中国端午節の連休に合わせて、2016年6月9日~10日の2日間、上海最大の同人誌即売会「COMIC UP-魔都同人祭-Vol.18」が上海新国際展覧センターで開催されました。
「COMIC UP」は上海地区で最も規模が大きく、最もメジャーな同人イベントです。2008年頃から始まったイベントで、基本的には1年に約2回開催されています。
上海地区には「COMIC UP」以外にも同人イベントはいくつもありますが、「COMIC UP」が圧倒的にメジャーで集客力のあるイベントとして認知されています。
年々を規模を拡大してきましたが、2015年11月の「COMIC UP17」では、ついに上海新国際博覧センターという超メジャーな会場に場所を移しました。
上海新国際博覧センターでは上海モーターショー、CHINAJOY(中国最大のゲームショー)などが行われる有明ビックサイトのような位置づけの会場です。
本来は同人即売会+コスプレイベントですが、ここ1年くらいの間に、企業ブースが非常に充実してきています。
「COMIC UP18」は、新国際博覧センターのW1館とW2館の2館を使って行われましたが、W2館は丸々企業出展スペースでした。
ゲーム・アニメ関連企業が集まるイベントとしては、毎年7月に行われる「CCG EXPO」(中国国際動漫遊戯博覧会)があるのですが、「COMIC UP18」は「CCG EXPO」と遜色のないほど企業出展が充実していました。
■出展企業ブースレイアウト図
以下、主な企業ブースについて紹介していきます。
bilibili動画:中国弾幕動画サイト。「まどかマギカ」中国向けスマホゲーム、「夢王国と眠れる100人の王子様」、「Fate/GrandOrder」など、bilibiliにて配信するゲームのキャンペーン、会場の実況中継、7月に行われるオフラインイベント BILIBILI MACRO LINKの宣伝などを行っていました。
アニプレックス(ANIPLEX):「冴えない彼女の育て方」のグッズを中心に販売していましたが、早く完売したのは中国で人気の高い「Fateシリーズ」、「まどかマギカ」キャラクターのフィギュアでした。アニメ製作会社としてCOMIC UPに企業ブースを出展する行動は先進的だと思います。
遊族網絡(YOUZU):「刀剣乱舞」のPC版、スマホ版の中国語バージョンを今年リリース。
「刀剣乱舞」の中国語版リリースプロモーションはCOMIC UP18の目玉といってもいいです。遊族網絡は中国のゲーム運営会社で上場企業。
ネルケチャイナ(奈尔可(上海)文化発展有限公司):2.5次元舞台「フェアリーテイル」と「NARUTO-ナルト-」のプロモーション。
「ファアリーテイル」は7月1日~3日上海で5公演を上演。永楽票務でチケット発売中(http://www.228.com.cn/ticket-102436628.html)
「NARUTO」は10月22日~30日の上海初日を皮切りに、杭州、北京、湖南、広州、深センと6都市、37公演(上海12公演、他の都市は各5公演)が予定されています。(永楽票務の舞台版「NARUTO」特設ページ)
木綿花 MUSE:版権代理店。youku&tudou独占配信中のアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない(JOJO4部)のプロモーション。」
閲文集団:起点中文網、QQ文学などオンライン小説を束ねるコンテンツ開拓会社。中国小説のアニメ化、ドラマ化、グッズ化など二次展開に力を入れる。テンセント傘下。
左:「擇天記」のアニメ版第二期の放送告知。「擇天記」は閲文が力を入れているコンテンツで、元はネット小説です。先日ドラマ版の制作発表会が行われ、元EXOのルハンが主役の陳長生役を演じると発表されました。
右:中国コンテンツとしては「盗墓筆記」以来の同人盛り上がりを見せた「全職高手」。舞台化する予定だそうです。
布卡漫画(BUKA):コミック閲覧サイト・アプリとしては中国最大手。多くのコンテンツを配信。中国国産の漫画作品にも力を入れています。「尋找克洛托」(Looking for CLOTHO)など中国漫画作品のアニメ化も企画しています。
今回のCOMIC UP18で驚いたのは、アプリの宣伝のためにブースを出す企業が異様に多く、
小節・漫画・イラスト・二次創作作品の投稿アプリが山のようにリリースされています。
同じようなアプリが大量にあり、こんなにたくさん作ってどうするんだと思わざるを得ません。
2年ほど前から「アニメの次は漫画」という流れがありましたが、実際に形になって世に出てきました。ここに出展されたもの以外にも、類似するアプリ・サービスは大量に存在すると思います。
左:菠蘿飯(boluofan)。「BL漫画・BL小説が大量に読めるアプリ」と言い切っていますが大丈夫なのでしょうか。
