歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

愛着形成と社会的養護

今回は、変わった子育て本を読んだので、ご紹介します。「子育てで一番大切なこと 愛着形成と発達障害」(2018年)です。

 

本書を書いたのは児童青年神経医学講座の教授をされていた先生です。 お腹ぽっちゃり定年間際の児童精神科医杉本に、編集者のミサキが「子育て本を執筆してほしい」と依頼に来たところから対話形式で話が進んでいくというフィクションとなっています。執筆する本の構成に沿って様々な話題や研究を取り上げ対話していくのですが、世の中や医療に対する愚痴や突飛な解決策(案)が出てくるところが、他にはないとても面白い本だと思いました。

本書を読んで愛着形成と発達障害、社会的養護の問題について学んだので、まとめたいと思います。

 

 

子育ての基本

 

本書の中で何度も言及していたのは、生物学的に適した妊娠出産年齢は高校生~20歳くらいまでだということです。女性だけでなく、男性の年齢も自閉症スペクトラム障害の出生と関連があるそうで、母の出生時平均年齢は27 年以降は第1子が 30.7歳で横ばいというデータを見ても発達障害児が増えているというのは納得でした。

また、3歳までは子ども主体で子育てする大人が必要であり、現在の経済優先の働き方、つまり保育園に預けて両親が働きに行ってしまう環境というのは良くないそうです。これは、後述する愛着形成と発達障害に関係します。

子育てのキーワードは「安心」ということで、妊婦が安心して過ごせる環境、母親・父親、乳児が安心できることが大切であり、社会的にも経済的にも子育て世帯が安心できる政策が必要なのだということでした。

 

愛着形成

 

さて、愛着形成とは、「子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる人にくっつき安心しようとする行動」のことでです。乳幼児は、母親のところと外の世界を行ったり来たりしているうちに、徐々にはなれる距離が長くなっていきます。そして3歳頃までには、目の前にいなくてもお父さんやお母さんのイメージを子どもが呼び起こすことができるようになります(内在化)。「いないいないばぁ」で赤ちゃんが喜ぶのは目の前のお母さんが消えたり現れたりするからですね。3歳児にしても鼻で笑われてしまいます(笑)。だから、3歳までは親ができるだけそばにいた方が良いということですね。

発達の凸凹があったとしても、小学校中学年くらいには愛着形成が出来上がる子が多いのだそうです。

 

愛着形成を検査する「新奇場面法」という検査をすると、以下の4つのパターンに分かれます。

①安定型(B型):母親との分離で泣いて後追いをし、再開した時は大喜びでべたべたにくっつく

 ⇨子どもが親を安全基地として認識している(日本人の6割くらい)

②回避型(A型):母親との分離では不安を示さず、再開した時も目をそらす

 ⇨子どもが泣いても相手をせず、親に合わせようとしている(日本人の約15%)

③アンビバレント型(C型):分離の時に大泣きし、再開時には母親にくっつくだけでなく、叩いたり攻撃したりする

 ⇨親が自分の気分の都合で子供と関わっている(日本人の約1割)

④無秩序型(D型):分離はあっさり、再開の時には目を合わせず親にしがみついたり、離れたりとどこか怯えたような仕草を見せる

 ⇨子ども虐待が行われている時に起きるパターン(日本人の約15%)

これ、保育士さんがよく見ていますよね!母子分離の時にはちゃんと泣いた方が良いと聞いたことがあります。そして、D型が15%もいるって多すぎません??

この愛着形成がうまくいかないと、トラウマ的な出来事に対して脆弱になり、人生全体に大きな影響が出てしまうということでした。

 

 

 

今や子どもの1割が発達障害と言われていますが、自閉症スペクトラム障害の研究では、遺伝的な素因よりも環境因子による寄与が2倍くらいあったそうです。「発達障害考察本:31歳までグレーゾーンだった私がやってきた改善法」(2024年)でも"発達障害や精神障害の当事者に虐待環境で育った人が多い"と書かれていましたが、本書では子ども虐待による愛着障害を”第4の発達障害”と考えています。

 

児童自立支援施設(非行の子のための施設)での調査では、ほぼ全員が被虐待児であり、自閉症スペクトラム障害が7割に達し、注意欠陥/多動性障害は5割、どちらか一方でも持っている子は8割に上ったそうです。そして、その子の親も大半が元は同じ症状を抱えていた被虐待児だったということです。この世代間連鎖というのは、過去記事「貧困から抜け出そう」でもありましたね。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

特に母親が発達凸凹の問題を抱えていた場合、愛着形成がうまくいかず、子どもが問題を抱えやすいそうです。愛着障害によるトラウマへの脆弱性が、複雑性PTSDとなって子どもの不安定な精神状態につながります。

 

 

社会的養護

 

社会的養護には家庭的養護(養子縁組、里親など)と施設養護(乳児院、児童養護施設など)がありますが、大多数の先進国では乳児院は存在しないのだそうです。これは、愛着形成の時期に家庭的な養育を受けずに施設で過ごすと心身の発達に問題が生じることがエビデンスとして明らかだからです。

日本の児童養護施設では子ども4人に1人しか職員が配置されないため、3人の職員で3歳から18歳の40人を見なければいけません。子どもには被虐待児が多く、精神的に不安定な子も多いため、喧嘩や性問題が横行し、社会的養護施設がきちんと機能しているとは考えづらい状況なのだそうです。

 

ちょうど先日、3か月の赤ちゃんを里親として預かっているという方にお会いしたところで、本当に幼児期の家庭的な養育というのが大事なんだということを実感しました。私は、スモールビジネスを成功させて、将来的に児童養護施設を出た女の子のためのシェアハウス(歯科衛生士になりたい子を優遇)をしたいなと企んでいるのですが、愛着形成に問題があり、色々なトラブルが起きるということを分かった上で考えないといけないなと思いました。

 

 

まとめ

 

三つ子の魂百までと言いますが、本書を読んで、3歳までの愛着形成がうまくできないと、エピジェネティクス(環境からの刺激で、遺伝子のスイッチがオンになったりオフになったりする現象)などにより発達障害になりやすかったり、複雑性PTSDにより精神的に不安定になって発達障害のような症状を呈してしまうということがよく分かりました。

我が子も30歳を過ぎてからの子ですし、フルタイムで0歳から保育園に預けて働いていて、別れた夫は未診断のアスペさん(今は自閉症スペクトラム障害に統一、結婚後に判明した)なので、何もかも手遅れですね〜(笑) 未熟児&3月生まれで、学校でとても苦労したので、本書で提案されている幼稚園6年制+飛び級・落第ありというのはすごく良い仕組みじゃないかなと思って読みました。

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