肺がんの手術、延期してもええんか?

2020年12月23日
肺がんの手術、延期してもええんか?

写真は我が家の家族です。タイトル通り、怖い顔です。甘えん坊で狂暴。なでてほしがるくせに、さわりかたが気に入らないときは、容赦なくそのアイアンクローで小生の腕を引き裂こうとしています。お腹だして、横になるなら、犬ならば触ってあげないといけませんが、猫はそうではないようです。
おかげで、いつも傷だらけ♪ 手術まえの手を洗う時に、結構しみます、アルコールとかすごくしみます。
でも、くぅあわいぃ からOK!

で、先日から、当科の手術を止めてしまっています。手術になりそうな人も、なるべくオペしない方法での治療を検討しなくてはなりません。
オペもないならきっと、暇になったように思われていると思いますが(特に当院の職員のみなさん、「あいつ暇なくせに、なかなか回ってこんな―」って思ってるでしょ)、しかし、なかなかどうして、手術記録を整理したり、紹介元の先生へ連絡したり、患者さんに連絡したり、紹介先の病院に連絡したり、紹介状作ったり、データベースを整理したりと、めちゃくちゃ忙しいです。師走ですね。 
しかし、なによりも、
「手術を延期するならば、その間にがんは進行しないの?大丈夫なのか・・・?」
この疑問に対する答えを急いで出さないと、いけません。新型コロナで手術延期なんて、外科医人生で経験あるわけないので、調べる必要があります。
新型コロナの影響による手術の延期は、飛騨の話にとどまらず、世界中の外科医が困っているようです。
まずは、イングランドからの報告
https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(20)39825-2/fulltext

すごく詳細です。詳細すぎて、読むのに時間がかかります。
ざっくりと要約すると、
「3か月とか6か月も手術延期すると、確実にがん患者の寿命はちぢまるよ!」
まぁ、そりゃそうだよなと思います。
小生の臨床的な印象でも、だいたいそんなもんかなと思います。
3か月の手術延期で、イングランド全体で4700人の死亡超過が発生したとされています。
パンデミックの最たる地域であり(ヨーロッパ全体が)、そういう地域では、オペが3か月延期されることも珍しくないでしょう。いかに我々日本人が、恵まれているかを痛感します。ヨーロッパではやはり、かなり深刻な健康被害ととらえられているようで、すごいビッグデータをこの短時間にまとめられた、著者たちの努力は素晴らしいと思いました。データの比較方法は若干疑問はあるんですが、スピードが大事なんでしょうね。

3か月の延期はありえないとして、じゃぁ、何日くらいの延期ならば、許されるのか?
アメリカからの報告です。
https://journals.lww.com/annalsofsurgery/Citation/9000/Are_We_Harming_Cancer_Patients_by_Delaying_Their.94473.aspx

ちなみにタイトルは、
「Are We Harming Cancer Patients by Delaying Their Cancer Surgery During the COVID-19 Pandemic?」
「俺たち、がんの手術をおくらせることで、患者さんに害を与えているんじゃないか?新型コロナの流行とはいえ。」

タイトルがすごい論文なので、検索ですぐ目につきました。やはりタイトルは重要ですね(小生もブログのタイトルも常に考えています)。

アメリカ全体の臨床データ(National Clinical Database:NCD 日本にもありますね!)から、膨大なデータを抽出して、各種がんの診断時から手術されるまでの期間(待機日数とします)が、患者さんの予後と関係するか?を調べています。
ただし、データは新型コロナ流行前のものです。
これによると、例えば肺がんは、通常の手術待機日数は28日(ちなみに当院でもそれくらいです)。これにさらに14日くらいまでの待機日数ならば予後を悪化させない。すなわち、6週間くらいが、安全な待機日数だよとなっています。術前に化学療法を行った場合(術前補助化学療法といいます)、20週程度まで待機日数が伸びても大丈夫なようです。

すなわち、「診断から、2カ月以上、手術実施までにひにちがかかるならば、化学療法などでなんとか手術のタイミングを後ろにずらしましょう」 と、読み替えています。こういう場合、どういう薬を使うか?や、放射線治療も併用するか?については、また、調べる必要がありますが、最も患者さんにダメージが少なく、効果が強いものを選ぶのがセオリーかなと思ってます。

そういうわけで、当院で、いつになったら手術が再開できるのか?まったくわかりませんが、この方針を当科もとることとしました。

今回は、硬い内容ですいませんが、猫でも見て、なごんでください。
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