右:白熊閲読。同人小説アプリ。立看板のチャット画面の会話では「文豪ストレイドッグス」のキャラの受と攻について議論されています。
左:網易(NetEase)の網易GACHA。二次元ACG同人アプリ。 右:麦萌漫画。漫画閲覧・投稿サイト。
大角虫漫画:「漫画・ラノベが毎日更新される超すごい神アプリ」とでっかく書いてありますが、誇大広告の心配はしないのでしょうか。
半次元:ACG(アニメ・漫画・ゲーム)同人創作投稿・SNSアプリ。人気絵師のポストカードプレゼントのキャンペーンがあったせいか、行列ができていました。
別のスペースでは、東方プロジェクト、艦これ等の絵師さんの作品展が行われており、絵師さんのpixiv IDが表示されています。
次元文化(DIMENSION):前身はコスプレイヤーの同人グループから始まった「杭州 304 文化」。コスプレイヤーの商業活動のマネージメントを行うようになり、更に2016年3月には巨額の投資を受け活動の幅を広げています。
天聞角川:中国語版ラノベの販売。
ジョイポリス:上海環球港にセガ・ジョイポリスをオープン。バーチャル歌姫・紫嫣(Violet)の宣伝。
ラブライブ!ステージ:グッズ販売と中国ファンのグループによるラブライブステージ。安定的に盛り上がります。
ファイナルファンタジー14、ドラゴンクエストのプロモーション。
COMIC UP18の企業スペースは盛況でした。
漫画・イラスト投稿アプリが乱立しており、コンテンツ不足・取り合いが起きそうですが、一定期間を経て淘汰されていくと思います。
企業ブースを見渡すと、比較的早期から進出していた日本企業が目立たなくなり、新しいビジネス形態に乗って進出してきた企業・コンテンツの存在感が増しています。
「物を売る」という形態から、「ソフトを売る」形態に本格的にシフトしています。もちろん、日本でもこの傾向は何年も前からありますが、中国では「物」から「ソフト」への変化が更に顕著です。
中国産コンテンツも成長してきていますが、いわゆる「オタク文化」のベースを生み出したのは日本です。
中国でも「萌」や「腐」「二次元」といった概念、二次創作、コスプレ、オタ芸、弾幕、イタ車といった楽しみ方は広く普及していますが、これらはいずれも日本が発祥地です。
中国は吸収力も購買力もあるけれど、文化を生み出すことについてはまだ日本に強みがあります。
続きの「同人誌即売、コスプレ編」についてもご覧ください。
上海同人イベント「COMIC UP-魔都同人祭-18」レポ(2)~同人ジャンルとコスプレの流行傾向~
「COMIC UP」は上海地区で最も規模が大きく、最もメジャーな同人イベントです。2008年頃から始まったイベントで、基本的には1年に約2回開催されています。
上海地区には「COMIC UP」以外にも同人イベントはいくつもありますが、「COMIC UP」が圧倒的にメジャーで集客力のあるイベントとして認知されています。
年々を規模を拡大してきましたが、2015年11月の「COMIC UP17」では、ついに上海新国際博覧センターという超メジャーな会場に場所を移しました。
上海新国際博覧センターでは上海モーターショー、CHINAJOY(中国最大のゲームショー)などが行われる有明ビックサイトのような位置づけの会場です。
本来は同人即売会+コスプレイベントですが、ここ1年くらいの間に、企業ブースが非常に充実してきています。
「COMIC UP18」は、新国際博覧センターのW1館とW2館の2館を使って行われましたが、W2館は丸々企業出展スペースでした。
ゲーム・アニメ関連企業が集まるイベントとしては、毎年7月に行われる「CCG EXPO」(中国国際動漫遊戯博覧会)があるのですが、「COMIC UP18」は「CCG EXPO」と遜色のないほど企業出展が充実していました。
■出展企業ブースレイアウト図
以下、主な企業ブースについて紹介していきます。
bilibili動画:中国弾幕動画サイト。「まどかマギカ」中国向けスマホゲーム、「夢王国と眠れる100人の王子様」、「Fate/GrandOrder」など、bilibiliにて配信するゲームのキャンペーン、会場の実況中継、7月に行われるオフラインイベント BILIBILI MACRO LINKの宣伝などを行っていました。
アニプレックス(ANIPLEX):「冴えない彼女の育て方」のグッズを中心に販売していましたが、早く完売したのは中国で人気の高い「Fateシリーズ」、「まどかマギカ」キャラクターのフィギュアでした。アニメ製作会社としてCOMIC UPに企業ブースを出展する行動は先進的だと思います。
遊族網絡(YOUZU):「刀剣乱舞」のPC版、スマホ版の中国語バージョンを今年リリース。
「刀剣乱舞」の中国語版リリースプロモーションはCOMIC UP18の目玉といってもいいです。遊族網絡は中国のゲーム運営会社で上場企業。
