2023年春、新海誠監督の「すずめの戸締まり」、スラムダンク映画版「THE FIRST SLAM DUNK」が中国でも公開され大ヒットしています。
「すずめの戸締まり」は5月7日現在興行収入約8億元(日本円約160億円)で、中国で劇場公開された日本映画の中で歴代最高額を記録しています。
これまでの歴代トップは2016年に公開された「君の名は。」の5.76億元でした。
4月20日に中国劇場公開された「スラムダンク」の興行収入は現在6.16億元(日本円約120億円)で健闘しています。
公開初日である4月20日(木)0時から始まる「初日最速上映」には沢山の観客が訪れ、世間を賑わせました。
中国では映画公開日の0時ちょうどに「初日最速上映」をスケジューリングする習慣があります。上海、北京、広州など都市部の映画館で多く行われます。
スラムダンクの場合、この「初日最速上映」があったのは、平日水曜日の夜12時でした。観客のほとんどが30代、40代前半の社会人で、まだ水曜日で明日は会社があるのに彼らの“青春”の象徴であるスラムダンクのため、真夜中の映画館に集結し各スクリーンを満席にしたことは社会ニュースにもなりました。
ただ、公開前の中国メディアの予測では、「スラムダンク」は「6億元は当然、10億元を狙える」と言われていました。
「初日最速上演」が盛り上がりすぎたこと、鑑賞マナーが良くないという問題もあり、リピート客は多くないという印象です。
「THE FIRST SLAM DUNK」(中国タイトル『灌籃高手』)2023年4月20日中国劇場公開。上海ではシネコンが入っているショッピングモールなどで派手な宣伝が行われました。
「すずめの戸締まり」は当初の予測を上回る成績を上げており、中国での新海誠映画の認知度と人気の高さが表れています。
「すずめの戸締まり」(中国タイトル『鈴芽之旅』)2023年3月24日中国劇場公開。中国公開に合わせて新海誠監督が訪中し、北京や上海での先行上映会に参加しています。
「すずめの戸締まり」も「スラムダンク」も日本映画としては記録を塗り替える大ヒットでです。
しかし、中国映画市場の規模は大雑把にいうと日本の約5倍です。
日本でいう記録的大ヒット「200億円超え」のポジションに立つには、中国では1000億円(約50億元)を超えなければなりません。
実際、2023年春節に公開された張芸謀監督作品「満江紅」は45.44億元、SF大作映画「流転の地球2」は40.28億元を記録しています。
「すずめの戸締まり」「スラムダンク」は日本アニメ映画としては快挙ですが、8億元、6億元という数字は、中国の映画市場規模の基準からすると、それほどの数字でもないといえます。
にもかかわらず、「日本アニメ映画が大健闘」という印象を持たれています。それは、中国映画が不調だからだと思います。
3月頃からの傾向として、中国映画の興行成績が全体的に伸びなくなっています。
いままでなら、話題性があってある程度面白い映画であれば、自然にお客さんが来て10億元(約200億円)くらい超えるのは珍しくありませんでした。
ところが、春節休みが終わり、仕事や学校が通常のペースで回りだす3月頃になると、街に人出は完全に戻っているものの、映画興行成績は振るわなくなってきました。
もうひとついうと、中国映画だけではなく、米国映画も不調です。
いま日本でヒットしている「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(2023年4月5日中国公開)は中国ではまったく振るいませんでした。
他にも、中国人が大好きなはずのMARVEL映画「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol. 3」(2023年5月5日中国公開)も客足があまり伸びません。
ただし、興行成績が振るわないからといって、作品が悪いとは限りません。実際、作品に対する悪評が聞こえてくるわけではないです。
ただ、「いままでなら簡単に売れていたものがあまり売れなくなった。」という現象が中国の映画市場でも起きています。しかも、コロナ規制から完全に自由になったいま。これは、消費嗜好自体が変化しているのかもしれないし、全体的な景気低迷の影響を受けているのかもしれません。
この1、2年、中国の映画のチケット料金が微妙に値上がりし、割高感が出てきました(中国の映画チケット料金は日本のような統一料金制ではありません)。
また、少し待てば映画はネット配信されるので、家で見る方が安いし気楽、2時間以上一つのことに集中するのはハードルが高いので、よほど好きな要素がなければ映画館に足が向かないのかもしれません。
中国映画の映像は非常にゴージャスですが、ストーリーや価値観の表現においてはパターンが決まっているので、映画を見るという意欲をかき立てられなくなっている可能性もあります。
日本アニメは中華圏で高い人気を誇るとはいえど、相対的にいえば「ニッチな市場」です。
「ニッチな市場」はコアなファンが多い上に、日本アニメ映画はコロナ規制に苦しんだ3年間でもクオリティを維持し、作品を作り続けてきました。
そのことが、中国を含む海外市場での健闘につながっているのではと思います。
GW(労働節連休)に合わせて公開された空軍ハイテク映画『長空之王』。王一博(ワンイーボー)が最新型戦闘機のテストに挑む若き空軍パイロットに扮します。GWの本命映画でしたが興行収入は6.21億元(約120億円)にとどまっています。
中国映画の興行収入をリアルタイムでチェックできるアプリ「灯塔」の2023年の中国映画興行ランキング。「灯塔」はアリババ系のビッグデータをもとに統計しています。1位から5位はすべて春節に公開された中国映画です。3月以降に公開された映画で10億元を超える作品が出てきていません。6位は「すずめの戸締まり」(鈴芽之旅、3月公開)。7位『保你平安』は3月公開の中国コメディ映画。8位『人生路不熟』はGW公開の中国コメディ映画。予想よりも健闘しています。9位が「スラムダンク」(灌籃高手)。2023年5月7日時点の統計なので順位は変動します。
