今日の産経ニュース(2024年12/31日分)(副題:世田谷一家殺人事件ほか)

<正論>国民にリスペクトされる組織へ 麗澤大学特別教授 元空将・織田邦男 - 産経ニュース*1
 自衛官の応募が少ないのは恐らく「待遇が悪い(低賃金、長時間労働、危険労働など)と思われてるから」でしょう。
 この辺りは「介護職員」など応募者が少ないとされる職業は全てそうでしょうが。そういう意味では「リスペクト」云々というのは少し話がずれています(勿論「五ノ井氏が告発したセクハラ問題」など、自衛隊の問題点を解消して「リスペクトされる組織」を目指すことは必要なことですが)。
 まあ、(自衛隊に限らず)
1)「待遇が悪いと見なされる組織」で「社会のリスペクト(あるいは構成員の自尊心)が得られるのか?」とか、
2)「社会にリスペクトがないから待遇が悪いのではないのか?(社会はそれなりのリスペクトとしてもっと待遇をよくすべきだ)」とか言うなら一理はあるでしょうが。


◆DNAから顔の復元?

DNA情報から「顔」浮上を 遺族ら法整備求める声 世田谷一家殺害24年 - 産経ニュース
 「個人識別の範囲でなく、DNAから遺伝子情報を割り出せれば犯人に迫れる」。
 (ボーガス注:世田谷一家殺人事件の捜査に関わった元成城警察署署長で)「宙の会」特別参与の土田猛さんはそう指摘する。
 米国では現場に残ったDNAの情報から犯人の似顔絵を作成し、犯人逮捕に至った事例もある。DNA情報から民族的ルーツや身体的特徴、容貌までも読み取れるようになりつつあり、土田さんは「捜査対象を絞る材料になる」と話す。

世田谷一家殺害事件の犯人に繋がるか…未解決事件犯人のDNAから顔再現する“ゲノムモンタージュ” 犯罪被害者遺族も切望|FNNプライムオンライン
 アメリカではバージニア州にあるパラボン社が、事件現場に残されたDNAから犯人の顔を再現する「ゲノムモンタージュ」を作成し、長期未解決事件=コールドケースの捜査で活かしているというのだ。
 2010年、アメリカ・ユタ州で発生した64歳の女性が殺害された事件では、現場に残された犯人のDNAを元にパラボン社が作成したDNAモンタージュ画像や、DNAから家系を辿ったことがきっかけとなり犯人を割り出し、逮捕するに至ったことが知られている。
 こうしたDNA情報によりモンタージュを作る取り組みを日本国内でも手がけている研究機関がある。東海大学医学部の今西規教授の研究室だ。
 犯罪被害者の遺族らからなる団体「宙の会」は2024年、DNAモンタージュを可能にする法整備を求め、国会や首相に要望書を提出している。
 犯人が自分のDNAを残している世田谷一家殺害事件こそ、犯人のDNA分析でわかった新たな犯人像を取っかかりに、捜査に弾みをつけるべきとの声も上がっている。

 問題は「本当にそんなことができるのか」ですね。目撃情報等ならともかく、DNAから本当に「顔の容貌」など犯人逮捕に結びつく情報など作成できるのかどうか。今のところ確実なのは、既に実施済みの「容疑者のDNAと直接比べること」だけではないか。


<主張>未解決事件 突破口は必ずあるはずだ 社説 - 産経ニュース
 勿論時期から言って、産経社説で主として想定されてるのは「2000年の大晦日に起こった世田谷一家殺人事件」ですが、正直「突破口はもはやない」でしょう。
  「日本は神国だから神風が吹いて米国に勝つ(太平洋戦争)」並の無意味な精神論です。そんなんで事件が解決すれば誰も苦労しない。
 産経は、世田谷一家殺人事件(2000年、4名殺害)以外にも

 年末になると毎年、東京都世田谷区の宮沢みきおさん一家4人が殺害された事件に関する情報が警察から発信される。事件発生から24年、事件を風化させないための努力だ。
 この事件だけではない。
 東京都八王子市のスーパーでは平成7年、従業員の稲垣則子さん(当時47歳)とバイトの高校2年、矢吹恵さん(同17歳)と前田寛美さん(同16歳)の3人が射殺され、犯人は不明だ*2。
 葛飾区では8年、上智大4年の小林順子さん(同21歳)が自宅で殺害・放火された*3。
 京都市では19年に帰宅途中の京都精華大1年、千葉大作さん(同20歳)が何者かに刺殺された*4。

として「いくつかの未解決殺人事件」を上げていますが「昔の殺人の訴追時効(15年)」を越えてる未解決殺人事件は残念ながら、ほぼ解決の見込みはないでしょう。

 今年は大きな進展があった。兵庫県加古川市で19年、小2女児(同7歳)が自宅前で刺殺された事件が、実に17年を経て、容疑者逮捕に至ったのだ。
 加古川事件は早い時期から容疑者が浮上してはいたが、物証がなかった。局面を変えたのはその容疑者の近隣地域での同種手口事件の有罪確定が相次ぎ、同じ容疑者による別の少女殺害も有罪確定したことだった。

