いちご(苺)とは、植物の一種。日本人の名前にも使われる。英語ではストロベリー(strawberry)。
同じバラ科のキイチゴ、ヘビイチゴなども総称して「いちご」とよぶことがあるが、本項目では一般的なオランダイチゴについて記述する。
【分類】バラ目バラ科イチゴ属
【学名】Fragaria ×ananassa
(学名の由来)Fragaria→「香りのある」を語源とするラテン語古名から/ananassa→パイナップルの(香りが似ているから)
【和名】オランダイチゴ
日本人にとって馴染み深い果実の一つである。生で食べるほか、ショートケーキやいちご大福などのお菓子に欠かせない。いちごジャムの用途も高い。また、比較的栽培しやすい野菜のため、家庭菜園で作っているという家庭も多い。
いちごは果物と認識されることが多く、青果市場ではスイカやメロンとともに「果物」として扱われているが、いちごは木ではなく草なので、農林水産省などの統計においては、「野菜(果実的野菜、果菜とも)」と分類されることもある。
露地栽培などが多かった時代は春~夏頃の一時期に生産されることの方が多かったが、現在はほとんどがハウス栽培であり、栽培技術・育苗技術の進歩により、クリスマスシーズンの12月の方が出荷量が多くなっている。
イチゴは温暖な気候で育ち、日射しを好むが乾燥に弱いのが特色。また病虫害の被害も受けやすい上、生産地同士の競争が熾烈なため、家庭栽培で楽しむイメージとはほど遠いぐらいにプロの間では栽培が難しい作物となっている。また、露地栽培の旬は初春であるので春を告げる味覚として知られたが、近年はハウスものが多数出回るようになり、10月から5月にかけて旬がやってくる。
一昔前は東日本(栃木県)の「女峰」と西日本(福岡県)の「とよのか」が二大勢力であったが、近年は1996年に作出された「とちおとめ」が生産量1位に躍り出ている。西日本も「とよのか」の孫品種「あまおう」で勢力の挽回を目指している。そして、近年は佐賀から生まれた「さがほのか」、静岡県から生まれた「紅ほっぺ」も大人気となっている。
また、全国のあちこちでご当地ブランドが多いのが、イチゴという果物の特色であり、静岡県の「章姫」、奈良県の「あすかルビー」、そして例の泥棒騒ぎで知られる愛媛県の「レッドパール」(または「あまおとめ」)など枚挙に遑がない。そのため、いちごの場合は産地の名称より、生産県名とその品種で選ばれることが多い。そして、このブランド開発競争はとにかく熾烈であり、5年経てば、新種に淘汰されていく。ちなみに、例を挙げた上の3ブランドも、有名になった頃には既に一世代前の品種となっている、げに恐ろしき世界である(静岡は「きらぴ香」、奈良県は「古都華」、愛媛県は「紅い雫」が最も新しい)。
日本で栽培が盛んな県は何といっても栃木県と福岡県である。前述した女峰ととちおとめ、そしてあまおう駆逐用兵器「スカイベリー」を送り出したのが栃木、大して「とよのか」と「さちのか」、「あまおう」を送り出したのが福岡であり、東西の横綱といえるだろう。だが、それでも栃木県が群を抜いており、40年以上日本一の座を守り続けている。
そんな栃木県の中でも、真岡市の生産量が圧倒的であるが、この功績の半分以上は旧二宮町によるものである。二宮町は全国に先駆けてウォーターカーテンを利用してハウスを温める方法を実施した実績も持つ。他には鹿沼市、壬生町、小山市など大規模な産地が多く、その大半はハウス栽培となっている。また、大都市圏から近いため、いちご狩り用の観光農園も多く、そこではいちご狩り向けの「とちひめ」なんて品種もある。なお、栃木県以外にも茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県でもいちご栽培は盛んに行われており、「ひたち姫」、「いばらキッス」、「やよいひめ」(群馬)、「彩のかおり」(埼玉)、「チーバベリー」などの品種がある。
福岡県では県南部の筑後川下流付近が一大産地。中でも久留米市と八女市、大川市、広川町などで生産が盛んとなっている。福岡県産は元々「とよのか」が一世を風靡したが、それでも西日本の市場が中心で、全国には出回らなかった。だが俄然、全国から注目を浴びるようになったのは、6年の歳月を掛けて開発された、打倒栃木兵器「あまおう」(あまい、まるい、おおきい、うまい、高い)が世に送り出されてからである。実際、福岡県では一般向けの「さちのか」と高級品の「あまおう」を分けて生産している。…ところが、この「あまおう」は福岡以外で作れないため、九州の産地で幅を利かせているのは、佐賀生まれの「さがほのか」であり、3位の熊本県や生産上位の長崎県も大半がこの品種を作っているという(当の本人が負けてるのはやっぱし佐賀だから)。そして、福岡いちごを牽引した「とよのか」は殆ど見られなくなってしまい、かろうじて子孫の「さちのか」が見られる程度。また、熊本県は空回りした「ひのしずく」に変わって熊本VS03という秘密兵器、「ゆうべに」という新品種を開発し、人気となっている(開発戦争は続く…)。
そして、関東、九州に次ぐ第三勢力が、静岡県(それと愛知県、岐阜県)の東海勢である。ここでも知っておきたい品種がある。社会の教科書にも登場する久能山の石垣いちごも100年以上続く歴史ある産地でもあり、ここで生産される「章姫」も静岡発祥の有名銘柄で、栃木でも栽培されている。だが、それ以上に脚光を浴びているのが、この章姫を交配させて誕生させた「紅ほっぺ」であり、全国の生産量はとちおとめ、さがほのか、あまおうに次ぐ勢いである。そして、県産いちごの8割が既に「紅ほっぺ」生産に切り換えており、北関東勢、九州勢にとって新たな強敵となっている。また、愛知県も「ゆめのか」というオリジナル品種を開発している。
ちなみに、2014年をベースに生産上位県を順番に並べると栃木県、福岡県、熊本県、静岡県、長崎県、愛知県、佐賀県、茨城県、千葉県、埼玉県、群馬県、岐阜県…となっており、やはり関東平野、東海、九州が上位を占めている。
また、宮城県も栽培が盛んで、東日本大震災で主産地だった山元町、亘理町が甚大な被害を受けたため、順位は大きく下げていた。しかし、後にITの技術を生かした集約型農業で復活し、2017年には被災前の水準まで生産量を回復させ、「もういっこ」というブランド品で攻勢をかけている。
他に有名なのが徳島県佐那河内村の超高級イチゴ「ももいちご」「さくらももいちご」。一個600円という破格の代物である。あと、1年もしたらまたここの勢力図も塗り替わるのかも知れない。
世界的には、アメリカ合衆国(特にカリフォルニア州)の生産量が圧倒的に多く、ロシア・スペインがそれに続く。ちなみに、海外産のイチゴは加工品が中心で、それゆえ保存性を高めるため酸味が強い。日本ではあまり消費者に受け入れられず、そのため日本の輸入量は低迷している。反対に、生で食べる用途では日本が世界一である。
また、元々は変異種だった実が白いイチゴも人気となっており、味もさながらデコレーションに映えるので人気が高い。
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最終更新:2024/12/23(月) 14:00
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