「すずめの戸締まり」は5月7日現在興行収入約8億元(日本円約160億円)で、中国で劇場公開された日本映画の中で歴代最高額を記録しています。
これまでの歴代トップは2016年に公開された「君の名は。」の5.76億元でした。
4月20日に中国劇場公開された「スラムダンク」の興行収入は現在6.16億元(日本円約120億円)で健闘しています。
公開初日である4月20日(木)0時から始まる「初日最速上映」には沢山の観客が訪れ、世間を賑わせました。
中国では映画公開日の0時ちょうどに「初日最速上映」をスケジューリングする習慣があります。上海、北京、広州など都市部の映画館で多く行われます。
スラムダンクの場合、この「初日最速上映」があったのは、平日水曜日の夜12時でした。観客のほとんどが30代、40代前半の社会人で、まだ水曜日で明日は会社があるのに彼らの“青春”の象徴であるスラムダンクのため、真夜中の映画館に集結し各スクリーンを満席にしたことは社会ニュースにもなりました。
ただ、公開前の中国メディアの予測では、「スラムダンク」は「6億元は当然、10億元を狙える」と言われていました。
「初日最速上演」が盛り上がりすぎたこと、鑑賞マナーが良くないという問題もあり、リピート客は多くないという印象です。
「THE FIRST SLAM DUNK」(中国タイトル『灌籃高手』)2023年4月20日中国劇場公開。上海ではシネコンが入っているショッピングモールなどで派手な宣伝が行われました。
「すずめの戸締まり」は当初の予測を上回る成績を上げており、中国での新海誠映画の認知度と人気の高さが表れています。
「すずめの戸締まり」(中国タイトル『鈴芽之旅』)2023年3月24日中国劇場公開。中国公開に合わせて新海誠監督が訪中し、北京や上海での先行上映会に参加しています。
「すずめの戸締まり」も「スラムダンク」も日本映画としては記録を塗り替える大ヒットでです。
しかし、中国映画市場の規模は大雑把にいうと日本の約5倍です。
日本でいう記録的大ヒット「200億円超え」のポジションに立つには、中国では1000億円(約50億元)を超えなければなりません。
実際、2023年春節に公開された張芸謀監督作品「満江紅」は45.44億元、SF大作映画「流転の地球2」は40.28億元を記録しています。
「すずめの戸締まり」「スラムダンク」は日本アニメ映画としては快挙ですが、8億元、6億元という数字は、中国の映画市場規模の基準からすると、それほどの数字でもないといえます。
にもかかわらず、「日本アニメ映画が大健闘」という印象を持たれています。それは、中国映画が不調だからだと思います。
3月頃からの傾向として、中国映画の興行成績が全体的に伸びなくなっています。
いままでなら、話題性があってある程度面白い映画であれば、自然にお客さんが来て10億元(約200億円)くらい超えるのは珍しくありませんでした。
ところが、春節休みが終わり、仕事や学校が通常のペースで回りだす3月頃になると、街に人出は完全に戻っているものの、映画興行成績は振るわなくなってきました。
もうひとついうと、中国映画だけではなく、米国映画も不調です。
いま日本でヒットしている「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(2023年4月5日中国公開)は中国ではまったく振るいませんでした。
他にも、中国人が大好きなはずのMARVEL映画「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol. 3」(2023年5月5日中国公開)も客足があまり伸びません。
ただし、興行成績が振るわないからといって、作品が悪いとは限りません。実際、作品に対する悪評が聞こえてくるわけではないです。
ただ、「いままでなら簡単に売れていたものがあまり売れなくなった。」という現象が中国の映画市場でも起きています。しかも、コロナ規制から完全に自由になったいま。これは、消費嗜好自体が変化しているのかもしれないし、全体的な景気低迷の影響を受けているのかもしれません。
この1、2年、中国の映画のチケット料金が微妙に値上がりし、割高感が出てきました(中国の映画チケット料金は日本のような統一料金制ではありません)。
また、少し待てば映画はネット配信されるので、家で見る方が安いし気楽、2時間以上一つのことに集中するのはハードルが高いので、よほど好きな要素がなければ映画館に足が向かないのかもしれません。
中国映画の映像は非常にゴージャスですが、ストーリーや価値観の表現においてはパターンが決まっているので、映画を見るという意欲をかき立てられなくなっている可能性もあります。
日本アニメは中華圏で高い人気を誇るとはいえど、相対的にいえば「ニッチな市場」です。
「ニッチな市場」はコアなファンが多い上に、日本アニメ映画はコロナ規制に苦しんだ3年間でもクオリティを維持し、作品を作り続けてきました。
そのことが、中国を含む海外市場での健闘につながっているのではと思います。
GW(労働節連休)に合わせて公開された空軍ハイテク映画『長空之王』。王一博(ワンイーボー)が最新型戦闘機のテストに挑む若き空軍パイロットに扮します。GWの本命映画でしたが興行収入は6.21億元(約120億円)にとどまっています。
中国映画の興行収入をリアルタイムでチェックできるアプリ「灯塔」の2023年の中国映画興行ランキング。「灯塔」はアリババ系のビッグデータをもとに統計しています。1位から5位はすべて春節に公開された中国映画です。3月以降に公開された映画で10億元を超える作品が出てきていません。6位は「すずめの戸締まり」(鈴芽之旅、3月公開)。7位『保你平安』は3月公開の中国コメディ映画。8位『人生路不熟』はGW公開の中国コメディ映画。予想よりも健闘しています。9位が「スラムダンク」(灌籃高手)。2023年5月7日時点の統計なので順位は変動します。
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