2009年 12月 17日
5年条項の問題点
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「5年雇い止め」見直し案(中間案)をうけ、5年条項の問題点を整理します。(パンフより)
5年条項の問題点(PDF)
5年条項とは
大学、官公庁、一般企業の間で、更新の年限を定めた有期雇用が広がっています。
京大の場合、
2004年に小泉改革によって国立大学は法人化され、教職員は公務員ではなくなりました。そのとき今後雇う非常勤職員は、5年で自動的に雇い止めにする、という規定ができました。非常勤は一年契約の人が多いですが、更新するとしても4回まで、それ以上は絶対にしないということです。
そして、来年の3月にその最初の5年目にあたる職員がでる、それを予定通り、首にすると発表しました。
つまり毎年毎年、自動的に大量解雇をしていくということです。
今や京大では非常勤職員は全職員の半数超の2600名、そのうち1300名が法人化以後雇った人です。
来年度は、約100名雇い止めにするとの発表でした、それを毎年やっていく、というのです。
首切りのための首切り
強調したいのは、これは工場のラインが止まるためのような、業務縮小のための首切りではないということ。(首をきったらその分また新しく雇わなくてはいけない。)
もっと悪質です。
一言でいうと更新期待権が生じないようにするための首切りなのです。
つまり、期待権の発生を予防し、いつでも簡単に首を切れる人員を確保するために5年で首を切るということです。
5年条項とは首切りのための首切りなのです。
補助的な仕事など存在しない
当局は、非常勤は臨時的で補助的なので(くびを切っても)トラブルにならない、と現場無視の発言を繰り返しています。(私たちはこの発言に怒って、なめるなとストライキに立ち上がりました。)
非常勤の業務は事実上、臨時的でも補助的でもない。一人で職場をまかせられている非常勤もいる。専門的なもの、責任の重い仕事、他の人に指示をする立場の人もいます。そもそも補助的な仕事など存在しているのでしょうか?
当局に補助的とはどういう意味か、と聞いても補助的となっているというような回答しかありません。
結局、補助的といって、我々非常勤を低賃金でやとっているだけなのです。
つまり、大事な仕事をしていても、たいしたことのない仕事といわれ、低賃金にされている。こんなに人を馬鹿にした話はありません。
現場は困っている
5年問題が表面化してから、我々直接の当事者以外からも反対の声があがり始めました。辞めさせられる方も大変なら、残される方もたいへんです。
5年も働いてせっかく仕事を覚えた人が、辞めるわけですから、同僚だった職員や教官におおきな負担がかかります。秘書、実験の技官、図書館司書、異動のない非常勤が常勤よりも仕事に精通しているということはよくあるので、下手すると仕事のスキルが継承されなくなるということもありえます。また、附属病院などからは、小間切れ雇用では、安全性に心配があるとの声もあがっています。
5年も雇用されたのですから、その仕事は臨時的業務ではなく、その人には適性があるわけで、できるだけ長く働いてもらおうと考えるのが普通でしょう。それを一律にくびにするというわけですから、仮に企業の論理で考えても、無駄が多すぎます。
また、教育機関でもある大学が人を育てず、人を使い捨てにしてよいのか、という疑問も上がってきます。
労働意欲が下がる
5年条項に該当する非常勤職員の方から聞くのは、働く気力がなくなってきたという声です。
もともと、時給も安く、昇進もなければ、昇給もあってもわずか、ボーナスも無しという状況ではなかなか労働意欲は保ちにくい。その上、馬鹿にされたような使い捨てでは、働く気がしなくなってくるのは当然です。
実際優秀な人から辞めていきます。
女性労働の搾取である
京大非常勤職員の85パーセントは女性です。
大西珠枝理事は5年問題に対し、ゼロ回答を行った同日に、男女共同参画推進アクション・プランを発表しました。その中で、管理職の女性の割合を増やす非常にひかえめながら数値目標が発表されました。それはよいとは思いますが、しかし、非常勤職員の問題には全く触れませんでした。
非常勤職員を雇用の調整弁、つまり、非常勤職員2600名の85%の2200名の女性たちを雇用の調整弁にしながらの、男女共同参画っていったいなんなのでしょうか?
