電車特定区間 単語

電車特定区間とは、JRにおける運賃制度の1つである。

概要

電車特定区間は、旅客営業規則78条に定められた、通常の区間とは異なる賃率を用いるとした区間のことである。

電車特定区間では、以下のような規則が用いられる。

1. 賃率が通常の幹線より低い
2. 10kmまでの運賃も、通常の幹線より安い
3. 鉄道駅バリアフリー料金の対象となる
4. 首都圏に関しては、10円単位運賃を出す際端数切り上げ(関西圏に関しては他地域と同様四捨五入)

まず、1から順にみていく。

賃率の違い

賃率は、以下のようになっている(単位は円/km)。N/Aと書いてあるのは、当該地域に関して賃率が定められていない(km数の関係でその地帯に到達することがあり得ない)ということを意味する。

この賃率をどう使うかに関して解説する。

• 例1: 東京→新宿(中央線快速電車に乗車した場合)
  • 営業キロは10.3kmなので、端数を切り上げて11km。11kmから15kmは13kmの運賃で計算する
  • 東京山手線内で完結するため、賃率は13.25円/km。これに13kmを掛け算すると172.25円という数字が得られる
  • 100km未満なので10円未満の端数を切り上げ、180円となる。その後、1.1を掛け算し、ICカード運賃の場合は小数点以下切捨て、きっぷの場合10円未満の端数切り上げで、ICカード198円、きっぷ200円となる
  • 最後に鉄道駅バリアフリー料金10円を足すと、ICカード208円、きっぷ210円となる
• 例2: 奥多摩→千葉(青梅線・中央快速線・中央総武各駅停車経由)
  • 営業キロは110.8kmなので、端数を切り上げて111km。100kmから120kmは110kmの運賃で計算する
  • 電車特定区間で完結するため、賃率は15.30円/km。これに110kmを掛け算すると1683円という数字が得られる
  • 100kmを超えるため、100円未満の端数を四捨五入し、1700円となる。その後、1.1を掛け算し、ICカード運賃の場合は小数点以下切捨て、きっぷの場合10円未満の端数切り上げで、どちらも1870円となる
  • 最後に鉄道駅バリアフリー料金10円を足すと、1880円となる
• 例3: 東京→小田原(東海道線に乗車した場合)
  • 営業キロは83.9kmなので、端数を切り上げて84km。80kmから90kmは85kmの運賃で計算する
  • 本州3社幹線で完結するため、賃率は16.20円/km。これに85を掛け算すると1377円という数字が得られる
  • 100km未満なので10円未満の端数を切り上げ、1380円となる。その後、1.1を掛け算し、ICかーーど運賃の場合は小数点以下切捨て、きっぷの場合10円未満の端数四捨五入で、ICカード1518円、きっぷ1520円となる

遠距離の具体例を出してないが、これは、300kmを超えるとなると電車特定区間完結はまず大回り乗車が前提となってくるためである。幹線ならいくらでも距離取れるが、比較としては微妙になる。

10kmまでの運賃の違い

10kmまでの運賃も、他よりも安くなる(以下の運賃は鉄道駅バリアフリー料金込み。東京電車特定区間、幹線・地方交通線は/の前がJR東日本ICカード運賃、後がそれ以外の運賃)。

鉄道駅バリアフリー料金

これらの地域は、一般に利用客が多いため、鉄道施設のバリアフリーが強く求められる。このことから、鉄道駅バリアフリー料金制度(旅客営業規則140条)により、10円の料金が加算される。定期券に関しては、通学定期券は対象外、通勤定期券では適宜定められた額を加算する。

なお、鉄道駅バリアフリー料金制度は2024年4月以降、電車特定区間がないJR東海名古屋地区でも導入されている。

ICカード運賃

JR東日本のSuicaエリアでは、1円単位運賃を採用し、端数処理を行うのだが、その際のルールは、1円未満の端数切捨てである。一方、きっぷの運賃は、電車特定区間完結の場合は10円未満の端数切り上げ、それ以外は10円未満の端数四捨五入と、ルールが異なる。

このため、電車特定区間完結の場合は、おとな運賃の場合、常にICカード運賃のほうがきっぷの運賃以下になる^[1]が、そうでない場合、ICカード運賃のほうがきっぷの運賃より高くなる場合がある^[2]。

電車特定区間の範囲

首都圏

首都圏の電車特定区間は、E電区間とも呼ぶ。

• 東海道本線 - 東京-大船・品川-新川崎-鶴見-羽沢横浜国大
• 山手線 - 全区間
• 赤羽線 - 全区間
• 南武線 - 全区間
• 鶴見線 - 全区間
• 武蔵野線 - 全区間
• 横浜線 - 全区間
• 根岸線 - 全区間
• 横須賀線 - 全区間
• 中央本線 - 神田-代々木・新宿-高尾
• 青梅線 - 全区間
• 五日市線 - 全区間
• 東北本線 - 東京-大宮・日暮里-尾久-赤羽・赤羽-武蔵浦和-大宮
• 常磐線 - 日暮里-取手
• 総武本線 - 東京-千葉・錦糸町-御茶ノ水
• 京葉線 - 東京-千葉みなと・市川塩浜-西船橋-南船橋

関西圏

• 東海道本線 - 京都-神戸
• おおさか東線 - 全区間
• 大阪環状線 - 全区間
• 桜島線 - 全区間
• JR東西線 - 全区間
• 山陽本線 - 神戸-西明石
• 関西本線 - 奈良-JR難波
• 片町線 - 長尾-京橋
• 阪和線 - 全区間

新幹線について

新幹線に関しては、上記並行区間内相互間、もしくは上記並行区間を含み、前後を加えて上記区間内で完結する場合は、電車特定区間扱いとする。ただし、新神戸駅に関しては電車特定区間にあるかのように扱う。

関連商品

関連リンク

• きっぷあれこれ - JR東日本

関連項目

• 乗車券
• JR東日本
• JR西日本

脚注

1. *こども運賃の場合、端数処理の違いにより必ずしもICカード運賃が安くなる保証はない。例えば東京・秋葉原間はIC73円、きっぷ70円となり、きっぷの方が安くなる
2. *例として、東京→国府津(経由: 東海道線)の場合、IC1342円、きっぷ1340円となる