スポーツにサイドストーリーは不要、という主張があり、それなりに支持しているのだが、フィギュア・ペアの井上怜奈選手のエピソードにはぐっと来た。思わず応援してしまった。
2度のオリンピック出場後、長野は落選。失意の井上を叱咤激励してくれたお父さんが、1997年にガンで早逝されてしまう。そして井上本人も肺ガンを発病。つらい治療に耐えながら競技を続ける。2003年には卵巣破裂の大病、手術。そんな運命を乗り越えて、逆転でつかんだ全米チャンピオン、3度目のオリンピック出場、オリンピック史上初の「スロー・トリプルアクセル」の成功…。
結果は7位止まりだったが、その表情のすがすがしかったこと。
日本のワイドショーにトリノ現地から出演していたが、番組の中で、「どうしてそんなに苦労してまで、フィギュアスケートを続けたのか?」という問いに対し、「お父さんが亡くなって、がっかりしているお母さんを元気づけたかったから。」
このような話を知らなかったら、単に、米国籍を取得した日本の女子選手がオリンピックで7位でした、というだけでやり過ごしてしまうだろう。
井上さん、ほんとうにお疲れさまでした。
しばらくはゆっくり過ごしてくださいね。
きっと、井上選手だけではない。
全てのオリンピック出場選手それぞれに、そしてオリンピックや各種大会をめざすアスリートたち全てに、大なり小なり、聞く人の心を打つストーリーがあるのだろう。並大抵の努力では、その競技で一流になることなどできないのだ。
男子ハーフパイプ、途中でミスをしてそのあとのトリックを流し、競技終了後に派手に悔しがる選手がいた。そのときは、なんだこいつ格好つけやがって、と思った。クニに帰ったら、凄まじいバッシングに遭うんだろうな、と。
ジャンプの原田や、サッカーの城が以前受けたような。
しかし井上選手のことを聞き、演技を見て、考え直した。
モーグル、スピードスケート、ジャンプ。今大会、未だ日本選手のメダル獲得はない。しかしそれがどうしたというのか。
彼らは、チャンピオンになることをめざして、様々なことを我慢し、つらい練習に耐えて、オリンピック代表になった。
確かに日本代表だが、日本のために競技しているのではない。
自分がオリンピックで、世界の舞台で、勝つために競技しているのだ。
不幸にして実力が出せずに敗れてしまったとしたら、一番悔しいのは彼自身、彼女自身だ。
我々は慰めてやるべきである。なぜ「プレッシャーに弱い」「大舞台で実力が出せない」などと責め立てる必要があろうか。
以上、性善説に立った「大甘の」見解である。
ハーフパイプの彼ら・彼女らの振る舞いが、テレ隠しであると信じたい…。
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