昨年末12月16日に公開された中国映画「譲子弾飛」(Let the bullets fly “弾丸を飛ばせ”)が、中国映画の興行収入歴代トップの記録を塗り替えそうな勢いです。
1月21日時点の発表で、既に6.6億元(約92.4億円)を突破し、最終的には7億元(約100億円)を超えると見込まれています。
もっとも中国の映画市場はまだ成長中なので、歴代興業成績が更新されやすい情況にあるともいえます。
「中国の映画市場は好調だけれど、中国映画は好調ではない。」という説があります。
中国の内陸部はまだ経済成長の途上にあるので、今後都市化が進んで大型映画館が増えれば映画市場自体が拡大します。映画は一つの投資の対象として成長性があるとみられています。しかし、投資者を引き付けられるのは、有名な監督が作る有名な俳優が出演する売れそうな作品です。傾向としては「大きく作って大きく儲ける」ので、無名の新人監督や、暗い小作品には出資は集まりにくいです。映画に出資する人がたくさんいるとしても、膨大な数の潜在的な観客が存在するとしても、面白い映画がどんどんできるとは限らないので「中国の映画市場は好調だけれど、中国映画は好調ではない。」と言われるのです。
そんな中、興業的に大成功し、作品としても高い評価を得たのが2010年12月16日に公開された「譲子弾飛」です。
「この作品が現れたことで中国映画にも希望が持てるようになった。」と言う人もいます。
「譲子弾飛」(Let the bullets fly “弾丸を飛ばせ”) 公開日:2010年12月16日中国全国
監督:姜文(ジャン・ウェン) 主演:姜文、周潤発、葛優、劉嘉玲、陳坤など。
写真:地下鉄駅ポスター
1920年代の中華民国期、北洋軍閥が力を振るった時代が舞台背景です。といっても、歴史ものというわけではありません。史実を語る精度を追及するのではなく、当時の時代背景を借りて、現代に通じる物語を描いています。
匪賊の一味 (匪賊の頭を演じるのが姜文)
貿易で儲けた金と暴力で町を牛耳る男の一党 (権力を握る男を演じるのが周潤発(チョウ・ユンファ)
町の最高権力者である高官になりすますニセ役人 (葛優が演じる)
この三者が織り成す物語で、3人の実力派俳優、姜文、周潤発、葛優が好演しています。
中国式ユーモアが散りばめられていて、ところどころで観客から笑いが起きます。周星馳(チャウ・シンチー)的なナンセンスな笑いの要素も含まれています。
真っ青な空の下、白馬が列車を引いて現われるシーンや清朝末期の楼閣など、映像的にはロマン主義に溢れていて、残虐なシーンもありますが、全体的には美しくエネルギッシュな映像です。
この映画がここまでヒットした理由は、セリフの面白さにあると思います。
全編を通じてブラックユーモアに溢れ、政治的な風刺に満ちています。
セリフの一つ一つに裏の意味があり、その多くが現代の何かを風刺しているのです。
中国人にとっても「あのセリフの意味が分からない」「初めて聞いた単語が結構ある」と言い、見終わった後は誰もが「あのセリフはどういう意味だったんだろう」とネットで調べてしまいます。そしてネット上でも盛り上がるという様相です。
中国式ユーモアに溢れていますが、コメディではありません。
一つを得れば一つを失う、失ったものは二度と戻ってこないのに得たものは簡単に逃げていくという悲哀や、悪の中にも正義があり、正義や公平がいかに曖昧なものかといったことが表わされています。
軍閥時代という舞台設定を借りて、官職が金で買われたり、多重婚(多重の内縁関係)、権力を利用した不正取引などが描かれていますが、これらは今の中国で最もホットな話題であり、社会問題として認知されています。
庶民が決起するシーンがありますが、リアルかつ皮肉に満ちていて、こういう映画が上映禁止になるどころか興行収入歴代トップに迫っています。
姜文(ジャン・ウェン)、周潤発(チョウ・ユンファ)、葛優、3人のメインキャストを始め、陳坤(チェン・クン)、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)、胡軍(フー・ジュン)など実力派が揃い、それぞれ好演しています。
特に陳坤(チェンクン)は「こんな役を陳坤がやるの!?」という役柄で、美男俳優のイメージを捨てて演技の幅を更に広げました。
音楽は久石譲で、姜文監督のロマン主義的な映像と音楽がよくマッチしていて、素晴らしい効果を生み出していました。
映画本編が始まる直前には姜文が出演するキャノンのデジタルビデオの広告が流れます。すごいインパクトでした。キャノンはこの映画及び姜文と提携関係にあり、「譲子弾飛」キャノンデジタルビデオコンテストなども開催し、プロモーションに大きく関わっています。