有期雇用の問題点
私たち非正規雇用者のほとんどは「有期雇用」です。期間満了とともに失職する不安定な身分で、つねに更新や雇い止めの不安におびえながら働いてきました。
現在、1年契約を反復更新した後に、通算3年や5年で雇い止めにする、という働き方のルールが急速に広まっています。京大など、2004年に各地の国立大学が法人化されてこの決まりが導入される以前から、私立大学では広く行われていた雇用形態です。また大学に限らず、官公庁などさまざまな職場でも、この3年や5年という雇用期限がどんどん増えている、と聞きます。
「3年でくび」「5年でくび」というルールは、なぜ作られたのでしょうか?
そもそも労働者を解雇するためには、厳しい法的要件を満たすことが必要とされています。それは、判例法理によって「解雇の4要件」として確立され、近年では労働契約法のなかに明文化されました。
■解雇の4要件…①人員整理の必要性 ②解雇回避努力義務の履行 ③被解雇者選定の合理性 ④手続きの妥当性
■労働契約法16条…解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
たとえ短期の契約であっても、反復更新をくりかえすと、「次の年も更新されるだろう」という期待権が発生します。この期待に反してまで雇い止めをするためには、合理的な理由(解雇の4要件)が必要になるのです(ex. 東芝柳町工場事件)。「雇い止め」(すなわち契約満了)は、「解雇」と同じ法的意味を持つのです。
そこで、期待権が発生することをあらかじめ予防し、いつでも理由なく、自由に首を切れる状態にしておこうと考えられたのが、この「3年でくび」「5年でくび」ルールなのです。
しかし、数年ごとに労働者を辞めさせ、新たに人を入れ替えるのですから、上記①の「人員整理の必要性」を満たさないことは言うまでもありません。積み重ねられたスキルや経験はムダになり、働く者の意欲は減るばかりです。そしてなにより、それは働く者の尊厳を奪う、ひどいやり方です。
「3年でくび」「5年でくび」は、解雇規制を逃れるための、「首切りのための首切り」でしかありません。
いま、EU諸国では、このような有期雇用を用いた脱法を、入り口から規制するのが主流になっています。恒常的な業務に有期雇用をあてることを禁止し、一時的・臨時的な業務でなければ、そもそも有期契約を結ぶことができない、とする考え方です。ILO(国際労働機関)158号条約は、期間を定めない長期の継続雇用が原則であること、有期雇用は合理的な理由がある場合にだけ認められる例外であること、などを定めています(日本は未批准)。
5年条項の問題点(PDF)
5年条項とは
大学、官公庁、一般企業の間で、更新の年限を定めた有期雇用が広がっています。
京大の場合、
2004年に小泉改革によって国立大学は法人化され、教職員は公務員ではなくなりました。そのとき今後雇う非常勤職員は、5年で自動的に雇い止めにする、という規定ができました。非常勤は一年契約の人が多いですが、更新するとしても4回まで、それ以上は絶対にしないということです。
そして、来年の3月にその最初の5年目にあたる職員がでる、それを予定通り、首にすると発表しました。
つまり毎年毎年、自動的に大量解雇をしていくということです。
今や京大では非常勤職員は全職員の半数超の2600名、そのうち1300名が法人化以後雇った人です。
来年度は、約100名雇い止めにするとの発表でした、それを毎年やっていく、というのです。
首切りのための首切り
強調したいのは、これは工場のラインが止まるためのような、業務縮小のための首切りではないということ。(首をきったらその分また新しく雇わなくてはいけない。)
もっと悪質です。
一言でいうと更新期待権が生じないようにするための首切りなのです。
つまり、期待権の発生を予防し、いつでも簡単に首を切れる人員を確保するために5年で首を切るということです。
5年条項とは首切りのための首切りなのです。
補助的な仕事など存在しない
当局は、非常勤は臨時的で補助的なので(くびを切っても)トラブルにならない、と現場無視の発言を繰り返しています。(私たちはこの発言に怒って、なめるなとストライキに立ち上がりました。)
非常勤の業務は事実上、臨時的でも補助的でもない。一人で職場をまかせられている非常勤もいる。専門的なもの、責任の重い仕事、他の人に指示をする立場の人もいます。そもそも補助的な仕事など存在しているのでしょうか?
