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島田荘司 『異邦人の夢』

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エッセイ集。再読の筈。
様々な雑誌に掲載されたエッセイを一冊にまとめたもので、その字数・テーマのいずれも統一感はなく、島田荘司の多様な趣味嗜好を知ることができる。
パリ・ダカ、占星術、ロンドン滞在記、ホームズ、ミステリー界隈の論議など内容は幅広く、しかし一方でそこかしこに著者の自動車論、日本人論、都市論、女性論などが見え隠れる。本書初版の刊行は平成元年。今も島荘作品に色濃く表出するこれらの要素は、三十年来、元号の始まりから既に確固たるものであったということだろう。
特に印象に残るのは、「十五年前の自分〈弟の死〉」。持論や判断に必ず根拠を示す著者が、この件だけは行動・結果を示すことに留めていて言葉少なである。配慮なのか覚悟なのか、様々な考えがあるだろうが、著者の人生を通して大きなターニングポイントであったことは明らかだったのだろう。