江戸を斬るとは、TBS系列で月曜夜8時にナショナル劇場(現・パナソニックドラマシアター)枠にて全8シリーズが放送された日本のテレビ時代劇のことである。
第1作:江戸を斬る 梓右近隠密帳
第2作:江戸を斬るII
第3作:江戸を斬るIII
第4作:江戸を斬るIV
第5作:江戸を斬るV
第6作:江戸を斬るVI
第7作:江戸を斬る
第8作:江戸を斬る
主演は第1作が竹脇無我、第2~6作が西郷輝彦、第7~8作が里見浩太朗。
1973年9月24日~1974年3月25日に放送された記念すべきシリーズ第1作。全26話。主演は竹脇無我。
主人公の梓右近は将軍・徳川家光の異母弟・保科正之の双子の弟であり、双子は忌み嫌うものとして捨てられたが、
大久保彦左衛門に育てられ、現在では長屋に気ままに暮らしている浪人という設定。
3年ぶりに再会した彦左の口ききで将軍の依頼を引き受けた(最初は断ったが兄・正之の説得で引き受けた)右近が、葵の紋所入り懐剣を手に悪を成敗するというもの。
『江戸を斬るII』以降とはキャラクターや時代設定が違い、続編も作られていないのが本作の特徴である。
オープニングでは、松山兄弟が3番目に、鮎川いづみと榊原るみが4番目にそれぞれ連名でクレジットされている。
1975年11月10日~1976年5月17日まで放送されたシリーズ第2作。全28話。
この『II』から『VI』までは西郷輝彦が主演となる。
『II』から主人公が『遠山の金さん』でおなじみの遠山金四郎となっているが、桜吹雪の彫り物は滅多に見せることはなく(ほとんどがチラ見せ程度)、お白州でも僅か1回という出番で、見せる時も「よくも俺にこんな恥をかかせやがったな!」と言うのが特徴(大滝秀治演じる悪医者相手の時は怒り心頭)だった。
物語は天保年間、魚政の居候である遠山家の次男坊・金四郎が北町奉行となり、紫頭巾(おゆき)や鼠小僧(次郎吉)と協力して時の老中・水野忠邦と南町奉行・鳥居甲斐守の恐怖政策に立ち向かう…というもの。
1977年1月17日~7月11日まで放送されたシリーズ第3作。全26話。
物語は、前作最終回で南町奉行となった金四郎が火盗改・脇坂重蔵を向こうに回しながらも悪に挑むというもの。
このシリーズでようやく金四郎とおゆきが結婚する(第13話)。
前作からの続きで、金四郎の祖母・うめ(おばば様)や遠山家の女中・咲、金四郎配下の役人・片桐弥平次と岡っ引き・佐吉が新たに登場して前作より一層賑やかさが増した。
その一方で、魚政の次女・お小夜や次郎吉の兄貴分だった太助、金四郎の手下だった源七は姿を消し、気弱な眼鏡君を演じていた次郎吉も今作では魚政で一番の兄貴分となり(眼鏡もしていない)、前作最終回で江戸追放になったはずの閻魔の伊蔵とその手下・銀次も江戸で岡っ引きをやっている(しかも最終2話で「紫頭巾=おゆき=雪姫」を知ったこともなかったことにされた)など、続編でありながらリセットされている部分もある。
なお、お白州での桜吹雪のお披露目だが、前作は第19話という中盤以降の遅い回だったが、本作では第3話という早い回での出番であった。
1979年2月12日~8月6日まで放送されたシリーズ第4作。全26話。
この『IV』より、金四郎は普段は「大工の金公」と称して事件の探索に乗り出すようになり、同心・石橋賢吾、女岡っ引き・お京、その子分の金太が金四郎の配下として登場する(ただしお京と金太は「金四郎=金公」であることを知らない)。
そして、次郎吉が魚政から独立し、『大岡越前』の猿の三次のように小料理屋「まさご」の主人となった。
また、うめ(おばば様)はいなくなったものの女中の咲は居残り、『VI』まで登場している。
