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島田荘司 『奇想の源流 島田荘司対談集』

奇想の源流―島田荘司対談集
1991年〜1995年の対談をまとめたもの。
「探偵小説論」「日本人論」「自動車論」「社会論」の4カテゴリーに分けられている。それぞれで展開される議論・主張は島田荘司の小説でもその端々に見られるものである。
ミステリー作家なのだから矢張り「探偵小説論」を主目的で手に取る読者が多そうだが、すると少し肩透かし感があるかもしれない。特に笠井潔、綾辻行人、井上夢人、歌野晶午との座談会は、一番血気盛んなのが島田荘司だが井上夢人が衝突を避けるような展開をするのが何とも言えず。なお綾辻行人がパズルに興味がないというのは、物凄く納得する。作品に現れている。
ではどこが印象に残るかというと、島田荘司が自ら一番の趣味という「自動車論」になる。自分は自動車に関する興味・知識はほとんどないため島田荘司と対談相手の岡崎宏司が何を言っているかは分からないが、物凄く楽しそうに談義しているのは伝わる。こんなに好きな分野でも、いや好きな分野だからこそなのか、自国の自動車について不満や愚痴をぶちまけるのがいかにも島田荘司らしい。日本車について岡崎宏司が「質のいいイワシの缶詰屋」と貶す一方で、島田荘司は「高級仕出し弁当屋」と揶揄する。何というべきか、面白く気合の入った喩えだと思う。