<主張>未解決事件 突破口は必ずあるはずだ

社説

一家4人が殺害された宮沢みきおさん宅=東京都世田谷区上祖師谷
一家4人が殺害された宮沢みきおさん宅=東京都世田谷区上祖師谷

年末になると毎年、東京都世田谷区の宮沢みきおさん一家4人が殺害された事件に関する情報が警察から発信される。事件発生から24年、事件を風化させないための努力だ。

この事件だけではない。私たちの周りでは、多くの殺人事件が未解決で、遺族が悲しみの中にいることに思いを馳(は)せたい。

東京都八王子市のスーパーでは平成7年、従業員の稲垣則子さん(当時47歳)とバイトの高校2年、矢吹恵さん(同17歳)と前田寛美さん(同16歳)の3人が射殺され、犯人は不明だ。葛飾区では8年、上智大4年の小林順子さん(同21歳)が自宅で殺害・放火された。大阪府熊取町で下校途中だった小4の吉川友梨さん(同9歳)は15年に失踪したままだ。京都市では19年に帰宅途中の京都精華大1年、千葉大作さん(同20歳)が何者かに刺殺された。

ほかにも重大な未解決殺人事件は少なくない。捜査はなかなか動かないが、今年は大きな進展があった。兵庫県加古川市で19年、小2女児(同7歳)が自宅前で刺殺された事件が、実に17年を経て、容疑者逮捕に至ったのだ。

加古川事件は早い時期から容疑者が浮上してはいたが、物証がなかった。局面を変えたのはその容疑者の近隣地域での同種手口事件の有罪確定が相次ぎ、同じ容疑者による別の少女殺害も有罪確定したことだった。

物証は乏しくとも、手口の同一性を軸に、状況証拠を積み重ねて立件できるのではないか。突破口となったのは、余罪の有罪確定で「手口の同一性」が明確になったことだった。

科学捜査の進歩も追い風だ。科学は、証拠ではなかった資料から直接物証性を見いだす力がある。初動捜査で得られた資料が、いつか価値を持つときが来る。どんな未解決事件にも突破口は必ずあると思いたい。

最大の敵は風化だ。毎年末に情報発信される冒頭の世田谷事件ですらそれは免れず、現場を地元高校生に「肝試し」されてしまう始末だ。地域や社会が事件を許さない、絶対に解決するのだと、風化しないよう努力することが必要ではないか。

事件の犠牲になり、苦しみの中にいる方々の思いを察したい。捜査員ではない私たちにやれることは、遺族の思いに寄り添うことだと心得たい。

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