Canonの協賛による記者会見。監督・主演の姜文。
1月21日時点の発表で、既に6.6億元(約92.4億円)を突破し、最終的には7億元(約100億円)を超えると見込まれています。
もっとも中国の映画市場はまだ成長中なので、歴代興業成績が更新されやすい情況にあるともいえます。
「中国の映画市場は好調だけれど、中国映画は好調ではない。」という説があります。
中国の内陸部はまだ経済成長の途上にあるので、今後都市化が進んで大型映画館が増えれば映画市場自体が拡大します。映画は一つの投資の対象として成長性があるとみられています。しかし、投資者を引き付けられるのは、有名な監督が作る有名な俳優が出演する売れそうな作品です。傾向としては「大きく作って大きく儲ける」ので、無名の新人監督や、暗い小作品には出資は集まりにくいです。映画に出資する人がたくさんいるとしても、膨大な数の潜在的な観客が存在するとしても、面白い映画がどんどんできるとは限らないので「中国の映画市場は好調だけれど、中国映画は好調ではない。」と言われるのです。
そんな中、興業的に大成功し、作品としても高い評価を得たのが2010年12月16日に公開された「譲子弾飛」です。
「この作品が現れたことで中国映画にも希望が持てるようになった。」と言う人もいます。
「譲子弾飛」(Let the bullets fly “弾丸を飛ばせ”) 公開日:2010年12月16日中国全国
監督:姜文(ジャン・ウェン) 主演:姜文、周潤発、葛優、劉嘉玲、陳坤など。
写真:地下鉄駅ポスター
1920年代の中華民国期、北洋軍閥が力を振るった時代が舞台背景です。といっても、歴史ものというわけではありません。史実を語る精度を追及するのではなく、当時の時代背景を借りて、現代に通じる物語を描いています。
匪賊の一味 (匪賊の頭を演じるのが姜文)
貿易で儲けた金と暴力で町を牛耳る男の一党 (権力を握る男を演じるのが周潤発(チョウ・ユンファ)
町の最高権力者である高官になりすますニセ役人 (葛優が演じる)
この三者が織り成す物語で、3人の実力派俳優、姜文、周潤発、葛優が好演しています。
中国式ユーモアが散りばめられていて、ところどころで観客から笑いが起きます。周星馳(チャウ・シンチー)的なナンセンスな笑いの要素も含まれています。
真っ青な空の下、白馬が列車を引いて現われるシーンや清朝末期の楼閣など、映像的にはロマン主義に溢れていて、残虐なシーンもありますが、全体的には美しくエネルギッシュな映像です。
この映画がここまでヒットした理由は、セリフの面白さにあると思います。
全編を通じてブラックユーモアに溢れ、政治的な風刺に満ちています。
セリフの一つ一つに裏の意味があり、その多くが現代の何かを風刺しているのです。
中国人にとっても「あのセリフの意味が分からない」「初めて聞いた単語が結構ある」と言い、見終わった後は誰もが「あのセリフはどういう意味だったんだろう」とネットで調べてしまいます。そしてネット上でも盛り上がるという様相です。
中国式ユーモアに溢れていますが、コメディではありません。
一つを得れば一つを失う、失ったものは二度と戻ってこないのに得たものは簡単に逃げていくという悲哀や、悪の中にも正義があり、正義や公平がいかに曖昧なものかといったことが表わされています。
軍閥時代という舞台設定を借りて、官職が金で買われたり、多重婚(多重の内縁関係)、権力を利用した不正取引などが描かれていますが、これらは今の中国で最もホットな話題であり、社会問題として認知されています。
庶民が決起するシーンがありますが、リアルかつ皮肉に満ちていて、こういう映画が上映禁止になるどころか興行収入歴代トップに迫っています。
姜文(ジャン・ウェン)、周潤発(チョウ・ユンファ)、葛優、3人のメインキャストを始め、陳坤(チェン・クン)、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)、胡軍(フー・ジュン)など実力派が揃い、それぞれ好演しています。
特に陳坤(チェンクン)は「こんな役を陳坤がやるの!?」という役柄で、美男俳優のイメージを捨てて演技の幅を更に広げました。
音楽は久石譲で、姜文監督のロマン主義的な映像と音楽がよくマッチしていて、素晴らしい効果を生み出していました。
映画本編が始まる直前には姜文が出演するキャノンのデジタルビデオの広告が流れます。すごいインパクトでした。キャノンはこの映画及び姜文と提携関係にあり、「譲子弾飛」キャノンデジタルビデオコンテストなども開催し、プロモーションに大きく関わっています。
Canonの協賛による記者会見。監督・主演の姜文。