 その事件は「容疑者は浮上したが、物証がなかった→その後、物証が見つかった」と言う話なので容疑者が全く浮上しない多くの未解決事件とは話が大分違います。
 多くの未解決事件では犯人逮捕は「袴田事件(1966年に発生、4名殺害)、足利事件(1990年に発生、1名殺害)、東電OL殺人事件(1997年に発生、1名殺害)など冤罪事件(再審無罪事件)の真犯人を今から見つけ出す(まあ冤罪事件の多くは、時効廃止前の事件であり、既に訴追時効が成立しています*5が)」位、無理だと思います(冤罪が罪深いのは、冤罪被害者だけでなく、真犯人を取り逃がすという問題も勿論あります)。
 なお、未解決事件といった場合に、マスコミによって「当然のように冤罪事件の存在が無視される」のは何だかなあと思います。
 例えば「事実上、逮捕は無理」とはいえ東電OL殺人事件(1997年に発生、1名殺害)はまだ時効は成立してません。

 最大の敵は風化だ。毎年末に情報発信*6される冒頭の世田谷事件ですらそれは免れず、現場を(ボーガス注:事件のことを知らない?)地元高校生に「肝試し*7」されてしまう始末だ*8。地域や社会が事件を許さない、絶対に解決するのだと、風化しないよう努力することが必要ではないか。

 「風化」は事件の解決とは全く関係ないでしょう。「肝試しなど不謹慎で、勿論すべきではない」ですが、あえて言えば「肝試ししようが風化しようがそのこと自体は事件の解決とは全く関係がない」。
 もしかして「風化しなければ新たな捜査情報が得られるかも」と言いたいのか?
 しかし「事件直後に来なかった情報」が「事件から何十年も経ってから来る可能性」は「犯人の身内なので犯人をかばっていた」など「何らかの事情」で情報をあえて隠していたケースぐらいでしょう。そんなケースが沢山あるとは思えない。
 そして小生のような「事件発生現場と何の関係もない人間」が「事件を記憶にとどめた」ところでそのことは事件捜査には全く関係がない(防犯意識の形成など他のことには役立つかもしれませんが)。
 なぜなら「事件解決に役立つ情報」など「事件発生現場近くに住んでいた人間」ならともかく、「事件発生現場と何の関係もない人間」は提供できないからです。

*1:筆者の織田は小松基地司令、航空開発実験集団司令官、航空支援集団司令官等を歴任。2022年に産経の正論大賞を受賞(織田邦男 - Wikipedia参照)

*2:この事件については例えば 八王子スーパー強盗殺人事件 - Wikipediaや最近の報道東京 八王子 スーパー3人殺害事件 未解決のまま29年に|NHK 首都圏のニュース、東京 八王子 スーパー3人殺害事件から29年 情報提供を呼びかけ | NHK | 事件(2024.7.30)参照

*3:この事件については例えば柴又女子大生放火殺人事件 - Wikipediaや最近の報道上智大生放火殺人事件からまもなく28年 警視庁捜査一課長「必ず無念を晴らしたい」 事件現場の“3D模型”など改めて公開 | TBS NEWS DIG(2024.9.3)、上智大生殺害事件から28年 父親「毎朝きょうこそ事件解決」|NHK 首都圏のニュース(2024.9.9)参照

*4:この事件については例えば京都精華大学生通り魔殺人事件 - Wikipediaや最近の報道京都精華大生殺害事件17年 凶器となった刃物の特徴公開|NHK 関西のニュース(2024.1.15)参照

*5:但し、未解決事件 - Wikipediaによれば「殺人の時効廃止によって、1995å¹´4月28日以降の殺人は時効未成立」のため1997年に起こった「東電OL殺人事件」は一応時効未成立のようです(事実上逮捕などもはや無理でしょうし、警察も実質的捜査は何もやってないでしょうし、マスコミもほとんど報じないわけですが)

*6:年末の情報発信としては例えば世田谷一家殺害事件から24年 遺族の会が解決願い墓参り - 日本経済新聞、解決願い、支援者が墓参り 高齢母は断念、世田谷一家殺害24年:時事ドットコム、東京 世田谷一家殺害事件から24年 遺族会が墓参り|NHK 首都圏のニュース、世田谷一家殺害事件から24年 捜査にあたった元成城署長らが4人の墓参り | TBS NEWS DIG、「犯罪被害者遺族」という異境 ~世田谷一家殺害事件・遺族の新たな一歩 | TBS NEWS DIG(2024.12.30)

*7:肝試ししていいとは勿論言いませんが、「無断侵入が防げない」ようなら取り壊すべきでしょう。保存することが事件解決に役立つとは思えません。どうしても遺族が残したいなら「リフォームして、住んだらどうか」と言いたくなります。

*8:「肝試し事件」については例えば世田谷一家4人殺人現場敷地内に高校生約10人侵入 「肝試し感覚」:朝日新聞デジタル(2023.11.23)参照