当局に補助的とはどういう意味か、と聞いても補助的となっているというような回答しかありません。
結局、補助的といって、我々非常勤を低賃金でやとっているだけなのです。
つまり、大事な仕事をしていても、たいしたことのない仕事といわれ、低賃金にされている。こんなに人を馬鹿にした話はありません。
現場は困っている
5年問題が表面化してから、我々直接の当事者以外からも反対の声があがり始めました。辞めさせられる方も大変なら、残される方もたいへんです。
5年も働いてせっかく仕事を覚えた人が、辞めるわけですから、同僚だった職員や教官におおきな負担がかかります。秘書、実験の技官、図書館司書、異動のない非常勤が常勤よりも仕事に精通しているということはよくあるので、下手すると仕事のスキルが継承されなくなるということもありえます。また、附属病院などからは、小間切れ雇用では、安全性に心配があるとの声もあがっています。
5年も雇用されたのですから、その仕事は臨時的業務ではなく、その人には適性があるわけで、できるだけ長く働いてもらおうと考えるのが普通でしょう。それを一律にくびにするというわけですから、仮に企業の論理で考えても、無駄が多すぎます。
また、教育機関でもある大学が人を育てず、人を使い捨てにしてよいのか、という疑問も上がってきます。
労働意欲が下がる
5年条項に該当する非常勤職員の方から聞くのは、働く気力がなくなってきたという声です。
もともと、時給も安く、昇進もなければ、昇給もあってもわずか、ボーナスも無しという状況ではなかなか労働意欲は保ちにくい。その上、馬鹿にされたような使い捨てでは、働く気がしなくなってくるのは当然です。
実際優秀な人から辞めていきます。
女性労働の搾取である
京大非常勤職員の85パーセントは女性です。
大西珠枝理事は5年問題に対し、ゼロ回答を行った同日に、男女共同参画推進アクション・プランを発表しました。その中で、管理職の女性の割合を増やす非常にひかえめながら数値目標が発表されました。それはよいとは思いますが、しかし、非常勤職員の問題には全く触れませんでした。
非常勤職員を雇用の調整弁、つまり、非常勤職員2600名の85%の2200名の女性たちを雇用の調整弁にしながらの、男女共同参画っていったいなんなのでしょうか?
有期雇用の問題点
私たち非正規雇用者のほとんどは「有期雇用」です。期間満了とともに失職する不安定な身分で、つねに更新や雇い止めの不安におびえながら働いてきました。
現在、1年契約を反復更新した後に、通算3年や5年で雇い止めにする、という働き方のルールが急速に広まっています。京大など、2004年に各地の国立大学が法人化されてこの決まりが導入される以前から、私立大学では広く行われていた雇用形態です。また大学に限らず、官公庁などさまざまな職場でも、この3年や5年という雇用期限がどんどん増えている、と聞きます。
「3年でくび」「5年でくび」というルールは、なぜ作られたのでしょうか?
そもそも労働者を解雇するためには、厳しい法的要件を満たすことが必要とされています。それは、判例法理によって「解雇の4要件」として確立され、近年では労働契約法のなかに明文化されました。
■解雇の4要件…①人員整理の必要性 ②解雇回避努力義務の履行 ③被解雇者選定の合理性 ④手続きの妥当性
■労働契約法16条…解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
たとえ短期の契約であっても、反復更新をくりかえすと、「次の年も更新されるだろう」という期待権が発生します。この期待に反してまで雇い止めをするためには、合理的な理由(解雇の4要件)が必要になるのです(ex. 東芝柳町工場事件)。「雇い止め」(すなわち契約満了)は、「解雇」と同じ法的意味を持つのです。
そこで、期待権が発生することをあらかじめ予防し、いつでも理由なく、自由に首を切れる状態にしておこうと考えられたのが、この「3年でくび」「5年でくび」ルールなのです。
しかし、数年ごとに労働者を辞めさせ、新たに人を入れ替えるのですから、上記①の「人員整理の必要性」を満たさないことは言うまでもありません。積み重ねられたスキルや経験はムダになり、働く者の意欲は減るばかりです。そしてなにより、それは働く者の尊厳を奪う、ひどいやり方です。
「3年でくび」「5年でくび」は、解雇規制を逃れるための、「首切りのための首切り」でしかありません。
いま、EU諸国では、このような有期雇用を用いた脱法を、入り口から規制するのが主流になっています。恒常的な業務に有期雇用をあてることを禁止し、一時的・臨時的な業務でなければ、そもそも有期契約を結ぶことができない、とする考え方です。ILO(国際労働機関)158号条約は、期間を定めない長期の継続雇用が原則であること、有期雇用は合理的な理由がある場合にだけ認められる例外であること、などを定めています(日本は未批准)。
by unionextasy
| 2009-12-17 09:18
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