ネルケチャイナ(奈尔可(上海)文化発展有限公司):2.5次元舞台「フェアリーテイル」と「NARUTO-ナルト-」のプロモーション。
「ファアリーテイル」は7月1日~3日上海で5公演を上演。永楽票務でチケット発売中(http://www.228.com.cn/ticket-102436628.html)
「NARUTO」は10月22日~30日の上海初日を皮切りに、杭州、北京、湖南、広州、深センと6都市、37公演(上海12公演、他の都市は各5公演)が予定されています。(永楽票務の舞台版「NARUTO」特設ページ)
木綿花 MUSE:版権代理店。youku&tudou独占配信中のアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない(JOJO4部)のプロモーション。」
閲文集団:起点中文網、QQ文学などオンライン小説を束ねるコンテンツ開拓会社。中国小説のアニメ化、ドラマ化、グッズ化など二次展開に力を入れる。テンセント傘下。
左:「擇天記」のアニメ版第二期の放送告知。「擇天記」は閲文が力を入れているコンテンツで、元はネット小説です。先日ドラマ版の制作発表会が行われ、元EXOのルハンが主役の陳長生役を演じると発表されました。
右:中国コンテンツとしては「盗墓筆記」以来の同人盛り上がりを見せた「全職高手」。舞台化する予定だそうです。
布卡漫画(BUKA):コミック閲覧サイト・アプリとしては中国最大手。多くのコンテンツを配信。中国国産の漫画作品にも力を入れています。「尋找克洛托」(Looking for CLOTHO)など中国漫画作品のアニメ化も企画しています。
今回のCOMIC UP18で驚いたのは、アプリの宣伝のためにブースを出す企業が異様に多く、
小節・漫画・イラスト・二次創作作品の投稿アプリが山のようにリリースされています。
同じようなアプリが大量にあり、こんなにたくさん作ってどうするんだと思わざるを得ません。
2年ほど前から「アニメの次は漫画」という流れがありましたが、実際に形になって世に出てきました。ここに出展されたもの以外にも、類似するアプリ・サービスは大量に存在すると思います。
左:菠蘿飯(boluofan)。「BL漫画・BL小説が大量に読めるアプリ」と言い切っていますが大丈夫なのでしょうか。
右:白熊閲読。同人小説アプリ。立看板のチャット画面の会話では「文豪ストレイドッグス」のキャラの受と攻について議論されています。
左:網易(NetEase)の網易GACHA。二次元ACG同人アプリ。 右:麦萌漫画。漫画閲覧・投稿サイト。
大角虫漫画:「漫画・ラノベが毎日更新される超すごい神アプリ」とでっかく書いてありますが、誇大広告の心配はしないのでしょうか。
半次元:ACG(アニメ・漫画・ゲーム)同人創作投稿・SNSアプリ。人気絵師のポストカードプレゼントのキャンペーンがあったせいか、行列ができていました。
別のスペースでは、東方プロジェクト、艦これ等の絵師さんの作品展が行われており、絵師さんのpixiv IDが表示されています。
次元文化(DIMENSION):前身はコスプレイヤーの同人グループから始まった「杭州 304 文化」。コスプレイヤーの商業活動のマネージメントを行うようになり、更に2016年3月には巨額の投資を受け活動の幅を広げています。
天聞角川:中国語版ラノベの販売。
ジョイポリス:上海環球港にセガ・ジョイポリスをオープン。バーチャル歌姫・紫嫣(Violet)の宣伝。
ラブライブ!ステージ:グッズ販売と中国ファンのグループによるラブライブステージ。安定的に盛り上がります。
ファイナルファンタジー14、ドラゴンクエストのプロモーション。
COMIC UP18の企業スペースは盛況でした。
漫画・イラスト投稿アプリが乱立しており、コンテンツ不足・取り合いが起きそうですが、一定期間を経て淘汰されていくと思います。
企業ブースを見渡すと、比較的早期から進出していた日本企業が目立たなくなり、新しいビジネス形態に乗って進出してきた企業・コンテンツの存在感が増しています。
「物を売る」という形態から、「ソフトを売る」形態に本格的にシフトしています。もちろん、日本でもこの傾向は何年も前からありますが、中国では「物」から「ソフト」への変化が更に顕著です。
中国産コンテンツも成長してきていますが、いわゆる「オタク文化」のベースを生み出したのは日本です。
中国でも「萌」や「腐」「二次元」といった概念、二次創作、コスプレ、オタ芸、弾幕、イタ車といった楽しみ方は広く普及していますが、これらはいずれも日本が発祥地です。
中国は吸収力も購買力もあるけれど、文化を生み出すことについてはまだ日本に強みがあります。
続きの「同人誌即売、コスプレ編」についてもご覧ください。
上海同人イベント「COMIC UP-魔都同人祭-18」レポ(2)~同人ジャンルとコスプレの流行傾向~