本作以降の特徴と言えば、桜吹雪を見せる頻度が増えたことだろう(といっても『遠山の金さん』に比べると少ない)。
悪党の屋敷に乗り込む時、大工の格好そのままで乗り込む場合は見せないが、着流しに頬被りの時は見せるといった具合(見せない場合もあるが)。
この作品のみ三船プロが製作協力にあり、三船敏郎もゲスト出演している。
また、撮影場所も京都ではなく、桜吹雪の出来がかなりいい加減だったらしい。
1980年2月11日~8月6日まで放送されたシリーズ第5作。全26話。
基本的なことは『IV』と変わらないが、この作品から決まったことが二つ。
一つがほぼ毎回、悪人に向かって「お江戸の悪を許しちゃおけねぇ男よ!」と言うようになった事で、もう一つが直後の殺陣のシーンで勇ましい戦闘BGMが流れるようになったことだろう(セリフに関しては、それ以前のシリーズでも似たようなことを言ってはいたが、1~2回ぐらいであり決めゼリフでもなかった)。
本作は他のどのシリーズ(里見浩太朗主演は除く)よりも桜吹雪の頻度が多かった。
ちなみに、ラストの殺陣の場面で使われるBGMだが、後述の『風鈴捕物帳』からの流用である。
1981年2月16日~8月24日まで放送されたシリーズ第6作。全28話。
本作の特徴は、なんと言ってもおゆき役の松坂慶子が多忙により出演回数が激減していることで、全28話中7話(第1、2、6、7、10、17、28話)のみの出演となっており、出演回のOPではクレジットはトメ(一番最後)となっている。
また、おゆき登場回でも紫頭巾の出番はごく僅か(第1話と第6話)。
本作以前の番組ラストでは、江戸の町を金四郎とおゆきが仲良く歩いていくというのがほぼお約束だっただけに、ほぼ毎回、金四郎が一人で歩いていくラストはなんだか物足りなさを感じた視聴者も多いはずであろう。
ちなみに最後までお京、金太、堅太郎ぼっちゃんの3人は「金四郎=金公」であることを知らないままだった。
通常、2番手は松坂慶子だが、本作では由美かおるが2番手となっている。
1987年1月16日~8月17日まで放送されたシリーズ第7作(タイトルには『VII』の文字はない)。全30話。
本作から主演は里見浩太朗となる。
本作の特徴としては、『遠山の金さん』みたいに遊び人の金さんとして活動していることで(一応、火消し一番組の居候という一面もあるが…)、序盤こそ桜吹雪は控えめだったものの、それ以降は見せる頻度がかなり高くなっている。
それとは別に、白頭巾の侍の姿に扮し、『VI』まで使われた紫頭巾のテーマ曲をバックに悪党をやっつけることも何度かあった(白頭巾で痛めつけ た後、遊び人の格好で屋敷に乗り込み桜吹雪の彫り物を見せるというパターンもある)。
また、『梓右近隠密帳』では葵小僧、『II』~『VI』では次郎吉を演じた松山英太郎が、本作では金四郎配下の北町奉行所同心を演じていることも特徴だろう。
ちなみに里見浩太朗は、4年前の1983年(『VI』終了から2年後)にフジテレビ系列でやっていた『秘剣揚羽蝶 源氏九郎颯爽記』という時代劇スペシャルで、遠山金四郎を主役の源氏九郎と二役で演じていたことがあるが、そこでも普段は「遊び人の金さん」に扮していた。
1994年1月31日~7月25日まで放送されたシリーズ第8作(タイトルに『VIII』の文字はない)。全26話。
現時点では里見浩太朗主演の最終作であり、シリーズ最終作でもある。
本作の特徴としては、おゆき=紫頭巾が復活したことだろう。
第5話より後述の『風鈴捕物帳』のOPアレンジをひっさげて登場するが…なんと言っても登場時間が短かった。
