長文ですみません。 遠藤周作の小説「海と毒薬」の登場人物である田部夫人が印象的で好きだった読者の方いますか? このキャラクターを概説すると 田部夫人は ・医学部長の親類であるため医学部内の権力闘争に利用される結核患者, ・若く美しく教養ある女性である。 ・手術で苦しんで死ぬ 以下印象的な場面 「黒い長い髪を清潔な枕カバーの上に思い切りといて、何時も仰むけにジッと寝ている女性だった。読書好きらしく陽のよくあたる大きな窓の下には勝呂の読んだことのない文学書などが並べてあった。胸もとを拡げる彼女は病人とはとても思われぬ程美しい皮膚を持っていた。主人は海軍で遠い所に行っているそうである。そのためか、むっちりと膨らんだ乳房の先も娘のように小さく赤かった。」 「ベッドの上に上体だけ起して、若い人妻は右手で寝巻の襟をつまみながら、頰に落ちた髪をかきあげて微笑む。」 「おやじが聴診器をあててむっちりとした彼女の胸の鼓動を聞いている時、勝呂はなぜかある妬ましさを感じる。それはこの美しい人の夫にたいする妬ましさなのか、自分には生来、得られそうもない幸福への妬ましさなのか、それとも暗い大部屋で横たわっている患者に代っての単純な義憤なのか、彼にはわからなかった。」 「二人の看護婦が田部夫人の裸体を折りまげるように持ち上げて手術台の上に乗せる。その手術台のかたわらで、硝子のテーブルに乗せたニッケルの箱から、おやじは馴れた手つきで手術道具を並べはじめた。骨膜を剥がす工レバトリウムや肋骨刀やピンセットなどが互いに触れあってガチャッガチャッと音をたてる。田部夫人はその鋭い音をきくと一瞬、ピクッと身体を震わせたが、再び、ぐったりと眼をつむった。」