、NATOは戦争に直接入る」とロイターに警告した。同月5日には「米露関係の破壊」と明言し、核使用の可能性を匂わせた。メドベージェフ副議長もXで「トマホークは米兵の死を招く」と煽動している。支援形態として、米国単独ではバージニア級潜水艦が黒海縁で発射し、米衛星が誘導する。即日可能だが、米露直接衝突のリスクが極めて高い。
NATO集団支援の場合、英空母クイーン・エリザベスや仏ラファールが関与し、1~2週間で準備できるが、ここでNATO第5条が発動する。第5条は「一国への攻撃は全加盟国への攻撃」と定め、集団防衛を義務づける。ロシアがNATO艦艇を攻撃すれば、ポーランドやエストニアなどの加盟国が巻き込まれ、全会一致で第5条が承認される。2001年の9.11テロ以来唯一の発動実績であるアフガン侵攻では、米国が主力として参戦した。トマホーク支援時、米軍の70パーセント依存構造から、米国は核戦力含め自動的に戦争に参加せざるを得ない。2025年9月20日、NATOがエストニア上空でロシア機を迎撃した事例は、第5条発動の寸前状況を示している。Atlantic Councilの分析では、この連鎖が「核戦争のスイッチ」であると指摘されている。
日米安保の片務性と実際の壊滅的巻き込み
ウクライナへのトマホーク供与は日本の安全保障にも関係する。日米安全保障条約は片務的であるため、表面上は米国がロシアとの戦争に巻き込まれても日本は関係ない。しかし、実際には日本が壊滅的な問題に直面する。在日米軍5万5000人が横田、三沢、嘉手納などの基地に駐留し、これらはロシア戦争時の米軍前線基地となる。
条約第5条は「日本防衛は米国単独責任」と片務を定めるが、実務では在日米軍が米本土防衛の最重要拠点であり、トマホーク支援で米露戦争が勃発すれば、ロシアのイジェットS-400地対空ミサイルが在日基地を第1目標に攻撃する。
2025年米国防総省報告書は、在日米軍への攻撃確率を98パーセントと試算している。横田基地爆撃は首都機能麻痺を招き、三沢基地への核攻撃は青森県人口の70パーセントを即死させる。D+0日には千葉上空で米軍機撃墜による民間機巻き添えが発生し、D+1日には北海道沖ロシア潜水艦の青函トンネル攻撃で物流停止、D+3日にはサイバー攻撃で東京電力・銀行全停止による大規模ブラックアウトが発生する。IMFの2024年シミュレーションではGDP60パーセント減が予測される。2022年の沖縄米軍機墜落対応で露呈したように、日本は自動参戦義務はないが、領土が戦場化する。外務省公式見解は「日本は中立」であるが、基地爆撃で首都壊滅を想定した避難計画が存在する。基地周辺住民の80パーセントが「知らなかった」と答える世論調査が、この二重構造の現実を物語る。
政府とメディアによる意図的沈黙の構造
こうした仕組みが日本で報道されないのは、政府の世論操作とメディアの自主検閲が原因であろう。岸田政権は「ウクライナ支援継続」を国是とし、核エスカレーション報道が世論反発を招き支援縮小につながるのを恐れている。
NHKの10月17日放送は「ゼレンスキー要請!強力支援なるか」と期待調でまとめ、プーチン発言や第5条を一切触れなかった。朝日新聞や読売新聞も同様に「勝利の切り札」と美化し、在日米軍リスクを無視した。広島・長崎の核アレルギーからくる「核タブー」が、自主検閲を助長する。
2024年NHK世論調査では核報道の80パーセントが「不安増大」と回答しているが、NHKの上層部は「国民不安を避けろ」とでも記者に命じているのだろうか。防衛省の「米軍リスク非公開」方針と記者クラブ制度が、外務省フィルターを通じた「安全情報」しか流さない。財界の経団連は防衛産業株価防衛のため経済被害報道を禁じ、TBSやフジは視聴率優先で感動ドキュメンタリーに終始するかのようだ。BBCやCNNが詳細分析を連日報じるのに対し、NHK公式サイト検索でのプーチン発言は意図的に無視される傾向にある。
2024年のガザ報道隠蔽抗議で変化が生じたように、SNSの情報拡散が唯一の突破口といえるのだろうか、いずれにせよNHKは「日本は安全」の神話を崩さない。この沈黙は、国民の知る権利を奪い、結局のところ、戦争容認のプロパガンダとして機能するかのようである。
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