また殺陣のシーンでは、『V』以降で使われた戦闘BGMがほぼ毎回使われたり、金四郎が懇意にしている料亭の女将役に春川ますみを配するなど、西郷版の雰囲気に近いものとなっている。
本作の見どころといえば…回数は少ないが、色川伝兵衛と鳥居耀蔵のコントぐらいのものか…。
なお、桜吹雪を見せる頻度は、シリーズで一番高い(見せない回が稀)。
ちなみに最終回のゲストは倉田てつをである(『水戸黄門』最終作の最終回のゲストもそう)。
オープニングでは、渡辺徹が2番目、城之内早苗と中野みゆきが3番目(連名)、江藤潤が4番目にクレジットされているが、渡辺徹が登場しない回では城之内&中野ではなく江藤潤が2番目となっている。
『II』以降のもう一人の主役と言ってもいいのが松坂慶子演じる「紫頭巾」である。
紫頭巾の正体は魚屋「魚政」の長女の「おゆき」で、この「おゆき」は実は水戸藩主・徳川斉昭の娘である。
(松坂慶子自体は『梓右近隠密帳』にも別の役で出演している。)
金四郎とおゆきは相思相愛であり、『III』第13話にてようやく結婚している。
結婚後もおゆきが紫頭巾として活動しているため、金四郎はなんとかやめさせようと躍起になるもの、生来のじゃじゃ馬ゆえになかなか言うことを聞いてくれないのが悩みの種であろう。
ただ、紫頭巾が現れる時は大概が金四郎のピンチの時なので、金四郎もあまり強く言えていない。
視聴者にとっては、このときのラブラブぶりも見どころのひとつである。
『IV』以降、演じる松坂慶子が多忙のためか出演が減っており、『Ⅵ』ではそれが激減している。
出演していても紫頭巾が出なかったりと残念なことが多くなっている。
なお、里見浩太朗版の第1作目は設定がリニューアルされたため紫頭巾は登場することがなかったが、それから7年後に復活した第2作目はパート2~6に近い設定になったためか、紫頭巾=ゆきも復活、第5話より登場する。
第2作目でのゆきは大御所(徳川家斉)の御落胤の一人という設定で、演じたのは演歌歌手の城之内早苗である。
『江戸を斬るV』以降の殺陣シーンのほぼ毎回で勇ましいBGMが流れるようになったが、実はこの曲は金四郎役の西郷輝彦主演の時代劇『風鈴捕物帳』からの流用曲である(放送は『IV』の直前)。
ただし『風鈴捕物帳』での使用例は第7話と最終回のみであり、『江戸を斬る』のように主役(新吉)のアクションシーンで使われる事はなかった。なお、OPアレンジ(初期殺陣のシーンやラストシーン、次回予告で使用)曲も『江戸を斬るⅧ』の紫頭巾の登場シーンで使われている(逆に『江戸を斬る』のBGMも『風鈴捕物帳』で使用されている)。
ちなみに主演の西郷輝彦をはじめとして、谷勘一、山口いづみ、鈴木ヒロミツ、片岡千恵蔵など、『江戸を斬る』シリーズの出演者がレギュラー出演しており、里見浩太朗も第1話で南町奉行・筒井伊賀守役で出演している。
また、音楽担当はいずみたく、ナレーターは芥川隆行と共通している。
また、『VII』出演者の大半が出演しているナショナル劇場時代劇『翔んでる!平賀源内』でもこの曲が使用されている。
なおここまで書いておいてアレだが、『風鈴捕物帳』は石森章太郎(現・石ノ森章太郎)の原作をもとにテレビ朝日系列で放送された東映制作の時代劇であり、TBS系列のナショナル劇場枠ではない(東映は『江戸を斬る』では製作協力)。
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最終更新:2024/12/23(月) 10:00
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